毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

メジャーと日本野球の違いに納得☆☆☆

家族が借りてきた本。「文章も書ける野球選手」改め「文章も書ける元野球選手」、今シーズンから野球解説者デビューを果たした田口壮さんの新刊は、またしても読みどころ満載、しかも笑えるいい本だった。


◆目次◆
はじめに
第1章 第3回WBC開幕。世界は野球であふれている。
第2章 日本人選手のメジャー挑戦は人材流出なのか?
第3章 日米比較。野球とベースボールとスターバックス
第4章 セイバーメトリックスが苦手です。
第5章 統一球問題は、外野のフェンスを下げて解消!
おわりに

今年の2月に出ている本なので、当然のことながらWBCの見どころや期待についてページを割いていたり、プロ野球の統一球問題*1への大胆な提言があったりとすでに時機を過ぎた話題もある。
だが、それを差し引いても面白いし、興味深い内容だ。

著者は日本で12年、メジャー(とその下部組織)で8年、合計20年野球選手として活躍した人。アメリカで現役生活を終えたのではなく、日本で2011年まで2シーズンプレーしていた*2ので、両方に精通していると言っていいと思う。
メジャー選手として、また3Aや時には2Aも経験しているので、日本ではわかりにくいMLBのしくみの解説は特に素晴らしい。
メジャーでの評価のものさしが日本とは違うことや、年俸の考え方、さらにはピンと来なかった「オプション」というものまで、これがわかればメジャーに行っている日本選手に対する見方がずいぶん変わると思う。

「メジャーで通用する」とは、どういうことか?

…まず理解しやすいのは「出場機会」です。
一番わかりやすい例が、先発投手の投球回数。
投球回数については…メジャーではそれがさらに一流の証とみなされます。日本の場合、どうしても勝ち星のほうに注目が集まりますが、メジャーでは、それと同じくらい、投球回数が重視されます。逆に言えば、それだけ首脳陣の信頼を得ている、チャンスを与えられている…(以下略)。
先発投手ならば、年間200イニング以上を投げ切った男は、間違いなくそのチームのエース格に数えられます。「クウォリティスタート」と呼ばれる、6回以上を投げて自責点3以内という条件をクリアしなければ、なかなか年間200イニングは到達できないからです。一方で、勝ち星は、味方打線の援護にも左右されるもの。メジャーではクウォリティスタートを勝ち星同様に重要視する風潮が強いのも、このためなのです(P69-70)。

ヤンキースの黒田投手がメジャーで評価が高いのも、このものさしがあるから。

また、年俸は実はキャリアが浅い頃は日本ほど無制限で上がるわけではない、というのも意外だった。
FA資格が取れる6シーズン終了までは、いくらがんばっても「相場」が決まっているのだとか。活躍中の選手に長期契約が提示されるのは5シーズン終了後になることが多く、それはFAでの年俸高騰が予想されるのでその前に引き留めておきたい球団側の作戦なのだそうだ。
これを、著者は「結果的に選手生命を長くするシステムになっているのではないか」と見ている。

一般的なレギュラークラスの選手でも、6年間は年俸が高騰しないのですから、その日を迎えるまでは是が非でもレギュラーを張り続けなければいけない。「プロ=3年ひと区切り説」でいけば、2セット分はがんばり続けなければいけないのです(P203)。

1年2年の活躍でどんどん年俸が上がる今の日本のシステムだと、目標を見失ったり、おごったり守りに入る選手が増えて、結果的に「長くプロでい続ける」ことがむずかしくなってしまうのではないか。
著者はそう考えている。

 

タイトルにもある通り、もちろん真面目な日米野球比較論だけではない。「余談」がたっぷりと用意されている。吹き出すこと必至、なのでやはり移動中などに読むのはおすすめしません。長谷川滋利さんの『メジャーリーグで覚えた僕の英語勉強法 (幻冬舎文庫)』だと、しっかり学ぼうと思って読むが、この本に書かれた“英語の壁”の話題はひたすらおかしい。ご本人が真剣であればあるだけさらにおかしみが増す、というまるでコメディ仕立てだ。田口さん、笑いすぎてすみません。

 

MLB好きも、やっぱりプロ野球、という方もぜひどうぞ。
私のアクション:バントのうまい選手、苦手な選手の動きを観察する
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

トニー・ラルーサの口癖「チームはメッセージを発さなければダメだ」(P51)

カージナルスをはじめ、3度の世界一に輝いた名監督
相手チームに。ファンに。そして、もちろん自分たち自身に。世界最高峰と言われるメジャーで勝負する以上、「俺たちの野球はこうなんだ!」「野球はこうやって勝つんだ!」というメッセージがなければプロとして失格であるとトニーは考えていたようです。何となく勝っても負けてもダメ。勝つべくして勝ち、負けるべくして負ける。

バントはリズムが重要(P131)

テレビの野球中継でもぜひ注目していただきたいのですが、バントを失敗する選手は、えてして身体が固まっています。その身体はリズムを刻んでいません。ベンチからバントのサインが出る。絶対にランナーを送らなければと理解する。頭の中で「絶対決めるで!」と繰り返す。その責任感が強すぎて、身体が硬直してしまう。結果、身体全体でリズムを刻まずに、手だけでバントしようとして、失敗する、という流れです。

*1:2シーズン前から飛ばないボールになり、ホームランが激減したので観客動員数が減っているというデータも。ところが、今シーズンは今のところホームランが増えているので、問題は立ち消えに。ただし公式見解は「昨シーズンまでと同じボールです」とのことで、真相は謎

*2:昨シーズンはトレーニングをしながら球団からのオファーを待ったが、声がかからず引退