この本も柴田元幸さんの『代表質問』に著者のインタビューが載っていたので、興味を持って借りてみた。
たまたま、立花隆さんの『ぼくはこんな本を読んできた』でも紹介されていて、面白そうだなと思っていたこともあったので。
奇想天外な本だった。
◆目次◆
一人の男が飛行機から飛び降りる
牛乳
村の生活
雪
宿命の女
風景 ほか父の頭をかぶって
幼い日の記憶
ピクニック
小川のほとりで
小学校の日々
動物たち ほか
※この本はもともと2冊の著作をまとめたものです
一応、短編小説集というジャンルに入るものだが、めっぽう短い。何しろ、長くて3ページ、1ページで終わってしまうものもある。
しかも、話が何だか妙だ。奇妙にゆがんでいる。出てくる人がずれていたり、設定がおかしかったり、まともだと思って読んでいると不思議な落ちが待っていたりする。
読みながら「こんなものを今までに読んだ気がする…」と考えていて気がついた。これは、「他人の夢日記」ではないか。と言っても個人的に誰かのを見せてもらったことはないので、一番近いのは『夢十夜』*1だろうか。
おそらく、もっとも正しいこの本の読み方は“夢を見る(または覚えている)ことができない人が、その代わりに読む”ことだろう。
柴田さんもトーキング・ヘッズのデイヴィット・バーンがユアグローの小説についてコメントしたものを紹介している。
「自分の夢をどうしても覚えていられない僕にとって、ユアグロー氏の小説は格好の代用品である」(P313)
確かに、これは一気に読んでしまうのはもったいない。ひとつひとつの話に独特のおかしみがあるのだ。“著者近影”も掲載されているが、一目見るだけであふれるユーモアが感じられる写真だ*2。
柴田さんも
全部で149本、毎晩夢を見るように1日1作ずつ読めば5ヶ月ちかくもつ勘定である。ナイトキャップのように味わっていたいだければと思う(P316)。
と書かれている。
もし図書館で借りて読んでみて気に入ったら、文庫版を買ってちびちび読むのが正しい読み方です。たぶん。
夢を見たことがない、という方や他人の夢をのぞいてみたい、という方はぜひどうぞ。
※この本のメモはありません