毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

最高に楽しい脳科学の講義☆☆☆☆

進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)

※初版本は朝日出版社より2004年10月25日刊行*1
齋藤孝先生の『勉強力』で紹介されていた本。池谷さんの本はずいぶん読んでいると思うが、そういえば読んでいなかったわ、という感じだった。
約400ページの大作だっだが、楽しんで読めた。


◆目次◆
はじめに
第1章 人間は脳の力を使いこなせていない
第2章 人間は脳の解釈から逃れられない
第3章 人間はあいまいな記憶しかもてない
第4章 人間は進化のプロセスを進化させる
第5章 僕たちはなぜ脳科学を研究するのか
付録 行列を使った記憶のシミュレーション
ブルーバックス版刊行に寄せて
参考文献
さくいん

先に読んだ『単純な脳、複雑な「私」』は、母校の高校での特別授業をまとめたものだが、こちらも同じスタイル。この本の方が先で、著者のニューヨーク留学中に、慶應義塾ニューヨーク学院高等部で行われたもの。
高校生相手に脳について縦横無尽に語られている、ワクワクする講義録だ。

脳の基本的な仕組みから、著者の見解や最新の研究成果までしっかり盛り込まれているので、非常に内容が濃い。
ブルーバックス版刊行に当たって文献と索引が新たに付いたので、著者自身が“デスク脇にずっと置いておこう”と書くほど脳科学の資料として素晴らしいものになっている。

 

非常にやりとりがイキイキしている。説明がうまく理解されていないと思うとたとえ話を変えてみたり、ちょっとした冗談を交えてみたり、自分も一緒に講義を受けているような臨場感。これはいくらていねいに書いてある脳科学の本でも得られないわかりやすさだと思う。
私自身は、神経細胞のしくみや神経伝達物質による情報の伝わり方がはじめてきちんと理解できた。
また、脳と心に関する話題にも積極的に触れているので、とても興味深かった。このあたりは『愛は脳を活性化する』に通じるところがたくさんあった。

タイトルは、人間の脳には実際に使いこなせる以上のスペックがある、というところから来ている。脳のリミッターは実は体なのだそうだ。だから、脳がすべてをコントロールしている、という説は間違いだという。著者の見解は、将来の進化に備えてあらかじめスペックを高くしてあるのでは、ということだった。
他にも、なぜプロ野球選手は150キロもの速球を打ち返せるのか*2など、他で見たことのない面白い話が満載。
脳に興味はあるけど本を読むのはむずかしい、と感じている方はこの本から読むのをおすすめします。
私のアクション:暗記はゆっくりするもの、と意識する

関連記事
読書日記:『愛は脳を活性化する』
読書日記:『のうだま』
読書日記:『記憶力を強くする』
読書日記:『単純な脳、複雑な「私」』
読書日記:『海馬』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

実際の人間の目は、世の中に存在する電磁波の、ほんの限られた波長しか感知できない(P130)

本来限られた情報だけなのに「見えている世界がすべてだ」だと思い込んでいる方が、むしろおかしな話でしょ。

著者が考える「意識」の3条件(P152)

1.表現の選択
判断できること。歩くか、立ち止まるか。呼吸するか、呼吸を止めるか、など選べる状態
2.ワーキングメモリ(短期記憶)
短期記憶が機能していること。これがなければ判断できない。
3.可塑性(過去の記憶)
何か経験する、その経験にもとづいて選択の材料にできるように、経験を糧にする。脳は経験を価値判断の基準に仕立てている。
経験をもとに脳の何らかの状態が変わることを「可塑性」という。
意識の典型が言葉。選択肢の幅が広がる。学習できる、記憶できる。これら3つの特徴がすべて言葉に備わっている。

自由意志というのは潜在意識の奴隷に過ぎない(P171)

脳はゆっくり判断する(P193)

学習のスピードが速いと、表面に見えている浅い情報だけに振り回されてしまって、その奥に潜んでいるものが見えてこなくなってしまう。

なかなか覚えられないのは脳の作用の裏返し。ものごとの裏に潜んでいるルールを確実に抽出して学習するためには、学習スピードが遅いことが必須条件。そして繰り返し勉強することも必要。

表面に見えているものに振り回されないためには(P194)

学習スピードの遅さがキーになる。ゆっくり覚えてはじめてルールの抽出ができる。

体が脳を決めている(P316)

従来は、脳は体を支配する、体をコントロールするための総司令部だと考えられていたが…、むしろ体が脳を主体的にコントロールしている。…もちろん脳は体をコントロールしている。それと同時に、体も脳をコントロールしている。だから脳と体を分けてはいけないわけだ。

「心」というのは脳が生み出している(P317)

脳がなければ「心」はない。でも、体がなければ脳はないわけだから、結局は、体と心は密接に関係していることがわかる。

直感って何なんだと突き詰めていくと、ゆらぎに行き着く(P345)

たまたま、ジャンケンをしなければならない時の、その瞬間の脳のゆらぎで、何を出すかが決まってしまう。ある時ならチョキだし、別のある時ならばグーかもしれない。根拠なんてない。

脳の情報の97%は内部情報(P352)

全体の3%しか、外部の世界の情報は入ってこない。こうしたことを考えると、感覚系の情報処理に自発活動のゆらぎが強烈な影響を与えていてもおかしくない。

*1:ブルーバックス版には新たに第5章が追加されています

*2:脳にはそれに反応できる部位があるのだそうです