家族が借りてきた本。大橋巨泉さんと言えばジャズに造詣が深く、ファンの間ではNFL通としても有名だが、絵画とは意外な組み合わせ。
1999年に西洋絵画鑑賞にはまったそうで、セミリタイア生活を生かして世界中の美術館を見て歩いたそうだ。
エラい先生に教わるのと、自分に近い素人的なポジションの人に教わるのと、どちらがいいのか考えながら読むことになった。
◆目次◆
はじめに――
印象派って何だろう?
年表で印象派を整理しよう!
地図で印象派を理解しよう!
1章 印象派に影響を与えた画家たち
ジャン=フランソワ・ミレー「晩鐘」
ギュスターヴ・クールベ「泉」
オノレ・ドーミエ「洗濯女」
2章 印象派の始まり
エドゥアール・マネ「バルコニー」
フレデリック・バジール「水浴者たち」
ウジェーヌ・ブーダン「トゥルーヴィルの海岸」
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「サン・ジャック教会への道」
3章 これぞ印象派の画家たち
クロード・モネ「赤いスカーフ、モネ夫人の肖像」
カミーユ・ピサロ「赤い屋根」
エドガー・ドガ「カフェにて<アブサント>」
アルフレッド・シスレー「ポール=マルリーの洪水」
ピエール=オーギュスト・ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
4章 この画家たちにも注目
ベルト・モリゾ「舞踏会にて」
エヴァ・ゴンザレス「朝の目覚め」
アルマン・ギヨマン「釣り人たち」
メアリー・カサット「湯浴み」
ギュスターヴ・カイユボット「パリの通り、雨」
ジェームズ・ティゾ「ピクニック」
5章 印象派以降の画家たち
ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」
ポール・ゴーギャン「説教のあとの幻影」
フィンセント・ファン・ゴッホ「オーヴェールの教会」
ジョルジュ・スーラ「グランド・ジャット島の日曜日の午後」
ポール・シニャック「井戸端の女たち」
オディロン・ルドン「花に囲まれたオフィーリア」
アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック「ムーラン通りのサロンにて」
ピエール・ボナール「棕櫚の木」
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美術館めぐりの楽しみ
あとがき
幻冬舎にはこの「知識ゼロからの〜」というシリーズが出ていて、西洋絵画は山田五郎さん著『知識ゼロからの西洋絵画入門』『知識ゼロからの西洋絵画史入門』がある。
そのためか、オールカラーで作品もふんだんに載っている上、年表や地図もまとめられていて非常にわかりやすい。
世界史の参考書を思い出したくらいだ。時代背景やポイントとなる場所・地域を頭に入れる。画家の人生と作品がコンパクトにまとめられ、印象派に至る流れとその後の発展・変遷が一目でわかる。
私が「理論派向け」と書いたのはそのためだ。
その一方で、ううむ、と思うところもある。
巨泉さんの独断で絵を選んであるので、たまに「ええ、これ?」という絵が載っている。独自の解釈をされている絵も。たとえばドガの「カフェにて<アブサント>」に描かれた男女ふたりを夫婦と書いていたりする*1。
でも、何がすごいって好みで画家の評価が書かれているところがものすごい。
ルノワールの後期はまったく評価しないし、ゴーギャンはタヒチ以降は終わっている。私のお気に入りの画家、バジールやカイユボットの評価が低いのはまあいいとして、セザンヌを絵が下手と繰り返し酷評。いいんですか、セザンヌですよ?私は好みじゃないからいいけど、セザンヌをこき下ろせるのはたぶんこの人くらいのものだろう。
印象派をよく知らない人に最初に薦める本としてどうだろうか。ちょっと考えてしまった。
ただ、印象派の本はすでに何冊も読んでいる私も知らない画家が何人かあったし、モネが師と仰ぐオランダ人画家ヨハン・バルトルト・ヨンキントの存在も初めて知った。
また、ピサロは晩年絵が売れたけどシスレーブームが来たのは亡くなった翌年だったとか、なぜモリゾがマネの弟と結婚したかとか(これはあくまで推測)、画家の性格や人生にここまで深く切り込んだ本は読んだことがないので貴重だ。
何事も全体像をつかんでからじゃないと嫌、という方はこの本からどうぞ。それ以外の方はまずは美術専門の教授などが書いたオーソドックスな本を読んだ後におすすめします。
私のアクション:改装中で見られなかったオルセーにリベンジ!
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