毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

納得の超大作☆☆☆☆

1Q84 BOOK 1
村上 春樹
新潮社(2009/05/29)
¥ 1,890
1Q84 BOOK 2
村上 春樹
新潮社(2009/05/29)
¥ 1,890
1Q84 BOOK 3
村上 春樹
新潮社 (2010/04/16)
¥ 1,995
もういちど 村上春樹にご用心』がものすごく読みたかったので*1、文庫版を順に買おう、というプランを返上して図書館で借りた*2
新刊が出たから『1Q84』も読みたくなった人が多いのか、図書館には今もすごい数の蔵書があるのに少しだけ待った。
とは言え、分厚い3冊が一度に来たらかなり大変。ものすごいボリュームだからだ。

たいてい村上作品は一気に読んでしまうのだが、さすがにこれは寝食を忘れられない今の状況に勝てず、1日半かかった。
私としては不徳の致すところと言いますか、ちょっと不本意な結果。



※目次は掲載していません。理由は下にあります
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が“好きな方の村上作品”なら、これはどちらかと言うと“苦手な方の村上作品”にあたる。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻下巻』が、私にとって苦手な方の代表作だ。話の展開が早くて、暴力的な傾向が強く出ていて、話があっちに行ったりこっちに行ったりする。嫌いなわけじゃないんですが、理解するのにちょっと時間がかかるんですね。

この作品では、主人公の男女ふたりがそれぞれの場所で描かれる*3。それが少しずつ重なっていくという、手の込んだ、村上さんお得意のストーリー展開だ。
なかなか心温まる作品だった。あのストーリー展開で心温まるもないだろう、と思うが、私はこの本を読んで村上さんの古い短編を思い出した。
カンガルー日和』という短編集に収められた「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子と出会うことについて」という作品が、短編の中で一番好きなのだが*4、時々ふっと同じ匂いがするようでうれしかった。


この3冊を読む時に一番気になったのは、「BOOK2で終わりと思っていたら、私は納得できたのか?」ということだ。上を見てもらったらわかるが、1と2は同時に出たが、3が出版されたのはほぼ半年後。
確か、当時は2冊で終わりという風に理解されていて、半年経ってから「3が出ます」ということになり、ちょっとした騒動になった記憶がある。
実際に読んでみて感じたのは、「私だったら納得できない、と思ったに違いない」ということだ。これはたまりません。2のラストのあんなところで「ハイ、おしまいです」と言われたら壁に本を投げつけそうだ。
読んだのが3冊揃ってからでよかった。


村上作品の長編に共通するのが、魅力的な脇役陣だ。今回も個性的な人物がたくさん出てきて、心に残る言葉をあちこちに残している。ストーリーを堪能したあとは、そういう素敵な言葉を拾って読むのも楽しい。

また、面白いと思ったのが各章の名前の付け方。それぞれ、中心となる人物名と、その章のどこかにあるフレーズからできているのだが、この引用箇所が絶妙なのだ。左の各ページ下に章の名前が書いてあるので、「おお、そうきたか」とだんだん探すのが楽しくなった。こんなに趣向を凝らした章の立て方は今までの村上作品にはなかったんじゃないかと思う。
その楽しみは実際に読んで味わってほしいので、あえて目次を載せなかった。

大作なので読むのはけっこう大変ですが、大変さを上回る楽しみが詰まってます。
ただし、時間のある時に読むのをおすすめします。少しずつ読み進むタイプの作品ではないので。
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読書日記:『村上春樹、河合隼雄に会いにいく 』
読書日記:『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』
読書日記:『走ることについて語るときに僕の語ること』


※この本のメモはありません

*1:顛末は2013年年5月17日の記事をご覧ください

*2:もちろん、買うというプランは残っています。やっぱり手元にほしいので

*3:BOOK3では、もう一人別の視点からの話も加わります

*4:内田樹センセイも、好きな短編3つの中にこれを挙げられていました。他のふたつは「中国行きのスロウ・ボート」と「午後の最後の芝生」