毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

「理想の教育」がここにある☆☆☆☆

教える力: 私はなぜ中国チームのコーチになったのか
井村 雅代(聞き手:松井 久子)
新潮社(2013/04/18)
¥ 1,260
元・シンクロナイズドスイミング日本代表コーチである井村雅代さんの本。
正確には、親交の深い松井久子さん(映画監督)が聞き書きしてまとめたものだそうだ。
井村さんが中国チームのヘッドコーチになられた時は驚いたし、ショックも受けたが、真相はやはりご本人の口から聞いてみないとわからないものだと感じた。
また、選手の育て方を読み、これが理想の教育だ、と感動した。


◆目次◆
はじめに
第1章 「裏切り者」と呼ばれて
第2章 新天地
第3章 メダルを取るために来た
第4章 私は、コーチがしたいんです
第5章 勝つための強いこだわり
第6章 誰かの役に立つ人でありたい
第7章 再び、中国へ
第8章 選手を育てる、コーチを育てる
おわりに

井村さんが中国のヘッドコーチを引き受けたのは、ただただ日本を強くしたかったからだそうだ。
シンクロが採点競技である以上、「印象」はやはり大きなポイント。ロシア出身のコーチのいるチームの評価が自然と高まるように、元日本代表のコーチが中国チームを強くすれば、日本の評価も上がる。そう考えたという。また、アジア全体の力を底上げしたいとも考えたそうだ。
そもそも、井村さんは自分から日本代表チームを辞めたのではなく、「長年やってきたから」「年齢オーバー」という、よくわからない理由ではずされたという。代表チームを離れたと知った中国チームが依頼して、それを引き受けただけのことだ。
その遺恨が未だに解消できず、井村さんご自身がまた日本代表チームのコーチをしたいと希望されているのにできない、というのは日本の大きな損失だと思う。
この本に書かれているのはそれだけではないが、サブタイトルにご本人の悔しさを強く感じた。


2回のオリンピックでヘッドコーチをつとめた中国チームでの指導の話、28年間コーチをつとめ、オリンピック8回、世界選手権6回でメダルを取り続けた日本チームでの話と、興味深い話がたくさん出てくる。
この本で初めて知ったが、井村さんはもともと体育の教師をされていたそうだ。掛け持ちで担当していたスイミングクラブから専念するよう頼まれて、のちに教師は辞任。
元教師だからちゃんと指導できる、というのは偏った見方かもしれないが、井村さんがただシンクロを強くしたい、だけではなく人を育てたい、という強い信念をお持ちなのは、きっと教育者だったからだろうと感じた。

今も年に1回、シンクロ未経験の小学生対象に3日間の合宿を行い、3日間でシンクロができるようにしてしまうのだそうだ。3日間で驚くほど子供たちは成長するという。

私は、いつも子供たちに、
「オリンピックは、スポーツの天才の集まりではないのよ。あれは、オリンピックに出たいと、誰よりも強く、強く、思った人の集まりなの」と言っています(P158)

私は、子供が何か目標を持った時に、その目標に向かって、一歩踏み出す手助けをしてあげたいの。持った夢が、いつか実現すると、信じ続ける手助けをしてあげたいんです。
精神的に強くなるとか、自分に負けないとか、諦めないといったことを教える(P159)

選手本人が、強くなりたい、もっとうまくなりたいと心から思わなければ、いくら指導者が頭ごなしに言ったり手を上げたりしても強くさせることはできないという。
この春に出た本なので、桜宮高校の自殺や柔道女子日本代表の問題にも触れられているが、とても説得力があった。
井村さんは選手を徹底的に追い詰めるが、その一方で、きちんと自分の言葉が選手に届いているか、選手1人ひとりの特性を踏まえてどのように指導すればいいか、きめ細かく対応されている。そこには選手を思う愛があるからだ。
しかも、ひとつひとつにきちんと筋が通っている。この人になら、どんなに辛くてもついて行こうと思うだろうなあと感じた。

また、全編通して人は強くなるために何が必要なのかがたくさん語られている。指導者や教育者以外でも、自分の殻を破りたい、成長したい人にはヒントがいっぱいある。
ぜひ読んでみてください。大阪弁が苦手な人は少し読みにくいかもしれませんが、関西以外の人でもそう違和感なく読めるよう、うまくまとめられていると思います。
私のアクション:毎日「1ミリ成長」を心掛ける

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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

時を待つ(P28)

自分の思うように行かないことがある時は、「ここが辛抱や」と思って、時を待つんですね。
(中略)
自分の中で筋を通していたら、「あとは時間が解決してくれる」と、一歩引くことも大事だと思っています。

1ミリの努力(P40)

今日、垂直跳びを跳んだら40センチ跳べた人が、
「3ヶ月後に、50センチ跳びなさい」と言われても、できるわけないですよね。でも、
「3ヶ月後に、10センチ上まで跳ぶんだ」と思わないで、
「明日、40センチと1ミリ跳ぼう」と考える。それならできますよね。
1ミリずつを100日続けたら、10センチになるでしょう?
そうやって、大きなことは考えずに、毎日1歩ずつと考えるんです。

プレッシャーなんか、とことん感じればいいねん(P74)

プレッシャーとか緊張は、とことん味わって、そこを突き抜けないと。
真正面から向き合って、プレッシャーを感じつくすと、
「こんなもの、何の役にも立たへん。自分の力を出すしかないんや」という結論まで行って、ようやく開き直ることができる。

幸運も、オーラも、元気な人についてくるのよ(P121)

一番大事なのは「心の才能」(P173)

心の才能がなかったら、選手は絶対上手くなりません。
(中略)
「私はまだこれができないから、できるまでやろう。他人が寝ている間にも、私は寝ないでやるぞ」という心の才能さえあったら、何でもできるようになるんです。

大きな試合の前の「心地よい緊張」は絶対必要(P183)

練習の時と同じ気持ちで行くなんて、とんでないことです。
「火事場の馬鹿力」というけれど、心地よい緊張の中で思わぬ力が出るんです。

中途半端な練習をして、「試合の時はちゃんとしよう」なんて思っても、絶対上手く行かない(P188)

ものすごい練習をした末に、「私たちはやれるだけの練習をした」という自信があって、はじめて思い切り力を発揮することができる。そして、それができた時に結果が出るんです。