毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

朝ドラとはひと味違う“原案”本☆☆☆☆

現在絶賛放送中のNHK朝ドラ「花子とアン」。村岡花子訳『赤毛のアン』で育った私も毎日楽しみに見ている。

原作も読んでみたいと思っていたところ、書店で平積みになっているのを発見した。何と、村岡さん翻訳のアンシリーズと同じ新潮文庫で、表紙も同じようなイラスト。うれしくなって買って読んだ。
おそらくほとんどの人が「赤毛のアンの翻訳者」として記憶している村岡さんだが、実はもっとさまざまな面を持つ生涯を送られていたことを初めて知った。


◆目次◆
プロローグ 戦火の中で『赤毛のアン』を訳す
第1章 ミッション・スクールの寄宿舎へ
第2章 英米文学との出会い
第3章 「腹心の友」の導き
第4章 大人も子供も楽しめる本を
第5章 魂の住家
第6章 悲しみを越えて
第7章 婦人参政権を求めて
第8章 戦時に立てた友情の証
第9章 『赤毛のアン』ついに刊行
第10章 愛おしい人々、そして本
エピローグ 『赤毛のアン』記念館に、祖母の書斎は残る

サイトや朝ドラのオープニングを注意深く見るとわかるが、この本は原作ではなく原案となっている。
つまり、ドラマはこの本の通りではないのだ。家族や周囲の人の名前に始まり、村岡さんは実際は8人きょうだいの長子だったり*1、実家は甲府ではなく品川だったり、ずいぶん違う。
もちろん、人生の骨格・大切なポイントは残してあるので、給費生として女学校の寄宿舎に入り、卒業後は教師となり、村岡氏と結婚するのは同じだ。
この本を読む前に、「読んだらドラマが面白くなくなるかな」とちらりと思ったが、その心配は無用だった。むしろ、「あれをこんな風にしたのか」と脚本のひねり方がわかって面白い。

ドラマを見ている人は、この後の恋愛と結婚に興味津々だと思うが、実際はまったく違う→(出会い方は変えてありましたが、どうもドラマでも“道ならぬ恋”はそのままのようですね。6/24追記)。出会ってすぐ大恋愛の末結婚されたそうだが、このエピソードは朝ドラというよりは昼ドラか深夜枠に似合いそうだ。気になる人はぜひこの本を読んでください。


村岡さんは結果的に翻訳者として大きな功績を残されたが、実はご自分で本を書きたいと思っていて、作品もいくつかあるそうだ。
また、文壇と関わりの深い位置にいらっしゃったので、この本の後半はまるで日本文学史か日本史の教科書のようだ*2。著名人の名前がずらりと出てくる。
これを今後、脚本家の中園ミホさんがどう料理されるかが楽しみ。

全然知らなかった村岡さんの生涯に触れることができ、とても楽しかった。
この本の著者はお孫さんだが、文章が巧くてぐいぐい読ませる。400ページ以上ある分厚い本が、楽しくすいすい読めた。

ドラマファンの人も、赤毛のアンが好きだった人も、ぜひ読んでほしい本。
村岡さんがどんな思いで赤毛のアンを翻訳し、世に送り出したのかを知れば、きっと読み返したくなりますよ。
私のアクション:『赤毛のアン』を読み返す

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読書日記:『「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法』茂木健一郎さんの本です
※この本のメモはありません

*1:お兄さんはいらっしゃいません

*2:婦人参政権運動に注力していた時期があり、市川房枝さんとも親しくされていたそうです