メジャーに挑戦する選手に対して感じることは、「日本で活躍していても、それがそのままメジャーで通用するわけじゃない」のが難しいところだ*1。
昨シーズンのワールドシリーズで優勝、日本人初の胴上げ投手になった上原浩治投手は何を考え、どう行動してきたのか、興味を持って読んでみた。
◆目次◆
プロローグ
第1章 変わらない自分
第2章 89マイルの不思議
第3章 生命線のスプリット
第4章 乗り越えた日々
第5章 野球とベースボール
第6章 反骨心
第7章 ボストンでの頂点
エピローグ
上原投手は、アメリカに渡った直後は思うような結果が残せずに苦労していたが、昨年ボストン・レッドソックスに移籍した後の活躍は記憶に新しい。
この本を読む前に、昨年たまたまテレビで上原投手の特集番組を見ていた。
最初のチームの本拠地に家を買ったため、現在ボストンではホテル住まい。狭い部屋でビールを飲みながらテレビを見ている姿は、失礼ながら出張中のサラリーマンみたいだった。
食事も至って質素。ホテルの部屋で摂っていたのはテイクアウトのものだったし、確か朝昼も本拠地ではチームの食堂で作ってもらったものを食べる、と語っていた。
そんな毎日であれだけのパフォーマンスを続けるモチベーションはどこから湧いてくるんだろう、と思って読んだ。
上原投手は、実はプロ野球選手としてはとても珍しい経歴の持ち主だ。
高校まで外野手だったのだという。途中でピッチャーの練習も始めたが、控えのまま卒業。大学は教師の資格を取るために進学しようとしたが受験に失敗。1年の浪人生活を経て入学したそうだ。
巨人にいる頃、「雑草魂」という言葉が有名になったが、決して王道ではない道を苦労して歩いて頂点にたどり着いた努力には頭が下がる。
野球が好きだから努力もできたし、どうすればもっといいピッチングができるのか考え抜いてきたのだ。やっぱり「好き」は大きな武器なのだと思う。
もちろん、日米の野球の違いや、去年のワールドシリーズまでの経過もくわしく書いてあるので、メジャーが好きな人にとってはとても興味深い本だと思う。
また、自分の球種や投げ方についてもオープンに書かれている。私は自分で野球をしないのでそんなものか、程度に読んだが、好きに人にはたまらない内容だろう。
上原投手はこまめにブログを更新することでも有名だ*2。
その日の登板のことを詳細に書いてあるので、企業秘密は大丈夫か、と心配になるが、あれは彼流の気持ちの切り替え術なのだそうだ。感情を吐き出すところが必要なのだとか。アメリカにいて、日本語で話せる人が身近に少ないからなのだろう*3。
上原投手のすごさは、下のメモの最後の項目を読めばわかると思う。超一流になる秘訣がギュッと詰まっていると思うので、これを読むだけでもこの本の価値は充分にある。
あ、読むだけじゃダメですね。ひとつでもふたつでもぜひ、実践を。
私のアクション:「上原投手の信条」を印刷して持ち歩く+実践!
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
「New day!New day!」(P27)
※ボストン・レッドソックスで、チームメートがかけてくれる言葉
要するに「打たれても気にするなよ」ということだ。「また次の日、がんばればいいじゃないか」と。その言葉が僕にとっては力になったし、チーム全体の合い言葉にもなっていった。
誰も助けてくれない(P56)
「打席に立ったら誰か助けてくれますか?」
「マウンドに立ったら誰か助けてくれますか?」
誰も助けてくれない。
(中略)
考える力を養いながら、自分のスタイルをいち早く見つけ出す。それを確立していくことが、野球においても大切なことだと思う。
ひとつひとつの動きを体に染み込ませる作業には、ある程度の時間が必要だし、ぶれない心と継続する力が必要なものだ(P65)
上原投手の信条(P172)
・目の前の野球と向き合い、悔いの残らない全力投球で挑む
・立場が変わっても、やるべきことは一緒。一球たりとも手を抜かない
・年齢は関係ない。その世界で戦う覚悟を持ち続け、そのための準備を怠らない
・何事も徹底し、継続する。毎日コツコツと準備する
・逆境に屈せず、何事にも動じない心の強さを持ち続ける
・あらゆる局面の対処法を見つけ出し、「引き出し」のバリエーションを増やす
・自分で考えて行動を起こし、いち早く自分のスタイルを見つけ出す
・自分の武器を最大限まで引き上げる
・自分の「目」を信じ、直感力を大事にする
・適度な感覚とバランスを保ち続ける
・感情を吐き出し、すぐに気持ちを切り替える
・大きな力に立ち向かう「反骨心」を持ち続ける