図書館で予約してずいぶん待ち、やっと読めた。なかなか衝撃的な本だった。
◆目次◆
蚊がいる(初出誌:L25)
かゆいところがわからない(初出誌:週刊文春)
マナー考(初出紙:読売新聞夕刊)
納豆とブラジャー(初出誌:GINGER L)
特別対談 穂村弘×又吉直樹
さまざまな媒体に連載されたエッセイをまとめたもの(巻末の特別対談のみ新たに収録)。かなり大きめのハードカバーで、とにかくインパクトのある装丁*1だったので、見た時にはびっくりした。
面白そう、と予約してから時間が経っていたので、自分が何に惹かれたのかよく覚えていない。
失礼ながら、穂村さんがどんな方かもまったく知らなかった。いろいろと調べてみると、雑誌『ダ・ヴィンチ』で「短歌ください」*2というコーナーを担当されている方だった。かなり前だが、一時期この雑誌を読んでいたことがあり、その時に「ずいぶんシュールな選者だなあ」と思っていたので、「ああ、あの人ね」と自分の中で納得。
記事の最後に自作の短歌が添えられているものがいくつかあり、それを読んで著者のすごさを思い知らされた。
Wikipediaで高橋源一郎氏が著者の第1歌集『シンジケート』を評して
「俵万智が三百万部売れたのなら、この歌集は三億冊売れてもおかしくないのに」
とあり、これまた深く納得。
と、短歌はすごいのだが、エッセイは全体にダメダメな感じ。関西弁で言う「ヘタレ」そのものなのだ。“自意識過剰で固まってしまい、うまく世の中を渡っていけない人”の日常が語られる。読みながら吹き出してしまう。
主に10代の時にこういうことあったな、と思うのだが、だんだん「この人大丈夫かな?」と心配になってくる。
調べてみたらエッセイもたくさん出されているので、これはもう「お約束キャラ」のようだ。
でも、巻末の対談を読むと、ただのダメダメではなく、“ナイーブな心を持ったまま大人になった”人の生きにくさだということがわかってくる。さらに、それが太宰治にもつながる流れだという言及もある。
妙に世渡りがうまくなっていないか、自分の胸に手を当てて考えてしまった。
とはいえ、このナイーブさではたいそう生きにくいと思いますが。
文句なしに面白く、時々するどい切り口のひとことがあるエッセイ集。ついうっかり自分を省みたくない人は、やめた方がいいかも。
私も次は『短歌ください』にします。
私のアクション:『短歌ください』を読む
※この本のメモはありません
*2:書籍化されています。『短歌ください (角川文庫)』『短歌ください そのニ (ダ・ヴィンチブックス)』など