著者の本は今までに何冊か読んでいるが、正直言って「幸福論」というタイトルを見た時はスポーツ選手には合わないのでは、という印象を持った。
その予想を裏切り、なかなか面白かった。
◆目次◆
1章 ありのままの幸福―私の新しい生き方
2章 一歩前へ―失うものは何もない
3章 楽しむ―追求する喜び
4章 出会う―人から学ぶ
5章 伝える―同じ視線で夢を描く
6章 受け入れる―自然体から生まれてくるもの
著者が自分の人生(テニスはもちろん、それ以外のことも含めて)を通して、何を幸せだと感じているのか振り返った1冊。
やはり著者に期待するのは、一度引退してカムバック、というめずらしい経験がどんなものなのか、ということと、40代でプロテニスのトップクラスで戦い続けるためにどんなことをしているのかのふたつ。
結婚生活やふだんのことも包み隠さず書いてあり*1、こんな風に感じているのか、と興味深かった。
一番面白かったのが自己コントロールについて。実は付せんを貼ったのはほぼ第3章に集中していたのだが、自己コントロールの話が「楽しむ」というくくりに入っているのが著者らしい。
体力の面では20代より劣っていても、今はメンタル面のコントロールがかなりできるようになって、それでカバーできているのだそうだ。
年を取ることがプラスになる場合もあるのだ。
勝っても負けてもテニスが楽しめているのが伝わってきた。
後半の5章6章は、海外ボランティアの話などで、ちょっとピンと来なかったが、全体を通して感じたのは、いろいろな面に関して“20代の頃はこう感じていたが、今はこんな風に変わった”と、とても具体的であること。著者と同年代の人が読んでも面白いし、今20代の人が読んでも“こんな風に変化するんだ”という予習になってよさそうだ。
サブタイトルであるNothing to lose.(=失うものは何もない)は、プロ復帰を迷っていた著者に夫・クルム氏がかけたものだそうだ。これは魔法の言葉だと思う。
前向きに努力して結果を出している人の言葉はやはり心に響きます。気軽に読めるので、心に風を感じたい人はぜひ読んでみてください。
私のアクション:ためらったらNothing to lose. を口ぐせにする
関連記事
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
Nothing to lose./失うものは何もないじゃない(P65)
選択肢はできるだけ多い方がいい(P83)
人の意見も聞き、積極的に情報収集する。いいものは取り入れて、最後は自分で決める。そういう柔軟性が大切。
怒りを発散して、後に残さない(P87)
それが自己コントロールで最も気をつけていることだ。
継続は同じことの繰り返しではなく、成長し続けること(P89)
たったひとつのことでも毎日何かを続けるには、それなりに気持ちを強く持つ必要がある。時間通り、予定通りのルーティンをつくることで、自分の中にリズムが生まれる。
やるべきことを確実にこなし、決めたことをきちんとやり抜くことで、いずれ実を結ぶのだ。
年を重ねるほど夢を明確に持っていないと、前進していけない(P89)
たとえ最初はやせ我慢であったとしても、それを貫き通すうちに、本当に風向きが変わってしまう(P96)
常にふたつの目標を持つ(P121)
目の前のことと、その先にある達成したい少し大きな目的のふたつ。
目の前のことはわかりやすい。だが、その先に何があるのかイメージを持っていないと、ひとつ目標をクリアしただけで終わってしまう。
その先にこそ本当の目標がある。常に遠くのゴールまでつながるアンテナを張って、やりたいこと、したいこと、将来こうなりたいというものを見据える目を持っておく。
*1:家事の分担は著者とクルム氏で70対30だとか、オフシーズンの過ごし方など