『ハードボイルド/ハードラック』に続き、順番に読もうと借りて来た吉本ばななさんの1冊。
こちらの表紙は、しょっ中エッセイなどでお名前を見かける原マスミさんが描いている。
昔読んだ、『マリカの永い夜/バリ夢日記』*1という不思議な作りの本があった。
半分小説で、半分がバリ島滞在中に見た夢を中心にした日記という構成だったと思う。
今は文庫で「世界の旅シリーズ」と銘打っているようで、この本はその3巻目だそうだ。
今回はほとんどが小説で、後ろに長めのあとがきとしてアルゼンチン旅行記と、旅程表が付いている。
私は南米にあまり興味がないし、ヨーロッパに行くだけでもヘトヘトになるのに地球の裏側に行くことはたぶんない。それでも現地でしか感じられない暑さや風や匂いが伝わってくる小説だと思った。すごくリアルな手触りがあるのだ。
たくさんの写真や、原さんのこってりと濃い絵がさらにそれを強めているのだろう。
短編なので設定はさまざまだが、どれも少しずつアルゼンチン(と一部周りの国)が関わっている。
きっと行った人ならとても楽しめるだろうし、これから行きたいと思っている人にとってもワクワクする本だと思う。
私はイグアスの滝が出てくる最後の「窓の外」という作品が一番心に残った。
タイトルや表紙からイメージするほど、ドロドロ感はない。確かに「不倫」はどの話にも出てくるが、そう言えば、という程度だった。
その辺も吉本さんの力量かもしれない。
どれも粒ぞろいで、脂の乗った小説が楽しめます。寒い時に読む方が、熱を心地よく感じていいかもしれません。
※この本のメモはありません
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*1:現在読めるのは、『マリカのソファー/バリ夢日記 (幻冬舎文庫―世界の旅)』です。かなり内容に手を入れていて、改題されています