毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

そうだったのか!よしもとばなな☆☆☆☆

イタリアンばなな (生活人新書)
アレッサンドロ・G・ジェレヴィーニ/よしもとばなな
日本放送出版協会(生活人新書)(2002/11)
¥ 734

【お断り】当初この記事では「吉本」表記にしていましたが、この本の著者名が「よしもと」表記のため、訂正しました(15.01.14)。
タイトルも不思議だし、著者も聞いてわかる人はほとんどいないと思う。
図書館でよしもとさんの本を順番に読もうと検索していて、この本の存在を知った。

実はこの方、よしもとさんの小説のイタリア語訳を担当している人なのだ*1
私にとっては、よしもとさんの日記などにたびたび登場する、通称“アレちゃん”のことで、初めてアレちゃんの本名を知った。

何の気なしに「どんなことを書いてあるんだろう」と思って読み始めたが、とても素晴らしい本だった。


◆目次◆
序 イタリアにおける「よしもとばなな現象」A.G.ジェレヴィーニ
第1部 言葉と言葉のハネムーン―対談 A.G.ジェレヴィーニ×よしもとばなな
第2部 アレちゃんと私とイタリア よしもとばなな
第3部 よしもとばななの原点を読み解くキーワード「家族」「食」「身体」 A.G.ジェレヴィーニ
あとがき
クリスマスの思い出(イタリア語訳)

アレちゃんは、私にとっては「よしもとさんのお友達で、翻訳もしているイタリア人」という認識だったのだが、実は全然違う。
くわしくは読んでいただくとわかるが、「日本語を勉強していて、日本に来て、初めて日本語でちゃんと読み通せた小説がよしもとさんの本だったので、ファンレターを書いた」のが最初のきっかけだったのだそうだ。それが、たまたまホームステイ先の人がよしもとさんと接点があり、それから徐々に近くなっていったという。

それとほぼ同時期に「よしもと作品のイタリア語訳」の話がアレちゃんのところに持ち込まれたそうで、“仲のいいイタリア人の友だちだから翻訳を頼んだ”のとはまったく違うそうだ。きっと、会うべくして会ったんだろうな、と思う。


アレちゃんは、よしもとさんの旅行にも通訳として同行することが多く、先日読書日記を書いた『不倫と南米』のアルゼンチンの時も、『SLY』のエジプト行きにも登場している。
そのくらい近い人だから、きっとよしもとさんの作品世界をよく理解している人なんだろうと思う。

日本語からイタリア語に訳したものも巻末に載っているのだが、私はイタリア語が読めないので残念。


第1部の対談は、今まで聞いたことのなかった、ばなな本ブームの時のよしもとさんの気持ちや、なぜイタリアで受け入れられたのか、という話がとても面白かった。
イタリアと日本が実はよく似た面を持っていることや、イタリアのよさ、温かさも初めて知ることができた。

翻訳のむずかしさ、という話もとても興味深い。
冒頭、『TUGUMI』の一節と、そのイタリア語訳が載っていて、それについてアレちゃんが話しているのだが、たとえばイタリア人はまぶたが一重か二重かということを意識しないという。それで“ひとえ”とある表現は、東洋女性の目を連想させる“アーモンド型の目”という言葉を選択したそうだ。

よしもとさんが翻訳に何を求めているのかや、作品をどう読んでほしいのか(これは海外の読者に限らず、日本も含めて)など、あまり他で見ないような話題を読めたのもうれしかった。
やはり、聞き手が長年の友人であり、作品を深く理解した人というのは大きい。


第2部は、よしもとさんがアレちゃんのことのみならず、広くイタリアについて書いたエッセイがいくつかまとめられている。

さらに、第3部が驚きなのだが、これはアレちゃんの博士論文*2を元に書いたものだという。
対談も面白かったが、私にとってこの本のメインは第3部だった。

よしもとばなな作品が何を表現しようとしているのかを論じているのだが、なぜ私がよしもとさんの本が好きだったのか、これを読んで初めてきちんと理解できた。
今までうまく説明できなかったのが、「こういうことですよね」と言語化して差し出してくれたようだ。

よしもとばななは「拡大家族」を作ろうとしているのだという。血縁ではなく、食でつながる家族。恋愛ではなく家族を求め、そのために性による喜びも食べることに置き換わっているそうだ。
引用されているのが暗記するほど読んだ『キッチン』なので、私にとってはとてもわかりやすく、説得力があった。


最近まとめて読んだ本はどれも比較的古い作品で、この本を読んだことでさらに理解が深まった気がする。
もともと「作品論」みたいなものは苦手なのだが*3、この評論は、よしもと(吉本)作品を愛する人にとって胃薬のようなものだと思う。今までうまく消化できていなかった部分もスッと腑に落ちる感じがした。

比較文化論としても、翻訳論としても読める面白い本だと思う。
今は書店では手に入らないようですが、よしもとさんの本が好きな人や、イタリアに惹かれる人はぜひ読んでみてください。

こういう本をご本人が日本語で書かれているというのは本当にありがたい。
比較文化論的な本も出されているそうなので、これから読んでみます。
私のアクション:アレちゃんの本『ボクが教えるほんとのイタリア』を読む
関連記事
読書日記:『SLY』
読書日記:『不倫と南米』


※この本のメモはありません

*1:イタリア語の翻訳者はもうひとりいらっしゃいます

*2:2001年に東京大学大学院総合文化研究科超越文化科学(表象文化論)専攻

*3:村上春樹論」などはほとんどパスしています