的確にポイントがまとめられていて、引用のボリュームがあるので満足感も高い(読んだ気分になれるし、ちょっとしたワークができてしまう日も)。
しかも、文章がとても読みやすい。
この連載がきっかけで読みたくなった本はたくさんある。
「誰が書いているんだろう?」と気になって、文末の(印南敦史)というお名前を覚えた。
その印南さんが文章術の本を出されたことを知り、「これは読みたい!」と思っていたら、タイミングよく家族が借りて来たので喜々として読んだ。
職業として書評を書く人は限られると思うが、この文章術は意外に汎用性が高いものだった。
◆目次◆
はじめに
STEP1 プロ書評家が教える読書術・時間術
STEP2 読み手の視点に立つ
STEP3 大切なのは「伝える」こと
STEP4「読ませる」文章の書き方SPECIAL対談「ライティングで大切なことって何ですか?」
ライフハッカー[日本版]編集長・米田智彦×印南敦史
おわりに
※著者自らこの本を書評した記事はこちら:
「伝わる」文章が求められることは、ビジネスシーンでとても多い。
印南さんは、書評の考え方やテクニックがほぼそのまま、企画書やプレゼンなどに使えると考えている。
書評にしか使わない、と思いがちな「引用」のテクニックも、実は使えるのだ。
そう思って読めば、ビジネス本としても読める(私は自分のブログを改善するヒントを求めて読みました)。
内容は、非常にオーソドックス。
読み手の求めるものを考える。読者を想定して書く。さらに、どうすれば「伝わるのか」、そのポイントもきっちり押さえてある。
STEP4が、印南さんらしさが伺える章だと思う。
「読ませる」文章に必要なものとして次の5つを挙げている。
1.センス(感性)
2.文法
3.リズム
4.簡潔さ
5.削ぐ力
この中にはないが、私は「漢字とひらがなのバランス」が、印南さんの文章の読みやすさの最大の特徴だと思う。これについても言及があり、ご本人もとてもこだわっているそうだ。
伝わりやすさの条件に「フックを作る」というポイントもあるのだが、実は漢字が「フック」になっている。
必要な情報がすべて漢字になっていて、それ以外はできるだけひらがなに開いてある。このため、読みながら漢字が飛び込んでくるのだ。
ただし、これは上級テクニックだと思う。
この本の中で特に面白かったのは、巻末のライフハッカー編集長との対談。
読者が求めているものは何か的確につかむことや、ライフハッカーが目指す方向、といったライフハッカーに関する話題から、電子書籍のことやネットの文章について、など大きなテーマまで、とても興味深かった。
また、対談で印南さんがDJもされていることが判明。私はリズムのある文章が好きなので、とても納得した。
ただ、難点がひとつだけ。
ライフハッカー書評の大きなポイントは「ライターが前面に出てこないこと」。もちろん、印南さんはそこを強く意識して書かれている。
ところが、この本ではかなりご本人が前に出てくる印象を受けた。「著者・印南敦史の本」だからだろうか。
「なんだ、書評とずいぶん違うじゃない」と、肩すかしを食らった感じ。せっかく“プロ書評家が教える”とサブタイトルがついているんだから、全体にライフハッカーの記事と同じトーンで書いてあったらもっと気持ちよく読めたと思う。
地の文はとても読みやすいし、いい例・悪い例の内容も的確で面白い。
私たちのほとんどは作家を目指すわけではないので、まず「きちんと伝わる文章」が書けるようになる、というゴール設定は悪くない。
自己表現よりも伝わる文章が書きたい人にとって、いいテキストになる1冊。
ブログを書く人、中でも書評記事が多い人には特におすすめです。
私のアクション:ブログを書く時「まず一気に書いてしまい、あとでまとめる」方法を試す
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
読み手について意識すべきこと3点(P53)
1.性別
2.年齢
3.立場
「読み手が何を求めているか」を常に意識して書く(P57)
「じっくり読んでもらえれば伝わるはず」は書き手の身勝手な考え(P61)
読者には時間がない。何よりも、それを大前提とすべき。
「まとめる」ための思考のプロセス(P91)
1.柱(テーマ)を決める
素材から記事の柱(テーマ)になり得るものを探し出し、決定する段階。いうまでもなく、ここでの決定が全体を決めるといっても過言ではないので、きわめて重要なポイントといえます。
2.動機
なぜ、そのテーマで論じたいのか。フックはどこにあるのか。それを伝えることで、読者はどのような効果が得られる(または得られそう)か、などについて考える段階。テーマの足腰を固めるというような役割が、こにはあります。
3.全体像
中心にテーマがあって、その裏づけとなる動機が周囲を囲い、さらに全体的にはどう見えるかの確認。俯瞰したとき、それがどのようなかたちになるか、冷静な判断力が求められます。
4.対比
たとえばAについて論じたいとき、対照的なBと比較してみる。そうすることによって見えにくかったAの本質が見える場合もあるので、対比は意義ある手段と考えています。
5.結論
最終的になにをいいたいのか。どのように締めたいのか。そこをしっかり見極め、なるべくスッキリとした読後感を読者に提供できるように意識します。
文章にも鮮度がある(P139)
無駄な時間をかければかけるほど、その文章からは鮮度が失われ、表現もお粗末になる。
まずは勢いで書き上げ、できあがったら読んでみて、おかしな部分をひとつずつ修正していく。それが一番効率的。
メールの文章を上達させる練習(P152)
メールは文頭の挨拶、文末の「よろしくお願いします」といった部分を除くと、本分に使えるのは30字×20行前後。
(相手にスクロールする手間をかけさせない)
30字×20行のテンプレートを用意しておき、その中で文章をまとめる練習をする。
例えば毎朝10分で書く練習をする習慣をつければ、数週間でコツがつかめる。