ゼロ秒で思考するってどういう意味だ、と思っていたら、実に意外な方法だった。
◆目次◆
はじめに
第1章 「考える」ためのヒント
第2章 人はゼロ秒で考えられる
第3章 ゼロ秒思考をつくるメモの書き方
第4章 メモを使いつくす
第5章 メモの整理・活用法
おわりに
実はこの方法、知っていた。試してみたこともある。
著者・赤羽雄二さんの新しい本『1分書くだけ 世界一シンプルなこころの整理法』の書評をライフハッカー記事で読み、どんなものかやってみたのだ。
ライフハッカーの記事はこちら:「A4メモ」でシンプルに可視化すれば、心のモヤモヤがスッキリする
目的は少し違うのだが、手法としてはどちらもまったく同じだ。
- A4用紙を横置きに使う
- 1件1ページ
- 1ページに書くのは4〜6項目
- 1ページを1分以内
- 毎日10ページ書く
つまり、毎日10分だけメモを書くことになる*2。
たったこれだけで?と思うが、著者が長年試行錯誤して編み出した方法で、多くの人にも試してもらって効果は実証済みだそうだ。
著者によれば、思考そのものの訓練は学校でも、社会に出てからも機会がない。しかも、スピード重視の世の中なのに、考えることだけは「時間をかければかけるほどいい」という風潮がある。
だが、速い人は即断即決ができる。優秀なリーダー、優秀な経営者ほど即決だという。
どうすれば即断即決できるような頭になるのか、それを誰でも簡単に身につける方法はないのか。その結論がこの方法だ。速く&深く思考するシステムがこのメモ書きで、最終目的地が「ゼロ秒思考」なのだ。
その効果は、まず3週間から1ヶ月程度で、頭にどんどん言葉が浮かぶようになるそうだ。
…考えるということに対して、苦手意識がなくなり、現状把握も課題整理も実際の行動に関しても、すっと浮かぶようになる。毎日10ページのメモ書きを数ヶ月続けていくと、この「ゼロ秒思考」の感覚がだんだんとわかってもらえるようになると思う(P212)。
イメージや感覚を言葉にすることに慣れてくると、だんだん自分の気持ちや思っていることをあまり苦労せずに表現できるようになる。言いたいことがすぐ出てくるので、ストレスがない。言葉選び等にあまり迷わず、書いて表現することができる(P19)。
言語化能力が鍛えられるということだろうか。
続けていくと、さらにスムーズに表現できるようになり、
食事をしたりテレビを見たりできるように、言葉を自然とうまく使えるようになる。言葉への抵抗や躊躇がなくなり、自由に、的確に使えるようになる(P23)。
最終的には、速さと深さの両方を身につけられる。
…思考の「質」と「スピード」、双方の到達点が「ゼロ秒思考」だ。
ゼロ秒とは、すなわち、瞬時に現状を認識をし、瞬時に課題を整理し、瞬時に解決策を考え、瞬時にどう動くべきか意志決定できることだ。迷っている時間はゼロ、思い悩んでいる時間はゼロとなる(P50)。
しかもこの能力、続けることで年齢・性別・経験を問わず誰でも磨けるという。
「頭の中のモヤモヤしたものは、紙に書いてしまうとスッキリする」というのはよく言われることだが、それを高度にシステム化したもの、と考えればいいと思う。
書くテーマは何でもいいそうだ。
だが、ポイントは「タイトル」。疑問形にしたり、うまく答が書けるように絞り込んだタイトルを決められれば、スムーズに手が動く。
タイトルが決められない人のために、400の例が載っている。その中には人生設計や人間関係、自分に向き合うための項目までさまざまに用意されている。
『世界一シンプルなこころの整理法』は気持ちの整理がメインテーマで、この本はビジネス向けかなと思いながら読んでいたが、意外に仕事以外のこともたくさん挙げられていた。著者は、思い浮かばない人はこの400タイトルを全部書くようすすめている*3。頭が整理され、こころもあまり乱れない人になれるそうだ。
これがきちんとできるようになれば、自分の気持ちを整理するために友人に延々話を聞いてもらったりする必要がなくなる。自分ひとりで自分と折り合いがつけられるようになる、というのは魅力的だ。
慣れてくれば、「1分で4〜6項目」という基本形から進化し、「2分かける発展型」もある。
また、メモ書きから企画書を作る方法もくわしく紹介されているので、仕事に活かしたい人には即使える方法だと思う。
書いてしまったメモはどうするのか。著者は全部取っているそうだが、基本的には3か月後、6か月後にざっと見直すだけでいいそうだ。思った以上にきちんと覚えているという。
私が印象に残ったのは、「気になることはくり返し書けばいい」ということ。毎日書き続けてもいい。この時、前のメモは見ずにまた最初から書くのがポイントだという。
「1分で書けるのだから、また書けばいい」と著者は言うが、これが考えを研ぎ澄ませることになり、頭に定着もするのだろう。
とてもシンプルな方法で、どこでもできる。
頭の回転をよくしたい、という方はぜひどうぞ。
私のアクション:1日10ページ、書いてみる
関連記事
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
素早く意志決定をするのに、どの程度情報収集すればいいのか(P56)
今考えている課題・問題点の仮説に対し、取り得る解決策を3つ挙げる。
それらのメリット・デメリットを書き上げてだいたい目星をつけてから情報収集を始めると、アクション指向で素早く進めることができる。
人間の頭は心と切り離せないため、心が乱れると頭がうまく働かない(P66)
メモを書き続けて見えてくること(P68)
本当に大切なことが何か、何が気になっていたのか、気にしないようにしていたことが何なのか、そういうことが、つい、うっかり、気づいてみたら、書き出されてくる。
「つい、うっかり、気づいてみたら」が重要なポイントだ。目をつぶろうとしてきたこと、考えないようにしてきたこと、でも実際は非常に気になっていたことがはっきり見えてくる。
メモを書くと、頭の整理ができるようになる(P74)
頭の整理ができるというのは、今何が大切か、大切でないか、今何をすべきか、しなくてもよいのか、常に明確にわかっているということだ。いろいろな問題が同時に起きても、慌てず騒がず、必要な情報を収集し、重要・深刻なものから順次解決していくことができる。
似たようなタイトルで何度も書けばいい(P85)
何度も書き、頭が整理された状況になると、そのタイトル(=テーマ)に関してはもうメモを書こうと思わなくなる。気になっていることも、それへの取り組みもはっきりして、あえてメモを書く必要がなくなるからだ。
(中略)
前に書いたメモを探してそれに追記する必要はない。
どうせ1分で書き終えることなので、前に書いたものは見ずに、空(そら)で新たに書き下ろす方がよほど効果的だ。
(中略)
そのテーマについて考え尽くした感じ、書き尽くした感じがしてくると、心の中で大きな変化が起きている。…頭が十二分に整理され、明確なイメージをつかめるようになった状況だ。
タイトルを貯めておく(P87)
A4横置きの1ページを縦に4等分し、メモのタイトルを片っ端から書いておくとよい。
メモのタイトルは、出る時はどんどん出てくる。
1ページにタイトルを100個ほど書いておけば、タイトルを思いつかない時、苦労せずメモ書きできる。
最初は時計を見ながら(P89)
1分がどのくらいの長さなのか、どのくらい急がないといけないのか理解する。
1ページに本文は4〜6行にまとめる(P94)
7行以上書きたい時は、きっとどのポイントかのサブポイントのはず。(中略)
1分間に7〜10行書けてしまう人は、頭の回転はかなりよく、頭に浮かぶことを素早く言語化できるが、構造的に整理して考えることが少し苦手な場合が多い。
つまり、何が重要で何が重要でないかふだんからあまり考えていない、優先順位をあまり考えていない人。
書く順番は気にしない(P98)
不思議なことに、ただ書きなぐっているだけで、自然に起承転結になったり、わかりやすい順序に書けるようになる。
字は正確かつ適切な漢字かな交じり文で(P112)
きれいに書いても、汚く書いても、時間は大して変わらない。
自分が問題なく読めるレベルでいいが、慣れてくると書いたメモをコピーしてチームに配布したり、上司に説明することもある。このため、極端な殴り書きではなく、一応見た目やバランスも考えて書く習慣をつけた方がよい。
慣れてきたら、15秒延長(P113)
1ページ1分で書くことができるようになった後も、「あ、もう少し書き足したいな」ということが時折ある。その場合は、スピード感は維持したまま、15秒程度延長して書き足したいことを追加する。素早く書くことに慣れてくると、この延長は非常に貴重な15秒となる。超高速で頭が動いている15秒だ。
メモは、書いた直後に2〜3秒推敲する(P114)
書き終えた瞬間に前の行を見る程度でもよい。追加したい言葉があれば吹き出しで入れる。
慣れてくると、あまりこういう時間は必要なくなる。
このメモ書きに慣れれば、常に大事なことから書いており、具体的な内容なので、メモの推敲はほとんど必要ない。
メモは思いついたその場ですぐに書く(P114)
何かが気になった時、忘れる前に書きとめる。このやり方が一番新鮮な気持ちで書くことができる。