毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

デザインとは伝える手段☆☆☆☆

デザイナー・佐藤オオキさんのことは、失礼ながらNHK「プロフェッショナル・仕事の流儀」で初めて知った(2013年11月25日放送)。面白かった。
その後、同じくNHK・Eテレの「SWITCHインタビュー達人達(たち)」で、「暗殺教室」のを描く漫画家・松井優征さんとの対談を見て、やっぱりものすごく面白かった*1

何ヶ月か前にネットでたまたまこの本が出ていることを知り、こういうものは早く入る大阪市の図書館で予約。やっと順番が回ってきた。
デザイナーとは何か、アイデアを出し続けられる秘密はどこにあるのか、大胆に公開してくれているすごい本だった。


◆目次◆
はじめに 「デザイン目線」で考えると、ホントの課題が見えてくる
第1章 デザイン目線で考えると、正しい「問い」が見えてくる
――オオキ流「問題発見」講座
第2章 デザイン目線で考えると、ありそうでなかった「アイデア」が見えてくる
──オオキ流「アイデア量産」講座
第3章 デザイン目線で考えると、ホントの「解決法」が見えてくる
──オオキ流「問題解決」講座
第4章 デザイン目線で考えると、刺さる「メッセージ」が見えてくる
──オオキ流「伝え方」講座
第5章 デザイン目線で考えると、見えない「価値」が見えてくる
──オオキ流「デザイン」講座
おわりに

この本はもともと週刊ダイヤモンドに連載されていたものだそうだ。それを「オモテ」とし、「ウラ」を加筆して再構成されている。どれが「オモテ」でどれが「ウラ」か、残念ながら目次には明示されていないが、おそらく各セクション(章の中にもいくつか番号を付した文章が並んでいます)のあとにある、破線で囲まれた1ページコラムが「ウラ」だと思う。


プロフェッショナルでも見たが、著者の仕事は「クライアントの問題を解決すること」。
問診をするという佐藤可士和さんと同様、クライアントの潜在的な悩み、問題を聞き出して形にし、解決に導く。なので、大きなものから小さなものまで、ジャンルも様々にありとあらゆることを手がけられている。

その問題解決方法の正体はあとがきに書いてあった。

 マーケティングとは問題から答えを出す技術です。もちろん、正しい答えが出ないこともあります。デザイナーの思考は、まずは遠く離れたところにポーンと「答え」をイメージします。それは身近なものでも、夢のようなものでもいい。「仮の答え」でいいんです。全然。そして、それを意識しながら目の前に山積みになっている課題と照らし合わせて、それに合った「正しい問題」を見つけること。
 これが、「問題解決ラボ」の正体です(P238)。

これだけ読んでもよくわからないが、具体的に著者がどんな風に課題に取り組み、どう考えているのかが、ていねいに書かれているのがこの本。著者のイラストや実際の商品写真なども添えられていて、わかりやすいし、興味深く読めた。


ふつう、デザイナーといわれてイメージするのはたとえば「高級スポーツカーのデザインを考える人」といった「ある商品の新しい形を作る人」ではないだろうか。
でも、著者のやっていることはそれとはどうも違う。このブログでもたくさん紹介している佐藤可士和さんも違う。
デザイナーの仕事って何?と思っていたら、その答はちゃんと書いてあった。

  デザインとは、単に何かをカッコよくすることが目的ではありません。人に対して何かを「伝える」ための手段です。難しいことをわかりやすく、論理的なことを直感的に。見えないものを見えるように*。それがデザインの本質です(P194)。
*書籍では、この文に破線のラインが引いてあります

デザイナーには2種類あるという。
1.「職人型」…クライアントが作りたいものがはっきりしている場合、それをドンピシャで具現化する技術者。
2.「発想型」…クライアントの頭の中の漠然としたイメージを基に、企画開発から製造、販売、PR、広告宣伝に至るまでトータルで俯瞰し、コンセプトを提供すること。
もちろん、佐藤可士和さんも佐藤オオキさんも「発想型」。

この「発想型」は日本にはほとんどいないそうだ。というのは、日本では高度成長期に「インハウスデザイナー」といって、企業お抱えのデザイナーが多数養成されたため。こちらは「職人型」だ。
ところが、世界のトップブランドが興味を示すのは「発想型」のデザイナーだけ。「発想型」しか真のブレークスルーは得られないからなのだそうだ。


従来のデザイナーとは違う発想型デザイナーの著者によれば、「デザイナーは絵がうまくなくてもなれる」という。デザイナーの適性を判断する基準は、「たとえ話がうまいこと」だそうだ。
というのも、「デザインとは伝える手段」という明確な方向性があるからだろう。

デザイナーに必要な要素は「整理」「伝達」「ひらめき」の3つ。このうち、「整理」「伝達」はデザイナーじゃなくても身につく、と著者は言う。
この本を読めば、そのヒントはつかめそうだ。


特に印象に残ったのは、著者独自の視点。明らかにいろんな角度から見ている。この本にも「ウラ」と「オモテ」があるし、「ウラのウラはオモテ」という言葉も出てくる。どうやって視線をずらしたり、一歩下がって見るか、というコツも紹介されている。著者自身はゲーム感覚で楽しくやっている、という「妄想ブレスト」も面白い。とことん相手の立場で考えてみるのだそうだ。


著者は常に300ほどのプロジェクトを抱えているという。プロフェッショナルでも、毎日たくさんのクライアントと会い、スタッフと打ち合わせをしていた。どんな頭になっているんだろう、と思ったが、こちらの答もちゃんと書いてあった。
「300全部が頭の中にある」わけではないそうだ。目の前の「1」しか見ていないという。その間、ほかの299のことは忘れている。
そうすることで、次に取り組む時、客観的に見ることができて新鮮なのだそうだ。

私など、やらなきゃいけないことが同時に2つ3つあっただけでパニック状態になるので、この方法は参考になった。


ちなみに、著者のメモ術のこだわりは「小さい紙を使う」こと。アイデアは1枚に1つしか書かない、と決めている。プロフェッショナルでも、機内で取っていたメモはたしかロディアの胸ポケットに入るサイズだったと思う。私は大きい方が制限なく書けていいタイプだが、逆に著者は大きすぎるとたくさん書かなきゃ、とプレッシャーになるのだそうだ。
※くわしい方法は下のメモをご覧ください


ふだんはなかなかのぞけないデザイナーの頭の中を見せてくれる本。
デザイナーじゃなくても、問題解決の能力は誰にでも必要なもの。スッキリしたものが好きな人には特におすすめです。
私のアクション:「一度に1つのことだけに集中する」に取り組む

関連記事
読書日記:『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

「ちょっとした思いつき」はとにかく口に出してみる(P17)

すると、それを聞いた誰かが、自分の思いつきを膨らませてくれるかもしれない。
(中略)
言うなればオヤジギャグと一緒。相手が求めている、いないにかかわらず、思いついたことをとりあえず口にする習慣を身につけると、楽にアイデアが出て、たくさんの選択肢を持てるようになる。

センスよりも「好き」でいられるかがカギ(P33)

 センスというのはすごくレベルが高い話。世界のトップ10が戦っている時に、「これはもうセンスだな」と感じる時は確かにある。しかし、それ以外の場面では、すべて努力でカバーできる話じゃないかという気がする。つまり、投入した時間の量で解決できるのではないか。
 誰よりもそれについて考えて、誰よりもそれを好きでいること。そのことを意識して日々の課題に取り組むだけで、たとえばそれに付随することにいろいろ興味を持ったり、違うことであってもどんどんチャレンジできたりする。
 逆に、ピアニストがピアノを1日弾かなかったら、取り返すのに3日かかるというのと同じなので、好きでいることを、自分は日々意識するようにしている。

ひらめき体質は、「変化を減らす」努力から(P47)

変化というものはストレスを生み出す。極力、同じリズム、同じペース、同じことを反復していくことによって、「ここぞ」という時に、ばーんと爆発力が出る。緊張と弛緩の幅が大きいほど筋力量が出る、筋肉と同じ。
ふだんはできるだけリラックスさせる、負荷をかけないことが大事。

みんなが「どうでもいいんじゃないか」とか、「これは後で考えればいいじゃないか」とかいうことに限って、最初に考え始めるととても効果的(P55)

佐藤オオキ式アイデアの出し方(P61)

あえて小さい紙を使用。「1枚の紙=アイデア1つ」くらいの感じで、日々チマチマと書いてはクリアファイルに挟み、数日後に見てピンと来ないものはポイポイ捨てていく。
さらに、これらのメモを数週間に1回「棚卸し」する。脈略のないアイデアどうしをグルーピングしてみたり、順序立てて並べたり重ねたりしているうちに、稀に面白い「化学反応」が起きる。1枚1枚を個別に眺めることによる絶対評価と、複数を比較する相対評価をどちらも並行して行う感じ。
そして、何かつかんだ感触を得たら、メモはすべて捨てる。頭の中に残しておく程度の方が、使い勝手がよい。

妄想ブレストで「憑依力」を磨く(P63)

「妄想ブレスト」はゲーム感覚でできる。
ポイントは、他人ごとを思いっ切り、そして無理やり自分ごとにしてみること。何か新商品が出た時に、自分がデザイナーという立場だったらどうしていたかとか、自分がユーザーならばもう少しこうなっていればよかったとか。
他人ごとに対して、いかに相手の身になれるか。この「憑依力」は、アイデアの起点になりやすく、それを身につけられるのが妄想ブレストの最大のメリット。

「一歩下がる」だけでアイデアは無限に生まれる(P67)

ふだんから一歩下がった状態を保ち、いかに選択肢を狭めないかということに尽きる。たとえば、今日決めても明日決めても変わらないのなら、明日決めた方がいい。その1日の間、一歩下がった状態でいられてアイデアが「化ける」かもしれない。どんどん決めていく方が気持ちいいが、気持ちが悪くても極力延ばす。そういうクセをつけると、「柔軟な発想」も身についてくる。

イデアをたくさん出すには、できるだけ「ポジティブ」にものごとを捉える(P70)

長所は長所として認識し、短所も視点を変えることで長所にしちゃう前向きさが必要。同じ情報量でも「たくさんのアイデアにできる人」と「そうでない人」がいるのは、こういったスタンスの違いがある。

イデアが出ない時は「切り上げる」勇気を(P80)

脳は本能的にこの先がないとわかるからしんどくなるのであって、集中力がないとか、やる気がないとか、そういう問題ではない。しんどくなったら、別のことをした方が、長期的に見れば絶対に効率がいい。

決断のコツは「間違えてもいいからできるだけ早く行う」こと(P81)

早めに間違えれば軌道修正できるが、時間が経過すればリカバリーしにくいだけでなく、他の選択肢がどんどん減っていくから。判断を「間違える」ことよりも、判断が「遅れる」ことの方が被害が大きい。

「振り切った選択肢」を2つ出すクセをつける(P84)

必ず正解を出す決断力を身につけることはできないが、選択肢を2つに絞り込むことは、スキルであり、鍛えることができる。2を1にする絶対的な方法がないからこそ、勝負どころでリスクをきちんと取るために選択肢を2つに絞り込む、というのが大事。
間違った2つを残さないためのコツは、両極端な2つの選択肢を用意して、その両端に引っ張り合う。オンリーワン/ナンバーワン、積極的/消極的、リスクを取ってやる/やらない……。探せば意外と軸は見えてくる。

環境作りが勝敗を左右する(P86)

※オオキさんは環境の変化を嫌うタイプなので、出張先にあらゆるものを持っていき、同じ環境を再現する努力をしている
 音楽でも喫茶店でも、どんな外的要因でもいいが、結局は自分の脳が快適だと感じる「スイッチ」をいくつ持っているかが勝敗を決める。

「いいところ」が何ひとつないと思える事柄にも、ちゃんと探しさえすれば何かしらあるもの(P173)

たいてい「欠点」の近くに潜んでいるか、欠点自体が「いいところ」だったりする。「短所=長所」。

*1:ご覧になれなかった方のために、こぼれ話的なブログの記事がありました。その1その2