最近もの覚えが悪いし、昔から嫌なことをいつまでも憶えている方なので、何が書いてあるんだろう、と興味を持って読んでみた。
驚いた。記憶は感情と密接なつながりがあるそうだ。
◆目次◆
はじめに
第1章 記憶のメカニズム
第2章 学べない理由
第3章 教えるコツ
第4章 仏教の記憶術
記憶するには、「欲」と「怒り」が必要なのだという。つまり、記憶力のいい人、物知りと言われる人は実は「欲」と「怒り」が人一倍強い……ちっとも自慢できることではないそうだ(著者の見解です)。
さらに、たくさん学ぶと「人格が下がる」とまで書いてあった。
このように、俗世間の知識を学んで経験を重ねていくと、どうも人格的には落ちてしまうのです。自我が強くなって、人の話を聞かない人間になっているのですね。頑固になっていくのです(P77)。
その一方、本物の一流の人は「あまりにも皆、子どもなのでびっくりする」そうだ。学んで成長するには心が開いていること、好奇心があることが大切で、そういう人たちは生まれつき心が開いているのだとか。
先日テレビで対談を見た某脳科学者のことを思い出した。あまりに子どもっぽくて心底驚いたからだ*1。
本物かどうかを判断するには、そこを見ればいいのかもしれない。
仏教が教える、記憶するポイントは次の9つ(P215)。
1.有意義か否かを決める
2.脳が「面白い」と感じること
3.学んで脳が楽しみを感じること
4.探求心
5.「無知は惨めだ」というプライド
6.しっかりした論理性
7.ものごとの順番を決めるストーリー
8.復習すること
9.実行すること
よく考えれば、お坊さんや仏教を学ぶ人はお経をたくさん、すべて暗記している。だから仏教なりの記憶術というものがあるのだ。
もちろん、記憶と感情は結びついているので、欲や怒りで憶えるわけにはいかない。だから、修業をして感情をきれいにすることも大切。瞑想をすることで、いろんな余計なものが整理され、憶えるのが簡単になるそうだ。
ところで、私が一番知りたかった「忘れる方法」。残念ながら、これは「こうすれば忘れられます」という明確な方法はないそうだ。
「無理して忘れなくていいですよ」というのが著者のスタンス。
ただ、最後に挙げられていたのは「記憶と感情のつながりを切る」こと。感情が記憶に結びついているのだから、そこを切れば、客観的なデータは残るが、感情が蘇ることはなくなる。
たとえば、津波に流されて命拾いしたような人でも、感情とのつながりを切ることができれば、体験を口にできるようになるそうだ。
具体的に「こうすれば切れる」という説明はないが、やはり仏道の修業(瞑想)をするのだろう。
とりあえず、「感情とのつながりを切ればいい」と知ったことだけでも、少し気分が楽になった。記憶を消そうと思えば思うほど、よけい消えなくなってしまうので*2。
仏教の教えなのだが、さすが『仏教は心の科学』の著者。ここで説明されているのは「仏教心理学」だそうで、内容もとても科学的で、脳科学に近いところもたくさんある。
「憶えるしくみ」について知ることで、ちょっと客観的に取り組めそうだ。
仏教に興味のある人はもちろん、「暗記術」で片っ端から丸暗記しようとしてもうまく行かない、という人はぜひ読んでみてください。
私のアクション:「忘れたいこと」に結びついた感情を切る(方法を考え、試してみる)
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
智慧が現れない理由5(P85)
1.教えを軽視する
2.師匠を軽視する
3.自分自身を軽視する
4.混乱した心で法を聞く
5.集中力もなく、ありのままに考察することはできない。いい加減に考える
「軽視」すると記憶できない。心に鍵がかかってしまう。
「初めて」の気分が大切(P92)
何でも「初めて」と思うことができれば、頭がビシビシ成長する。初めての気分が、脳に強いインパクトを与える。
大人の場合は、何にでも興味を持とうとすることがポイント。
あらゆることは師匠から学ぶ(P94)
師匠を軽視したら終わり。学べない。我々に知識が入るチャンネルはひとつ、師匠しかない。
「自分は頭が悪いのでは」は錯覚(P100)
「自分にできるわけがない」と自分を軽視する気持ちがある限り、新しいことを学んで成長するのは不可能。
新しいことを学ぶ時、「むずかしい、自分の頭が悪いんじゃないのか」と錯覚に陥るが、これを治さないと自分を軽視する人間になってしまう。
自分自身を軽視すると、頭が完璧にロックされてしまい、何も入らなくなる。
学ぶプロセス(P103)
自分の頭で処理し、整理整頓して、しっかり理解して、保管する。学ぶことは一種の稽古。剣道やお琴の稽古のように、手順を踏んで訓練する。
学ぶ場合、データを取り入れ、整理整頓して処理する。それで「こういうことである」と理解して保管する。さらに、必要な時にパッと取り出すために索引(インデックス)も入れる。
思考に自由はない(P110)
学ぶとは真理を知ること、事実を発見すること。自分勝手なことを自由に考えるのではない。事実を発見する上では、思考の自由はない。
大事なのは柔軟性(P114)
柔軟なら、それだけで智慧。柔軟だったら何でも入る。
思考パターンを変える=変身する(P114)
「我々は日本人だ」という主観があったら、外国語は学べない。ちょっと置いて「私はカメレオンみたいに環境に合わせて変身する」と思えば智慧が現れる。思考の場合はカメレオンでよい。
学んでも忘れる理由5(P124)
1.心を込めてていねいに法を聞かない
2.丁寧に学習しない
3.丁寧に記憶しない
4.憶えた教えの意味、意義を観察しない
5.意味を正しく理解して実践しようとしない
よい教え方のポイント5(P131)
1.順序を正しく保って教える
2.たとえを出しながら教える
3.憐れみ(優しい気持ち)をもって教える
4.報酬を目的に教えない
5.自他にダメージを与えずに教える
仏教の性格改善プログラム(P161)
・何十年も良い性格を実行すること
・本性に気づいて常に戒めること
・強い意思、意欲があること
・あきらめないこと
・理性を育てること
・世間に対して「隠すべきもの」を持たないこと
努力しないと、浄化しない(P169)
意図的に努力しないと性格はよい方向へ変化しない。性格は悪い方向へ変化する傾向がある。ちょっと無理をして意図的にがんばらないと良い方向へ行かない。
目的と意義を定める(P206)
ものごとを憶えたければ、目的を確定する。「この目的で勉強しましょう」と認定すると、脳が落ち着いて「わかりました。やりましょう」と動いてくれる。
「有意義である」と自己暗示をかける(P207)
本当に有意義か否かに関係なく、脳には「有意義」という保証が必要。何か記憶したければ、「このデータが有意義である」と脳に教える。
記憶を忘れようとするのではなく、感情との縁を切る(P225)
記憶はコントロールできなくても、感情はできる。
感情とのコネを切ることができれば、憶えたデータは何の問題も起こさない。かえって、客観的に明晰に憶えておくことができる。
記憶されたデータと感情のコネを切ることで、心が自由に、安らかになる。