この本を読もうと思ったきっかけは、テレビ番組だった。
9月5日に放送した、
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「宮沢りえ×リリー・フランキー」 *1。
この時のリリーさんが名言連発。あまりにすごいので、何かリリーさんの書いたそういう本はないのかな、と探してみたらヒットしたのがこの対談集だった。みうらじゅんさんと言えば、日頃お世話になっている「ゆるキャラ」の名付け親。組み合わせとしては最高だ。
番組ほどのインパクトはなかったが、なかなか深い本だった。
◆目次◆
序文
第1章 「人生」にまつわること
第2章 「人間関係」にまつわること
第3章 「仕事」にまつわること
番外編 [みうら&リリーが皆さまの悩みに答える]人生駆け込み寺
第4章 「生と死」にまつわること
あとがき どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか
もともと雑誌の対談で知り合い、プライベートでも仲のいいお二人。
ある日、「どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか」という言葉をきっかけに、人生にまつわるさまざまなことを語り合ったそうだ。
この対談集は、その日の気持ちの昂りを記録しておきたいという
二人の強い要望から始まった。
都内の居酒屋から箱根の旅館まで、幾度もの対談に臨んだ。
対談を終え、原稿化作業の最中に東日本大震災が発生。
多くの日本人が自分たちの価値観に疑いや不安を抱いた。しかし、彼らの価値観はブレず、その言葉も色あせなかった。
理由は二人が「どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか」と、
その人生を「逆算」して捉えているから。本書は、そんな彼らの「逆算の思考法」が少しでもわかりやすく伝わるよう
対談を再構成したものです。――序文(P3)
というわけで、対談なのだがテーマがきちんと分類されていて読みやすい。
だが、この組み合わせで素直に「人生論」に行くわけがなく、バカ話というかくだらないというか、げらげら笑ってしまうような話が続く。そこに時々ぐさっと刺さる言葉がある。このバランスが絶妙。
私はくだらない話は楽しく読めるのだが、どんどん下ネタ方面に流れていくのは少々辛かった。といっても、やはりこの組み合わせでこの話題を避けるはずもないんですが。
番外編の人生相談などは、特にそんな話ばっかり。
※うっかりそういう言葉を引用しようものなら、あとあと大変なので*2、その辺は慎重にカットしてあります。
興味のある方はご自身で確認してください。
人生も後半戦に入り、親御さんを見送った*3りさまざまな経験をすることで、人生を俯瞰できるようになった人たちの言葉は心に響く。自分にとって、大事なものとそうでないものの分け方が変わりそうなくらい。
みうらさんの造語力(じわじわ効いてくる「バンテリン現象」とか、「青春ノイローゼ」「ひとり電通」など)と、さまざまなところからの引用が冴えるリリーさんの「実はインテリ」なところが面白かった。
本はとても丁寧な作り。注釈が充実しているので、時代を遡るような話や、両氏のお仕事をよく知らない人でもきちんと話について行ける。
柔らかい本もたまには、という人はどうぞ。意外に噛みごたえあります。
私のアクション:みうらさんの『マイ仏教』を読む
※おまけ 番組でのリリーさんの名言をうまくまとめたサイトはこちらです。
リリー・フランキーの言葉(名言?)連発/SWITCH・インタビュー(×宮沢りえ) ――ピソっとライフ。
(たぶん、いずれアンコール放送があると思うので、気になる方は時々NHK番組サイトのチェックをおすすめします)
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
※M=みうらじゅん、L=リリー・フランキー
予想できることで、ひとつだけ当たっているのは「いずれ死ぬ」ことだけ(P11)
しなくていい予想で不安になることが一番のムダだから、一生懸命考えないことにしないと。脳は昔から心配性だから、それにつき合ってるとロクな目にあわないよね(M)。
守りって、これまた怖い状態なんだよね(M)(P13)
野球でも守備の時は、自分たちは1点も取れませんからね(L)。
プライドはないにこしたことはない(M)(P54)
美意識さえ持ってれば、プライドはなくていい。
美意識というのは、自分が美しい、大切だと思うもののことだから、逆に自分のプライドを捨ててでも美意識を守りたいと思う(L)。
プライドはない方が、何を言われても腹が立たないしラク(L)(P55)
自分のプライドを傷つけられて怒るヤツって、やっぱり怒り方がセコい。何に対して怒るかということで、その人の大切にしてるものがわかる(L)。
(中略)
(プライドをなくすには)「何で怒ってるんだ?」ということを己に何度も問いかけることで、「カッコ悪いじゃん」ということを、脳に叩き込まなきゃ(M)。
人に会うということは、あくまでそこから「ヒント」だけ得られればいいわけで(P121)
その人から直接何かを教わる必要はない。(「人に会うことが財産」と必死になっている若い人に対して)それって、「お前は営業マンか」ということじゃないですか(L)。
どんなジャンルでも新しいことって、もう出尽くしている(M)(P121)
だけど、若い頃はそればっかり探すでしょ。本当は、そこで何年やり続けられるかに意味があるのにね(M)。
農業の人は、もともと「仕事」と「生業」を分けて考える(L)(P151)
米を作ったり野菜を作ったりするのは「生業」と呼び、これから田んぼにするための所を耕すような、今すぐにはお金にはならないけど未来のためにしている作業のことを「仕事」と呼ぶ(L)。