先日読んだ『読んだら忘れない読書術』で紹介されていたので、読んでみた。
付せんだらけにしてしまうくらい、面白い本だった。
◆目次◆
まえがき
パートI 職場におけるポジティブ心理学
幸福優位性の発見
職場における幸せと成功
人は変わることができる
パートII 幸福優位7つの法則
法則1 ハピネス・アドバンテージ
――幸福感は人間の脳と組織に競争優位をもたらす
法則2 心のレバレッジ化
――マインドセットを変えて仕事の成果を上げる
法則3 テトリス効果
――可能性を最大化するために脳を鍛える
法則4 再起力
――下降への勢いを利用して上昇に転じる
法則5 ゾロ・サークル
――小さなゴールに的を絞って少しずつ達成範囲を広げる
法則6 二〇秒ルール
――変化へのバリアを最小化して悪い習慣をよい習慣に変える
法則7 ソーシャルへの投資
――周囲からの支えを唯一最高の資産とする
パートIII 幸せの波及効果
幸福優位性を仕事に家庭に人生に応用する
あとがき
著者のショーン・エイカー氏は、このブログでも絶賛した『HAPPIER』のタル・ベン・シャハー氏のもとで講義を担当した、直弟子のようなもの。ポジティブ心理学のエキスパートのひとりだ。
12年間のハーバード大学での研究と経験をもとに、著者はコンサルティング会社を立ち上げ、現在はポジティブ心理学を世界中に広めているそうだ。
「7つの法則」だけでポジティブな人生の全方位カバーできるくらい、うまくまとめられている。
「幸福優位性」と言われてもピンと来ないが、英語では「ハピネス・アドバンテージ」。幸せを感じていることがアドバンテージになる、という意味だ。
「幸福を感じる」のと同じくらい、重要なのが「楽観的」であること。
ある保険会社*1で、販売成績や勤続年数と、「説明のしかた」が楽観的か、悲観的かの相関関係を調べたところ、「楽観的説明スタイル」を持つ人の方が圧倒的に数字がよかったという。
そのため、この会社は採用基準を大幅に変更、従来の試験では不合格でも、「説明スタイル」の評価テストがよければ採用するようにした。
すると、離職率が大幅に低下、業績も改善された。
これはつまり、ものごとの見方が楽観的な人の方が、いろいろな面で人生うまく行く、ということだ。
「銀行にいた時に銀行強盗が発生、腕を撃たれて救急搬送された」という状況でも、ものごとを楽観的に捉えられる人もいる、というエピソードには驚いた。
人は置かれた状況が問題なのではなく、その状況を自分がどう捉えるかが問題なのだ。
だから、「ものごとのいい面を見る」練習はした方がいい。
もうひとつ、印象的だったのは、「人間関係は自分を守ってくれるものだから、それに投資しなさい」という第7のルール「ソーシャルへの投資」。
そりゃあ、家族や友人に恵まれている人の方が幸福度は高いでしょ、と思うが、実はこれ、職場の人間関係にも当てはまるそうだ。
無駄話ができるとか、あいさつのついでに二言三言交わす程度のコミュニケーションがあるだけで、メンバーのやる気が違い、業績にも影響するという。
職場では「仕事ができればそれでいい」という、どちらかと言えば無駄話はあまりしないスタンスで来たが、それは間違いだった。
やはり、「会話は人間関係の潤滑油」なのだ。投資だと考えてもう少し積極的になった方がいいかもしれない。
心理学の本では有名な実験のエピソードなどもたくさん網羅されていて、楽しく読める。
ボリュームがあるので最初は大変そうに感じるが、翻訳もこなれているし、著者自身がユーモアのある人なので笑いながら読んでしまった。
7つすべてを同時にやる必要はありません*2。できてないな、というところから気軽に始めれば、少しずついい結果が得られるはず。
「悲観的」な考え方、感じ方が癖になっている人はぜひ読んでみてください。
私のアクション:「ゾロ・サークル」を使って少しずつ片づける
関連記事
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
幸せは「成功に先行する」のであり、単なる「成功の結果」ではない(P6)
「心はそれ独自の場所である。その中で地獄から楽園を作り出すことも、楽園から地獄を作り出すこともできる」(P10)
※ミルトン『失楽園』より
時間と精神のエネルギーを最も多く投入している状況がその人の現実になる(P19)
※ネガティブなものばかり研究していると自身がネガティブになる
人は幸せでポジティブな気分の時成功する(P23)
もう変わらなくていいと信じることが幸せなのではない。自分は変われると思うことが幸せなのである(P37)
自己不信に陥っている時は、仕事でよい成果を出せない(P107)
むずかしい仕事や困難に立ち向かう時には、失敗する理由ではなく、成功する理由を総動員してそれに注目し、自分に幸福優位性を持たせる。
足りない能力のことではなく、自分が持っている重要な能力のことを考える。
過去に同じような状況を切り抜けてきたことを考える。
困難な仕事をする時には、自分の具体的な強みに注目することが最高の結果になることが、長年の研究によって証明されている。
自分の強みを考えるとは(P108)
自分の弱点を見て見ぬふりをするとか、空っぽの自己肯定をするとか、能力以上の仕事を引き受けるようなことではない。
充分な努力をした上で、自分が本当に得意なことに注意を集中する。
感謝はよい気分を生じさせる要因である(P140)
幸せだから感謝の気持ちを持つのではない。感謝の気持ちを持つ訓練を数週間行うと、しなかったグループに比べ幸福度が上がり、楽観的になり、人とのつながりを感じられるようになり、睡眠の質が向上した。
挫折からうまく立ち上がることのできる人とは(P158)
何が起こったによって自分を定義せず、その経験から何を得るかによって自分を定義する人である。
タル・ベンシャハーの言葉(P160)
「失敗に対処する方法は、実際に失敗を経験し、それを切り抜けることによってしか学べない。困難や不運に直面するのが早いほど、生きる上で避けがたい困難に対処する準備ができる」
(『最善主義が道を拓く』より)
逆境はどんなものであれ、自分が想像するほどひどくならない(P180)
なぜなら、ひどい結果を予想することによる恐怖は常に、結果そのものより悪いからだ。
「コントロール感覚」は幸せと成功をもたらす大きな推進力になる(P184)
仕事においても家庭においても自分が自身の運命の主人公であるという感覚。
パニックはジャーク(大脳辺縁系)によるもの(P188)
日々起こる問題のほとんどはシンカー(前頭前皮質)に任せる方がうまく行く。しかし、ストレスを感じていたり、冷静さを失っていると、ジャークに主導権を握られてしまうことがある。これは、生物学的に起こる。大きなプレッシャーを感じると、身体はコルチゾールを大量に作り出す=「闘争or逃走モード」。心理学者はこれを「感情のハイジャック」と呼ぶ。
コントロール感覚を取り戻すには、「ゾロ・サークル」の円を少しずつ大きくする(P193)
最初に描くべき一番小さい円は、「自己認識」である。
ひどい落ち込みから一番早く回復する人は、自分の気持ちを認識してそれを言葉で表現できる人。
次の円は状況全体のうち、どの部分が自分にコントロールできて、どの部分ができないのかを見極めることだ。
気になることを書き出し、自分がコントロールできるものとできないものに分別する。
オール・オア・ナッシングのマインドセットで現実の問題に臨むと、ほぼ確実に失敗につながる(P196)
ノートを手もとに置いて、ストレスを感じた時は思ったことを書きつける(P202)
問題を、脳の感情を司る部分から、問題解決を司る部分に移すために、言葉に置き換える作業が必要。自己認識が「感情のハイジャック」状態を速やかに静めてくれる。
20秒ルール(P229)
「望ましい」行動を「もっとも抵抗の少ない道」にする。ギターの練習をすることが、もっとも楽にできるよう、リビングにギターを置いておく。
棚から取り出す20秒を省いただけで、新しい生活習慣が手に入る。