この本に書かれているのは「自己啓発」と聞いてイメージするものと、実は逆の内容かもしれない。
いい意味で、先入観を裏切られた。
◆目次◆
序 章 ビジネス書が幸せの足かせになる時代
第1章 人生はコントロールできない
第2章 いまあるものを使って生きる
第3章 やりたいことが見つからなくてもいい
第4章 人生をストックからフローへ
終 章 しなやかに生きる
あとがき
鎌田先生は、たくさんの本を出版されている。合理的に、効率よく、理系のアタマでシステマティックに、という内容が多かったと思う。
ただ、それに振り回されていたり、行き詰まったりしている人が多い、と感じるようになったそうだ*1。
ある程度までは役に立つビジネス書や自己啓発書。
だが、この頃はドクサ化しているのではないか、という。
ドクサとは、ギリシャの哲学用語です。ソクラテスの定義によれば、「人間を絶えず惹きつけるものだが、必ずしも幸福にしないもの」。つまり、一見、人を幸せにするように見えるが、よい人生を送るには本当は邪魔なもの、をソクラテスはドクサと呼びました(P16)。
いい薬も、過剰に摂れば毒になるのと同じ。
この本は、ビジネス書/自己啓発書にハマりすぎて、辛くなっている人に向けて書かれたものだ。
……ビジネス書がもたらす多数の功罪を知りつくした上で、よりよい幸せへの道しるべを本書で述べたいと思います(P25)。
つまり、“今までの自己啓発書を超える生き方”というのがこの本の狙いであり、タイトルになっている。
先生ご自身の体験では、やはり3.11の被害の大きさと、2014年に起きた御嶽山の噴火が予測できなかったことがきっかけになっているという。地球科学者として衝撃を受けたそうだ。
地球科学は普通の科学とは少し違う。というのは、再現性のないものを扱っているからだ。
予測も難しい上に、同じ条件で起きることは二度とない。
普通はそれが諦念になりそうなものだが、そこから先生は「しなやかな生き方」に進化する。
それが、理想から引き算するのではなく、今持っているものをうまく使う生き方だ。
ある意味「冷蔵庫にあるもので一品作る」発想と同じ。
そして、またこの本でも「ストックからフローへ」という、ミニマリストの流れが起きていた。
単なる「ものを減らす」ではなく、生き方もフローにするのだ。
……私が繰り返し述べてきた「理想から引き算をしないで、いまあるものを利用する」という生き方が、フローの発想そのものだからです(P171)。
私たちは理想を思い浮かべ、「あれが足りない」「これも足りない」と嘆いたり、それを埋めるべくがんばってきた。
でも、いろんな意味でその方法が限界が来ているんだろうな、と感じた。
学者である先生が“頭ではなく体に聞け”と書かれているのも象徴的だ。
薄い本なので気楽に読めますが、とても深い本。
生き方を変えるきっかけになりそうです。
自己啓発にがんばりすぎて疲れちゃった、という方は読んでみてください。
私のアクション:身体の反応に意識を向ける
■レベル:破 ある程度、ビジネス書/自己啓発書を読んでいる人の方が受け取るものが大きいと思います。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
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*1:大学でたくさんの学生と接するので