毎日「ゴキゲン♪」の法則

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「本当の確率」と「感じる確率」のズレを知る☆☆☆

 

【読書感想】心配学〜「本当の確率」となぜずれる? ☆☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言

リスクとか確率とか言われると数字の苦手な私は逃げ腰になってしまうが、この本は読みやすく、噛んで含めるように説明してくれる親切な内容だった。


 

◆目次◆
はじめに──テロリストが狙う「心配」
第一章 どうせいつかは死んじゃうのに、なぜ「心配」するのか?
第二章 セレブと自分を比べて凹まない、ひとつの方法
第三章 ゴキブリに殺された人はいないのに、なぜこわい?
第四章 もっとも悲観的な情報が安心させてくれる
第五章 実践!心配計算学講座
第六章 心配しすぎず、安心しすぎず生きるには
おわりに──幸せな生き方

著者は心理学者(現在は国立研究開発法人の特別研究員)で、専門は交通事故のリスク。大学で「リスク心理学」などの講義を担当したこともあり、今のテーマは防災リスクだそうだ。

 

心配しないでいいものを心配することをやめ、正しいリスクを知って正しく怖がりましょう、というのがこの本のテーマ。
ただし、「正しいリスク」というのはなかなか簡単に情報が得られない。そこで、実際に自分でリスクを計算する能力も必要になってくる。

……この本では、私も含めた普通の人が、心配の中身について、「少ない労力で、そこそこ正確に知るコツ」をお伝えできればいいなと思っています。
(中略)
……まずは気軽に検索する癖をつけてもらうことと、玉石混淆の情報の中からたしかであろうものを見分ける目を養うことに重点を置きました(P6)。

前半は「本当の確率」と「感じる確率」がズレていることを知りましょう、というのが大きなポイントになっている。
たとえば第1章に出てくる「以下の死因を、死んでしまう確率が高い順に並べてください」という問題。

タミフルの副作用で死ぬ 交通事故で死ぬ インフルエンザで死ぬ
火事で死ぬ 食中毒で死ぬ 癌で死ぬ サメに食べられて死ぬ
落雷で死ぬ 飛行機事故で死ぬ 殺人事件で死ぬ(P21)

この中で最も高いものと最も低いものは、たいていの人が正解するのではないだろうか→答は脚注にあります*1
だが、私の場合2位から9位はめちゃくちゃだった。面白かったので家族にもやってもらったところ、私とはまったく違う順位に並べ替えて、やはりほぼ不正解。いかに自分が怖いと思っているものと、本当に怖がるべきものがずれているか、ということだ。

 

しかも、もっと衝撃的だったのは、順位に添えられている“それぞれ10万人(年間)当たり何人が死ぬか”という数字。1位と2位は100人単位(250人)から一気に10人以下(8.3人)と大きな差があるし、9位の0.001人に対して10位は0.0001人と、ひと桁違う。
でも、自分の怖いと思う感覚は、リスクの差ほど違いはなかったのだ。
やはり、感じる確率が実態とずれていることになる。

 

著者は、リスクの定義を

「起きる確率」×「結果の重大性」(P19)

と定義している。
「よく起きることほどリスクが高く、結果が重大であるほどリスクが高い」と考えればよい。

めったに起きないが、起きてしまうとたくさんの人が亡くなってしまう飛行機事故のようなできごとと、しょっちゅう起きているが1件あたりの死者や負傷者が少ない交通事故のようなできごとを、同じものさしで測ることができれば、比較できる。

 

避けたいリスクはたくさんあるのに、残念ながら使えるお金や時間は有限だ。
リスクを避けるもっとも大きな目的は「危険なことを避けて、なるべく長生きしたい」ということなので、お金や時間は自分に降りかかるかもしれないリスクの「合計値」を下げるために使うのが賢明な選択と言えるだろう。
だからリスクを比較できるようにする必要がある。どこにお金と時間をかけるべきか、検討する材料になるからだ。

 

比較するために、リスクを数字に置き換えるのがポイントだ。
この本では後半に、たくさんの例で実際にリスクを数字に置き換えてあるので、どんな風にすればいいのかつかめるようになっている。
たとえば、妊娠中の女性と授乳中女性がアルコールを摂取した時に赤ちゃんに影響するリスクの比較や食品添加物の危険度、放射線量の数字から体内被曝のリスクがどの程度あるのか計算する方法、など。

この時、リスクを計算するためには、4つの数字が必要になる(P196)。
例)タバコを吸う人と吸わない人の肺がんのリスクを比較する場合
タバコを吸う人○人のうち、肺がんになった人△人
タバコを吸わない人●人のうち、肺がんになった人▲人

△÷○と▲÷●の値を比較する。

また、計算に使う数字を調べる時、サイトの情報の信頼性を判断するチェックポイントもまとめられている。

  1. データの出典が明記されているかどうか。
  2. 結論ありきではなく中立的で客観的な立場を取ろうとしているかどうか。
  3. 身分を明かして、訂正を受け入れる用意があるかどうか。
  4. ほかのサイトと書いてあることが違いすぎないかどうか(P148)。

自分が調べたい単語と併せて「リスク」「確率」「統計」といった、人の意見ではなく数字を探す単語を入れるのがコツだという。なぜなら「予防接種 危険」とか「予防接種 受けるべき」といった感覚的な単語を入れてしまうと、反対派・擁護派といった偏った意見ばかり出てくる可能性が高くなるからだ。

 

一番印象に残ったのは、統計データをどう読むか、という話だった。
たとえば、日本人の死因1位である「ガン」。

例)日本人死因のトップはガンで、およそ3人に1人が亡くなっている。
これに対し、インドでガンでなくなる人はあまりいない。
これを根拠に、「カレーを食べるとがんにならない」説が出ているが、それは本当か?

日本は医学の進歩によって大部分の病気の治療体制が整い、病気以外のリスクも充分下がった結果、がんが目立つようになった。
がんは年齢が上がるにつれて罹患率が高くなる。つまり、長寿の国ほどがんが目立ちやすい。平均寿命が長くない国は、「がんになる年齢まで生きられない」というのが実態だという。

数字から何を読み取るか、という目も鍛えておかないと、せっかくの数字から誤った判断をしてしまうことになる。信頼できる数字を用意するだけでなく、読み解く頭も必要になるのだ。

 

何かあった時に、専門家に聞けばいい、と思っていると、実は危険だと言う。専門家は自分の専門のことはくわしいが、他のことはあまり知らない。科学者は根拠のないことは言えないので、専門外にも関わるリスクに関してはほとんど発言しないそうだ。
リスクが複数の分野にまたがるようになると*2、とたんに情報が得られなくなる。
なので、ざっくりでもいいので、自分で数字を探してリスクを計算できるようになると、むだな心配も減るし、お金と時間を最適なリスク対策に配分できる。

 

「専門家が書いた新書」と聞くと、それだけでむずかしそうで拒否反応が出る人も多いと思いますが、この本は数字が苦手でも読めます。
個人ブログを読んでいるように楽しく読めるので、内容に興味があれば、ぜひ手に取ってみてください。
私のアクション:リスクホメオスタシス*3を意識する
■レベル:守
※この本のメモはありません

 

 

*1:1位 癌で死ぬ/10位 サメに食べられて死ぬ

*2:たとえば放射線の食品に対する影響などがそうです

*3:「このくらいならいいだろう」というリスクの目標水準を持っていて、それに合わせて行動している、とする考え方。たとえば、ABSのついた自動車を運転する時、「ABSがついたから前より安全だ」と考え、安全になった分意識が「早く目的地をめざす」など他に振り分けられてしまい、結局事故率は変わらなかった、というようなこと。「今日はたくさん歩いたからデザート食べようかな」とうのもリスクホメオスタシス