毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

[読書日記]第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい☆☆☆☆


【2020/08/16UP】
かなり前に読んだ本なのできっかけはすでに曖昧ですが、確かどこかで紹介されていたのを読んで興味を持ったと思います。
「直感は案外正しい」がテーマのこの本。挙げられているいろいろな例が面白く、引き込まれて一気に読みました。


  • ポイント1 言語化する回路と違うところを使う「適応性無意識」
  • ポイント2 情報が多すぎると判断を誤る
  • ポイント3 人は表情を読んでいる



◆本の目次◆
プロローグ
第1章 「輪切り」の力――ちょっとの情報で本質をつかむ
第2章 無意識の扉の奥――理由はわからない、でも「感じる」
第3章 見た目の罠――第一印象は経験と環境から生まれる
第4章 瞬時の判断力――論理的思考が洞察力を損なう
第5章 プロの勘と大衆の反応――無意識の選択は説明できない
第6章 心を読む力――無意識を訓練する
エピローグ

こんな本です

紀元前6世紀のギリシャ彫刻を売り込まれたゲッティ美術館(アメリカ・カリフォルニア)。

ハイテクを駆使して徹底的に調べ、本物と判断して購入。でも、購入後に見せられた専門家はみな偽物と感じたそうです。理由は全員「何となく」。

これが著者の言う「第1感」。実は、最初の2秒で判断できていることが多いのだそう。
この「第1感」をめぐる話がこの本のテーマです。


著者マルコム・グラッドウェルはビジネス書作家。
あの「1万時間の法則」の提唱者、と言った方がわかりやすいかもしれません。
book.yasuko659.com


この本はベストセラーになった『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』に続く、著者の2作目。


ポイント1 言語化する回路と違うところを使う「適応性無意識」

有名なテニスコーチのヴィク・ブレーデンは、試合を見ているとほぼ100%の確率でダブルフォールトを見抜ける。
自分がコーチしていない選手でも、初見の選手であっても、サーブを打つ直前に「あっ、ダブルフォールトになる」とわかるそう。

本人はなぜそれがわかるのか解明しようと試みたものの、結局できなかったといいます。

この“理由はわからない。でも「感じる」”がポイント。


著者はこの感覚を「輪切りにする」(原著ではslice)と呼んでいます。
なぜか「直感でわかる」ことが多い。説明を求められても、うまく説明できない。非常に感覚的なもの。

よりよい判断を下す方法を学びたければ、瞬時の判断の不思議を受け入れる必要がある。理由がわからないままにわかることはあるという事実を尊重し、そのほうがうまくいくこともあるという事実を受け入れる必要がある(P57)。

テニスコーチがそうだったように、「わかるのに言葉にできない」のは使っている脳の部位が違うから。これは「適応性無意識」と呼ばれるもの。

このため、感覚ではキャッチしていても、説明しようとするとせっかくの直感が逃げてしまう。直感とは違うことを言ってしまうケースがあるそうです。

ポイント2 情報が多すぎると判断を誤る

直感を活かすために大切なのは、適切な量の情報を与えること。情報が多すぎると失敗につながる、という例が多く挙げられています。


病室も資金も限られるある公立病院で、心臓の痛みを訴える救急患者を適切に診断する方法が求められていました。

患者のどんな情報がわかれば「ICUに入れるべきか、経過観察でいいか」が判断できるか。
今までは時間がかかるわりに、正しく判断できていませんでした。


医師や医療スタッフは、「そんな簡単に診断できるはずがない」という思い込みから、既往症、家族歴、検査データなどどんどん情報を集めます。

すると、情報が多すぎる結果、逆に判断できなくなっていたのです。
その必要がない患者まで長期間ICUに入れることになってしまい、経営を圧迫します。


そこで、情報を整理し、3つのデータがあれば緊急性の有無を診断できるフローチャートが作られました。
その結果、迅速に診断でき、必要な患者に必要な処置ができるようになったといいます。


他にも、ありとあらゆる情報を集めた最新鋭の米軍チームが、演習で敵国と仮定した相手チームに負けてしまった例が面白い。
これも「多すぎる情報を分析するうちに遅れを取る」パターン。刻々と変わる戦況について行けなかったそうです。


相手チームの最高司令官は最低限の指示と、戦場に出たら自分で判断して動いてよい、という許可を与えていました。
司令官は「作戦の目的さえしっかり伝わっていれば充分」と考え、「部下の知恵と経験と優れた判断力を活用しようとした」と説明しています。


「いかに情報を絞り、適切に使うか」の重要性がよくわかるエピソードです。

ポイント3 人は表情を読んでいる

印象に残ったのが表情に関する話。

顔の表情でほぼすべての感情を読み解ける科学者がいました。
筋肉の動きやしわの寄り方などを見るだけで、他の情報を何も与えられなくても、その人がどんな立場で何を考えているか分析できたそうです。


その技法に惚れ込んだ学者が弟子入りしてその方法を学び、解析してまとめたのがFACS(表情記述法)。

この体系はさまざまなところで利用されています。
先に出てきたカップルの離婚の確率診断や、アニメーションの表情を自然にするためにも使われているそうです。


感情と表情には深い関わりがあり、感情よりも表情の方が先(表情につられて感情が起こる)ことも判明しています。

その科学者はコマ送りで表情をチェックし、「この眉の動きはこんな感情を表している」などとすべての動きと感情の関係を解析できたそうです。
私たちは日常そこまで表情を細かく分析することはありませんが、 「言葉にしなくても実は顔に出ている」ことは、私たちが思っている以上に多い。

表情分析のトレーニングを受けていなくても、何となくキャッチできることはたくさんあるのです。
自分がどんな顔をしているか、もっと意識的にならなければ、と気を引きしめました。自分が思ったとおりの表情をしていない(笑っているつもりでも笑っていなかった、など)こともよくあるそうなので。

まとめ

人にはパッと見て判断するという能力が備わっています。正しく判断するにはそれを信じることも必要。「なんとなく」を逃さないようにしましょう。

ただし、環境で左右されたりバイアスがかかる*1ので、気をつけたいところ。


読みものとしてとても面白い本です。ハウツーものと思って読むとがっかりするかもしれないので(「第1感の鍛え方」については、あまり言及がありません)、そこだけはご注意ください。
私のアクション:お客さんを見た目で判断しない――自分にその傾向があることを認め、あえて棚に上げる
■レベル:破 


※この本のメモはありません

*1:車のトップセールスは、ショールームに来た時のお客さんの服装で買うか買わないかを判断しない。これは、バイアスがかかりやすいことを自覚し、あえて判断しないようにしているそうです