※ [Kindle版] はこちら
家族が借りてきた本。佐藤さんの読書に関する本だというので、喜んで読んだ。
とてもバランスのいい、指南役になってくれる本だった。
◆本の目次◆
まえがき
第1章 作家をつくる本の読み方
第2章 外交官をつくる本の読み方
第3章 人間をつくる本の読み方
第4章 教育者をつくる本の読み方
第5章 教養人をつくる本の読み方
第6章 キリスト教者をつくる本の読み方
目次を見てわかる通り、著者の人生に沿って章が並んでいる。
作家や教育者はまだ応用がきくかもしれないが、外交官(ニュアンスとしてはほとんどスパイ)やキリスト教者になるための方法が役に立つ人はそれほど多くないだろう。
最初に手にした時はそう思ったが、著者のこれまでの人生を貫く学びや教え、考え方を知るにはやはりこの書き方しかないと読んでみて感じた。
著者がなぜ神学部に進んだのか、なぜ外交官の道を選んだのか、この本を読んで初めて知った。
10代の頃、キリスト教とマルクス主義の間で苦悩したことも。
著者はある神学者研究のため、チェコスロバキアに留学したかった。しかし当時は社会情勢により、それが叶わなかったという。
そこで、外務省から派遣という形でなら行ける可能性が高い、という情報をつかみ、無事に外務省に入省できたのだそうだ。
こんな風に、全編著者の人生を読みながら本の選び方、読み方、知識の得方を学べる作りになっている。
専門書以外も読んでいい
現代の「知の巨人」である著者が、教養のために何を読めというのかと思ったら、専門書だけではだめだという。
小説は特に若い時の人格形成に重要だし、大人でも小説を読んでいない人は伸びないそうだ。インテリジェンス(諜報活動)はもちろんのこと、仕事にはほぼ「相手」が存在する。自分以外の人の考え方、ものの見方がわかっている方が強い。
また、ミステリーを読んで謎解きをすると、分析力や洞察力が身につくのだそうだ。池上彰さんのあの「時代の流れを読む力」はミステリーを読むことで培われたというから驚きだ。
この本では「通俗本」というものも勧めている。
著者の言う通俗本とは、専門家が一般の人たちにその知識を広めるべく、やさしく平易な言葉で解説したもの。
通俗本には2種類あり、その道の専門家ではない人が書いたものは内容が疑わしいので、必ず著者が専門家かどうか見極めてから読む必要がある。
自然科学の分野では講談社学術文庫や講談社ブルーバックスなどがいいそうだ。
ひとつの考えに片寄らず、まんべんなくいろんな説を読む
マルクス主義は宗教を否定している。母親の影響で皮膚感覚で神を信じていた優少年は、どちらが正しいのか悩んだという。
当時、周囲にいた大人(父、伯父、学校や塾の先生、神父さんなど)はみな、「ひとつにこだわらず、いろんな立場の本を読み、自分で考える」ことを勧めたという。
ただ読むだけでは頭でっかちになるだけ。1冊読んだら頭を白紙に戻して、自分で考えてみることが大切なのだ。
ただし、どの本をどんな順番で読めばいいのかは、自分だけでは限りがある。
著者はその時々に素晴らしい先達に導いてもらえたが、それが難しい時の著者が勧めているのは「大型書店の店員に相談すること」。
フラットな立場から、読むべき本を薦めてくれるそうだ。
これからグローバルで戦うのに必要な3つの力
著者が外務省で研修指導官をしていたころ、選りすぐりの研修生をモスクワの大学に送ったところ、全員が成績不良で退学に。
足りなかったのはロシア語力ではなく、次の3つだったという。
1.数学の力(=数IIIまでの理解)
2.論理学の知識
3.哲学の基礎知識(=倫理)
日本のカリキュラムで学んでいるだけでは、特に論理学は身につきにくいそうだ。
これはいわゆる「無国籍ジャングル」*1に乗り出す1%の人へのアドバイスなので、一般人にはそこまで求められないかもしれないが、確かに専門的な本を読むと、統計学的なアプローチですぐに数式が出てきたり、論理学の知識がもっとあれば…と思うことが何度かあった。
私はいわゆるドのつく文系で、早々と数学から撤退してしまったので、この本を読んでちょっと復習してみようか、という気持ちになった*2。
この本を通して一番強く感じたのは、「誰に導いてもらうか」の大切さ。
必要な時に必要な本を読むよう、著者は常に導かれて来たように感じた。
そんな10代の頃についてくわしく書いたノンフィクション『先生と私』があるそうなので、読んでみたい。
もっと教養をつけたい、どんな風に本を読めばいいかを知りたい人には最適の本。
特に若い人にお勧めです。
私のアクション:『先生と私』を読む
■レベル:守
次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
book.yasuko659.com
関連記事
book.yasuko659.com