- 作者:梅原 大吾
- 発売日: 2012/04/02
- メディア: 新書
勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)
- 作者:梅原大吾
- 発売日: 2012/10/26
- メディア: Kindle版
この本のことは何度か目にしていた。
確か「プロゲーマーの本だけど、人生攻略本と言ってもいい」という評価が多かったと思う。
その後、ちきりんさんとの対談本『悩みどころと逃げどころ (小学館新書 ち 3-1)』を読んで、やっぱり読んでおきたいと思って図書館で借りた。
私は格闘ゲームに興味がないのでゲームのことはよくわからないが、これはもう宮本武蔵の『五輪書』に並ぶのではないだろうか。
読んでいて、「この人は何の道を極めているんだろう。武士道じゃないか…ゲーム道?」と思ってしまったくらいだ。
ゲームするのにこんなに深い考察がいるのか、と衝撃を受けた。
◆目次◆
プロローグ
第1章 そして、世界一になった
第2章 99.9%の人は勝ち続けられない
第3章 ゲームと絶望と麻雀と介護
第4章 目的と目標は違う
第5章 ゲームに感謝
エピローグ
ひとつの大会に勝つ方法と、勝ち続けるための方法は違う。
これがまず驚きだった。プロローグにあるが、
…本書に書かれているのは、ただ勝つのではなく、「勝ち続ける」ことに主眼を置いているという点である。なぜ、「勝つ方法」ではなく「勝ち続ける方法」なのか?両者は似て非なるもの(P13)
「結果を出す」という言葉に置き換えれば、「結果を出す」ことと「結果を出し続ける」ことは根本的に異なる(P14)
のだそうだ。
ひとつの大会で優勝するのは、トップレベルになればそれほどむずかしいことではない。1回だけ優勝できる人は少ないがいる。
だが、勝ち続けるのは本当にむずかしく、一度優勝してもずっとトップで居続ける人はほとんどいないそうだ。
なぜなら、方法が違うから。
優勝したら、そのプロセスを続ければ勝ち続けられそうに思うが、それは違うらしい。
目指すところが違う、というのだろうか。
ウメハラさんは「10の強さを目指すか、11、12、13の強さを目指すか」という言葉でくり返し語っている。
さあ、どちらの道を選ぶのか。
10の強さを手にできる、明るくて平坦な道か。
11、12、13の強さを手にできるかもしれない、暗くて険しい道か。
人によって考えは違うと思うが、僕は迷わず後者を選択する。
正解が見えない中でも、何とか自分自身の足で歩き、自分なりのやり方で高みを目指したいと思う(P116-7)。
10の強さというのは、マニュアル通りとか、お手本のある強さのこと。
11、12、13の強さというのは、自分が切り拓いていくオリジナルの強さのことだ。
だからこそ、10の強さは一時的なものになりやすいのだ。攻略法もすぐ見つけられるし、みんなが10の強さだったら、それこそ若さとか反射神経、瞬発力といった要素で勝敗が決まってしまい、勝ち続けることができない。
10の先に11以上の強さがあるのかと思ったら、はじめからどちらを選ぶか決めなきゃいけないほど違う道だ、というのは衝撃だった。
大事なのはメンタル。いかに心を平穏に保つか。
人と人との戦いにおいて、勝敗は微妙なバランスで決まる。生まれつきの頭脳や理解力、運動神経や反射神経も関係してくるだろうが、ことゲームの世界に関して大方の勝敗は努力の量、その時の精神状態やモチベーションの高さで決まることも多い(P54)。
ウメハラさんは勝っても負けても一喜一憂しない。それどころか、優勝しても喜ぶのはその日だけなのだそうだ。
次の日からは、また淡々と粛々と練習をし、毎日を過ごす。
大会に勝って大喜びしたり、負けて落ち込んだりするのは右肩上がりの成長の邪魔だと考えている。もちろん、負けるより勝つ方がいい。ただし、個々の試合の価値には大きな喜びを見出さない。喜びは日々の練習にこそ感じたい(P191)。
勝ち続けるためには、勝って天狗にならず、負けてなお卑屈にならないという絶妙な精神状態を保つことで、バランスを崩さず真摯にゲームと向き合い続ける必要がある(P57)。
勝ちたいと思いすぎると、どうしても萎縮してしまい、ふだんの自分の力が出せない。
ウメハラさんは努力し続けてきた自分を信頼できるので、どんな場面でも慌てることはないのだそうだ。
勝つことではなく、自分の成長を目的にしたら楽しくなった
ウメハラさんによれば、目的と目標は違うそうだ。
大会における勝利は目標のひとつとしてはいいかもしれないが、目的であってはいけない。
そのことに気づいてからようやく、勝つことより成長し続けることを目的と考えるようになった。ゲームを通して自分が成長し、ひいては人生を充実させる(P190)。
そう考えることで、勝ち負けにこだわりがなくなり、結果的に勝率は上がっているという。
目的と目標をどうとらえるか。今までずっと、いろんな本を読んできたが、この考え方が一番しっくりきた*1。
自分を痛めつけるのは努力ではない
一番印象に残ったのがこの言葉。
これまでの経験から言えるのは、自分を痛めつけることと努力することは全然違う、ということだ。
(中略)
自分を痛めつけていると、努力しているような気になる。しかし、そんな努力からは痛みと傷以外の何も生まれてこない(P182・185)。
かつてはウメハラさんも、そんな間違った努力をしてボロボロになってしまったこともあるという。
これだけがんばっているんだから、と自分に酔いがちだが、間違った努力はダメージしか与えない。
勝ち続けるために必要なのは、「努力し続けられること」。
だから、ウメハラさんは自分の適量を考えることを勧めている。
その基準は
「その努力は10年続けられるものなのか?」
一夜漬けではなく、継続できなければ意味がないのだ。
だから、10年でも続けられそうだと感じられるくらいがちょうどいいそうだ。
ついつい自分に負荷をかけ過ぎて挫折したりダウンしがちな私には、素晴らしいヒントだった。
一部しかご紹介できないのが残念なくらい、金言に満ちています。
ちきりんさんがこの本を読んだあとに
「経団連で講演してほしい」
と書いていたのもうなずけます。
結果を出したい人、結果を出し続けたい人、それから何かを続けたい人にもおすすめ*2です。
私のアクション:続いてないことを、「10年続けられるレベル」まで下げてみる
■レベル:離 凡人ではほぼたどり着けない境地なので。内容はむずかしくないし、誰でも取り入れられることはあります
次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
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*1:私はゲームをしないので、どう自分の生活に置き換えるかは考えないといけませんが
*2:さすが佐々木典士さんが『ぼくたちは習慣で、できている。』で紹介していただけのことはあります