- 作者:野本 響子
- 発売日: 2019/06/17
- メディア: 新書
- 作者:野本響子
- 発売日: 2019/07/19
- メディア: Kindle版
ネットでこの本のことを知り、興味が湧きました。
何しろ、私自身が新卒で入った会社を早々に辞め、職歴ジプシーになって苦労した経験があるから。
「日本に敗者復活戦はないのか!」と口走ったことも。
「…辞めてもいい、辞めても許される国があるの?」
ありましたよ。夢のような国が。
- ポイント1 クラブ活動は続けてはいけない
- ポイント2 学校を変わる?いいんじゃない?
- ポイント3 自分の正直な気持ちを意識するところから始める
◆本の目次◆
はじめに
第1章 私がマレーシアに惹かれたわけ
第2章 辞める練習をする人々
第3章 寛容な社会は居心地がいい
第4章 ゆるい国で身につく「ざっくり動く」力
第5章 みんながグローバルになる必要はない
おわりに
こんな本です
著者の野本響子さんはマレーシア在住の文筆家&編集者。
note.com
子供が小学校に合わなかったことをきっかけに、以前から交流があったマレーシア人の友人家族に誘われ、2012年マレーシアに移住。
マレーシアではどんどん試し、どんどん失敗する経験を積める。自分は何が好きで何が合うのかがわかる。自分で選んで、その責任は自分で引き受ける文化であることに衝撃を受けたそうです。
この本のきっかけは、2018年6月に著者がTwitterに書いた
「多くのひとは『やめる練習』が足りてない」
というツイート。
「はじめに」にその具体的な内容が載っています*1。
ご自身が辞められなくて苦しんだ経験もある著者。
この本は、そんな私の実体験と、子供を二つの国(マレーシアと日本)で育てた経験から、「辞めて」「自分で選択する」人をどう作るかを書いた(P6)
ポイント1 クラブ活動は続けてはいけない
息子さんが在籍したインターナショナルスクールでは、
「毎年同じクラブ活動を続けることは推奨されていない」
そうなのです。
「毎年、違うクラブ活動を少しずつやることにこそ意味がある」
のだとか。
「一つのことに邁進することが素晴らしい」という価値観を持つ日本人には謎です。
これは「興味のあることを敢えてやらせず、新しいことに挑戦させるのが目的」なのだそうです。
息子さんは先生のすすめでいろいろなことに挑戦。
「自分では選ばないものを勧められてやってみたら、楽しかった」
そうです。
全部経験させてみる、その上で本当に自分に合うものを選ばせるのが目的。
ポイント2 学校を変わる?いいんじゃない?
「ハッピーじゃなければ居場所を変わるのが当たり前」のマレーシア。大人も会社や仕事をすぐやめてしまう人が多いのだそうです。
なので、子供もバンバン転校する。
周りに聞いても「学校を変わる?いいんじゃない?」といった反応で、日本とは大違い。
これは一斉に入学しない、新学期の開始時期もいろいろ、落第や飛び級があり、「クラス全員が同い年で同じタイミングで入学する」しくみじゃないのが大きいかもしれません。
学校にもさまざまな種類があり、何を求めるかによって行きたい学校も変わります。
息子さんは最初インターナショナルスクールに入学したものの、後にやりたいことがハッキリしたので試験を受けてホームスクール(=フリースクール)に転校。
著者の「学校に通うのは子供であって私ではないので、自分で決めさせた」という考え方が素敵です。
ポイント3 自分の正直な気持ちを意識するところから始める
日本にいる人、すでに大人になった人はどう「やめる練習」をすればいいのか?
おそらく、この本を手に取った人の多くはそこが知りたいはず。
残念ながら、この本ではあまりくわしく説明されていません。
ヒントになるのは、 著者が自分に向いている仕事を探すため、保険会社勤務時代にやったという「仕事を分解してみる」方法と、「自分の正直な気持ちにフォーカスする」ことでしょうか。
「仕事を分解」は、実は息子さんがさまざまなクラブ活動を通して自分の適性を見つけていった方法と同じ。
ユーチューバーを体験した息子さん、地道な編集作業は苦手だった模様。一緒にやったユーチューバーになりたい友だちは喜々として編集作業に取り組んでいたそうで、「自分には向いていない」と気づいたというのです。
「○○になりたい!」と思っていても、細かく分解していくと、案外苦手な作業も出てくるかもしれません。
逆に、合わないと思っている仕事でも、分解してみると「この部分だけは好き」と思えるところが出てくる可能性も。
それがわかったら、少しでも楽しいと思えることに近寄る、楽しい仕事が増えるようにスライドさせていくといいそうです。
事務作業が好きなのか、人への対応が好きなのか、教えることが好きなのか、作ることが好きなのか、人前に出るのが好きなのか、何かを極めるタイプなのか、いろいろ並行してやりたいタイプなのか、そんな感じで良い。そしてそれがわかったら、今いる場所で、自分に向いたものを強化できないか試してみる(P160)
「自分の正直な気持ち」は、日本ではわからなくなっている人が多い。
なぜなら、「自分で選ぶ」「自分で決める」ことを許されていないから。
…子供のころから親や教師の言うことを全部聞いていると、この判断力が鈍ってくる。
(中略)
「自分で判断してはダメ」と言うメッセージを刷り込まれ続けたら、判断力がなくなっていくのは、ある意味当然だ(P152)
親や周りに合わせて生きてきて、自分の意見がわからなくなっている人が多い。
こういう人たちは、「自分の本当の気持ちを理解するプロセス」が必要だといいます。
面白かったのは「運動会の作文」のエピソード。
日本では「運動会がつまらなかった」と書いたら怒られます。ところが、イギリス式の学校*2では許されたそうです。
その代わり、「どうしてつまらないと思ったのか、相手を説得できるように文章を組み立てる」ことを指導されるとか。
言葉を大事にするということは、自分を大事にすることにつながると思う。毎回「運動会、力を合わせてがんばったので楽しかったです」などと、心にもないものを書いていたりすると、そのうち自分の気持ちがわからなくなってしまう(P164)。
確かに、日本だと学校でも会社でも自分の気持ちは押し殺して、評価されるであろうことを書いてしまいがち。
まずは自分の正直な気持ちを意識することから始めるといい、と著者は書いています。
本音を言える場所を持つことや、文章を書くこともおすすめ。
まとめ 比較文化論みたいで面白く読める本
日本で「やめる練習」を積むにはどうするか、という解説本ではないので注意が必要です。
文化や考え方の違い、今の日本のどこが問題なのか*3といった内容が興味深く、一気に読んでしまいました。
日本が息苦しい、またはお子さんが息苦しそうな人には参考になる貴重な体験談だと思います。
大学で留学したい人にもおすすめです(マレーシアはイギリス連邦加盟国なので、英語のレベルも高い)。
私のアクション:意識して「自分で判断する」練習をする
■レベル:破
次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
book.yasuko659.com