書店で見かけて「これは面白そう!」と思った本。
図書館にはなく(うちの市は文教都市をうたっているのになぜ)、リクエストしてまで入れてもらいました。
――ですが、これは、単なるメモ術ではありませんでした。
「アイデアを整理したい!」という理由で読むには、ちょっとなあ…。
- ポイント1 脳の外にシンプルな記憶装置が必要だ
- ポイント2 理解・記憶のために「自分の言葉」で書く
- ポイント3 番号で管理する
◆本の目次◆
01 「メモのとり方」を知れば、大作が自然に書ける
02 メモはとればとるほど、財産になる
03 必要なのはシンプルに「ペン」と「紙」
04 「メモ」はあなたオリジナルの「思考」を生む魔法のツール
05 メモをとれば、書くことではなく思考に集中できる
06 メモをとるときは、つながりを意識する
07 メモをとれば、オリジナルのテーマと資料が自然に揃う
08 メモがあれば、大作も書ける
09 メモをとることは、「考え」「覚える」教養にもなる
10 読書メモは、自分の言葉で書こう
11 メモをとることは最高に学ぶことでもある
12 メモ同士をつなげれば、次から次へアイデアが発展していく
13 メモをとればアウトプットができる
14 何かをひらめくたびにペンを取ろう
こんな本です
ツェッテルカステン(ドイツ語でツェッテルはカードや紙、カステンは箱の意)というメモ術を紹介した本。
ニクラス・ルーマンという社会学者が編み出した方法で、ルーマンは生涯に58冊の本と数百本の論文を執筆したと言われています。
その源になったのがこのメモ。
著者は、「ツェッテルカステン」をデジタル・アプリで活用している作家・研究者で、この本も実際にツェッテルカステンで書いたそう。
正直言って、この方法は「論文や本を書くためのもの」という印象。
本には
たとえ本や文章にしなくても、メモを取る習慣は確実に自分の知的成長のためになります(P71)
とありますが。
文献管理にも力を入れるシステムなので、私は読書の管理と、このブログの内容をよくするしくみを作る、という目的で読んでみました。
ポイント1 脳の外にシンプルな記憶装置が必要だ
本などを読んで浮かんだアイデアなどを管理するには、決まったフォーマットがあると便利。
安心して脳の外に出しておけるしくみがあれば、脳は考えることに集中できます。
増え続ける情報を記録するためのシステムが必要だ…そうしたシステムがあれば、結びつけ、新しいアイデアを生み出すことができるようになります(P34)
ツェッテルカステンは、詳細情報や参考資料を扱い、不変の情報を管理してくれます。それにより脳は、主旨、深い理解、全体的なイメージに集中し、想像力を発揮するための余裕を持つことができます(P181)
すべてのメモを同じ形式で同じ場所に保存してこそ、あとで組み合わせて並べ替え、新しいものをつくりだせるようになり、また、どこにしまう、どんなラベルをつけるのかといった問いに思考をむだづかいしなくなります(P105)
ポイント2 理解・記憶のために「自分の言葉」で書く
読んだ内容をカードに書き留めておく時、そのまま書き写してはいけない、というのがツェッテルカステンのルール。
何かを本当の意味で理解したいなら、自分の言葉に直さなければなりません。メモのポイントは、自分の言葉で書くこと(P63)
自分の言葉で書き留めるには、読んだことを超えて考える必要もあります。そうしてはじめて、新しいものが生まれます(P88)
メモはもはや思考やアイデアを思い出すきっかけではありません。文章の形で表された、思考やアイデアそのもの(P105)
ただ機械的にメモをするのではなく、自分のものにするために、しっかり理解するために、「自分の言葉」で書くのは重要。
デジタルだとスペースを気にせず書き残せて便利ですが、著者はデジタルの場合でもカード1枚分程度の分量に絞ることをすすめています。
「自分の言葉で、必要な情報にまとめる」ことを重視しているからです。
ポイント3 番号で管理する
あえてジャンル別に分類しないのがツェッテルカステンのポイント。
読んだ印象は
「カードでやるマインドマップ?」
でした。
ツェッテルカステンのすごさは、メモの保存よりも、関連するものが何かわかること、そしてアイデアが混ぜ合わされて洞察が生まれること(P123)
バラバラのカード(情報)を関連づけておくことで、何かが熟成されるのを待つようなところがあります。
保存しながら、ニューロンのつながりで育っていく感じです。
番号の振り方はこんな感じ。本には実例がないのでわかりにくいかもしれません。
【参考】枝番の振り方
既存のメモが「22」なら、それに関連すると思った新しいメモは「23」になる…もし「23」がすでにあれば、「22a」と枝番を振ります。…数字と文字にスラッシュやコンマを併用すれば、思考の連なりをいくつでも枝分かれさせることができます
(中略)
ルーマンの因果律とシステム理論に関するメモでは、「21/3d7a6」に続くものは「21/3a7a7」とアルファベットと数字を交互にした枝番号が振られました。
まとめ
梅棹忠夫 『知的生産の技術 (岩波新書)』の京大式カードによく似たしくみです。
タグで絞り込み、並べ替えたりしてひとつのカード(アイデア)をさまざまな場面で使えるところが便利そう。
続けるうちに上達する。
メモに残すべき大事なところと、補助的なメモ、必要のないところが判断できるようになってくるといいます。
ただし、自分のメモすべてをこれで管理しようとするのは危険。
時間がかかり過ぎて、挫折まっしぐらです。
敬愛するjMatsuzakiさんも書かれています。
jmatsuzaki.com
自分が特に深めたいジャンルを決め、そこから始めるのが賢明かもしれません。
「仕事に必要なアイデアだけを管理したい」など、特につなげて広げる狙いがなければ、瀬田さんの「ひらめきメモ」で充分な気がします。
個人的には「この話、あの本にも書いてあったな」がきちんと脳の外で管理できるといいなあと思いました。
覚えていないので探し回ったり、思い出せなくて気持ち悪かったりするので。
この辺が「全部脳の外にちゃんと保存されている」となれば、安心だし、生産性がぐっと上がりそう。
というわけで、目的によって合う合わないが大きく変わるやり方です。
ピンと来た方は読んでみてください。
【参考】ツェッテルカステンの方法
《用意するもの》
- 紙とペン…走り書きメモに使用
- 文献管理システム(使いやすいアプリ)…文献メモに使う。文献を集める、読書中のメモを集めるのが目的
- ツェッテルカステン(紙またはデジタル)ルーマンはA6カードを使用。アプリならリンクが貼れてタグが付けられればどれでもOK
- エディター(使いやすいもの)…文献管理アプリと相性のいいものがおすすめ
《やりかた》
- 思いついたアイデアを、走り書きメモにする
- 本や何かを読んだ時には「文献メモ」を書く
- その日か翌日(それより後だと忘れてしまいやすい)に、走り書きメモ、文献メモを参照しながら、永久保存メモに書き直す
- すでにあるメモとの関連性を考えながら書くこと
- 番号を振る 入れる位置の番号を記入。間に入れたければアルファベットと数字を交互に入れた枝番を振る。新しい情報ならば、最後に入れる
- メモ同士にリンクを貼る(紙でやる場合は他のメモの番号を書く)
- キーワードを自分で考えてつける(「タグ」に相当)
ある程度の量の「永久保存メモ」が貯まって、はじめて効果を発揮するシステム。
「永久保存メモ」を書いていく時に、今までのメモとの繋がりを考えながら書くのがポイントだそう。
何をメモするかという条件はただひとつで、ツェッテルカステン内の議論に寄与するかどうか(P164)
「永久保存メモ」を書く時は、公表できるレベルにまでブラッシュアップしておくのがコツ。ここまでやっておけば、後はカードを並べ替えて繋がりを整えるだけで論文や本になる。
カードの書き方はこちらのサイトがわかりやすい
※ただし、この方法には文献メモがありません
gigazine.net
私のアクション:本のメモを取る時に、自分の言葉で考えて書く
■レベル:離 本を読んだだけではちょっと実践が難しい
何かを本当の意味で理解したいなら、自分の言葉に直さなければなりません。今のポイントは、自分の言葉で書くこと
— やすこ (@yasuko659) 2022年6月8日
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本の内容も、自分で書き換えた方が理解でき、記憶に残る。自分のためには「自分の言葉」で書こう#読了 #本が好き #日経BP pic.twitter.com/T9q2tNVKVt
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