毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

震災以降、フィギュアスケート界の壮大な物語を読む☆☆☆

家族が借りてきた本。
これも、ソチ五輪に向けて出版されたものの1冊だが、残念ながら回ってきたのは2ヶ月後。
今から読むのは答合わせみたいなものだが、それでも充実した内容で、面白かった。


◆目次◆
プロローグ 震災、東京そしてモスクワ
第1章 高橋大輔現役続行と4回転論争―2011年4月モスクワ
第2章 浅田真央の復活―2011年12月大阪
第3章 新女王コストナー鈴木明子の銅メダル―2012年3月ニース
第4章 日本男子表彰台独占―2012年10月ケント
第5章 美しい軌跡を求めて―2012年12月ソチ
第6章 キムヨナ復活とジャッジの心理―2013年3月ロンドン
第7章 五輪シーズン開幕、町田樹の覚醒―2013年10月デトロイト
第8章 パトリック・チャンの強さの秘密―2013年10月セント・ジョン
第9章 振付師ニコルが高橋と浅田に託したもの―2013年11月東京
第10章 羽生結弦が出した驚異の293点―2013年12月福岡
エピローグ ソチ五輪への道

著者は田村明子さん。フィギュアスケート好きなら、知っている方も多いと思う。Number webでフィギュアスケート、氷上の舞という連載を持たれている。

私もよく読んでいるが、きちんと時系列にまとめられた形で読むのは初めてだったので、とても読みごたえがあった。
バラバラの試合結果だけを見ていてもわからないものが、「前のシーズンの課題をこう克服したのか」とか「あの失敗はこの伏線だったんだ」といった、それぞれの物語として読めるのだ。
そんな個人の物語が、「フィギュアスケート日本」としての大きな流れにつながっている。
とても壮大な物語に立ち会っているような、不思議な感覚だった。


田村さんはNumber webの連載でもわかる通り、誰かに肩入れするということがない。元選手の見方とも違い、とても淡々とした筆致だ。
だから安心して読めるのだが、1冊というボリュームになった時、それがややマイナスに働いたかもしれない。

これだけ壮大な物語なら、普通は主人公がいる。脇役から通りすがりの人まで、役割はだいたい決まっている。読者は主人公または準主役級の誰かに感情移入して読む。

ところが、この本には当然のことながら主人公がいない。登場人物すべてが外国人選手も含めてほとんど同格の扱いなので、どの視線で読めばいいのか、とまどいがある。
現に、借りて来た家族は「読みにくい。全然進まない」とこぼしていたくらいだ。

それでも、内容の深さはフィギュアスケート関連の本の中でトップだと思う。冷静な眼で、長年見続けてきた人にしか書けない本だ。


2013年末の、ソチ五輪出場選手発表の場面でこの本は終わる。
その後の結果はみなさんご存じの通りだ。

でも、来シーズンやその先を見るためにも、知っておいた方がいいことがぎっしり詰まっています。
フィギュアスケートをもっと深く知りたい人、ネットやスポーツ新聞の記事だけではもの足りない人はぜひ読んでみてください。

余談だが、田村さんは翻訳もされているそうで、私がバイブルと思っている『新・ガラクタ捨てれば自分が見える*1の翻訳者だということを、この本で初めて知った。
翻訳もされているから、あまり自分のカラーを前面に出さない文章なのかも。
長年お世話になっていることを知り、ちょっとうれしくなった。
私のアクション:町田選手の成長に注目 

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※この本のメモはありません

*1:私が持っているのは旧版ですが、2013年に新版が出ていたのでこちらをリンクしました。「時間の管理術」「視点を変える」の章が追加されているようです