ココロでわかると必ず人は伸びる 木下 晴弘 総合法令出版 2004-06-25 価格 ¥ 1,575 by G-Tools |
私は結局塾のお世話にならずに学生を終えたので、塾は未知の世界だった。読んでみて驚いた。ここまで面倒を見てくれるのだ、そりゃあみんなが喜んで行くはずだ、と思った。
たとえば冬期合宿。塾生を勉強漬けにする時間割は講師にはもっと負担になるのだそうだ。1週間の合宿中、講師の睡眠時間はわずか1時間半。1年中基本的にほとんど休みはない。土日はもちろん、長期の休みは塾にとっては忙しい時期だからだ。それでも情熱を持って仕事に取り組めるのはすごいと思う。
さらに、受験当日には塾生を学校まで引率して最後のアドバイスをするし、塾生が勉強に集中できないのが家庭内の問題だとすれば、母親を呼び出してカウンセリングのようなことまでしている。それもこれも塾生を合格させるため。著者はそれが自分にとって最大の喜びだったのだそうだ。ここまで打ち込める天職がある人はなかなかいないだろう。読みながらうらやましくなった。
その著者が大事にしているのが「感動」。感動=心でわかること。だから、感動すれば行動できて結果がついてくるのだ。というわけで、著者が紹介しているさまざまなノウハウはすべて、根本に「感動」がある。塾生が授業を熱心に聞いて理解してくれるのも感動があるから。最後の最後、受験の日に実力以上の力を発揮できるのも感動があればこそ。読むと、心を動かすのがいかに大切か改めてよくわかる。
その、著者が惜しみなく公開してくれているノウハウは教える人はもちろんだが、それ以外の人にも役に立つと思う。具体的に人とコミュニケーションする時はずしてはいけないのはどこなのか。どういう話し方をすれば人は興味を持って聞いてくれるのか。クレームに対応する時、どこに気をつければ満足してもらえるのか。逆に、ここぞという時の交渉術までマニュアルではない、心をつかむ本質を教えてくれる。
さらに、著者がご自分の子供とどう関わっているか、どういう風にコミュニケーションをしているかは子育て、特にしつけに悩んでいる人にはとても参考になると思う。
また、クリスマスプレゼントに買ったおもちゃが壊れていた時に、著者が店にかけた電話のあと起きた出来事は読んだすべての人が感動すると思う。やはり、ふだんから感動を心がけている人はこんな風に違うのだな、と感じた。
失敗例も含めて正直に提示してあるのでとても素直に心に入ってくる。全編ほぼ大阪弁なので、それが苦手な人は読みづらいかもしれないが、抵抗のない方はぜひ一度読んでみてほしい本だ。