毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

日々の生活があなたをボケさせる?☆☆☆

脳と気持ちの整理術』『脳が冴える15の習慣』に先だって2005年に書かれた本。先に他の2冊を読んでいて、著者があわせてこの本も読んでください、とあとがきに書かれていたので読んでみた。


3部作の中でもっとも衝撃的で、身につまされる内容だった。何と、“年を取ったからぼけるわけではない”そうだ。現に、著者の「高次脳機能外来」には、20代、30代の患者がボケを心配してやって来ることが多いという。実際の症例に基づくケースが10紹介されているが、ボケてきた(あるいはそう感じてしまった)理由はさまざま。だが、著者は

ボケというほどではないものの、フリーズする脳のレベルにある人たちが、今非常に増えているのではないか。このままいくと、日本の社会全体がボケの世界にまっしぐらに向かってしまうのではないか。(P26)

という危惧がこの本を書くきっかけになったとしている。


本書でのフリーズの定義は、パソコンがいきなり機能停止になる、操作不能に陥るあの状態になぞらえ、
“脳のある機能が思いがけず働かない瞬間”
“当たり前にできなると思っていることが、できない瞬間”
である*1

もちろん、睡眠不足や体調などでフリーズすることは誰にでもある。だが、それが頻繁に起こったり、時間が長くなってきているのなら、脳の使い方に偏りがないかを考えてみる必要がある。


まだ若いのに外来にやってくる患者さんをとりまく環境はさまざまだが、共通点があるという。それは、仕事や生活がパターン化していたり、シンプルで刺激がないことだ。また、インターネットやカーナビなど便利な機器によって脳を使う機会が減っていることも理由のひとつにあるという。

確かに、以前旅先でレンタカーを借りた時に最新のカーナビがついていて、はじめに目的地さえ入れればあとは何も考えなくていいので
「これをずっと使っていたらボケそう」
と冗談で言っていたが、やはりボケるらしい。世の中が便利になると、“基本的に怠け者であり、楽をしたがるようにできている”脳は機能が低下してしまうのだ。


他にも驚いたのは、「雑用をしなくなるとボケる」ということ。若い頃には当たり前のようにやっていた雑用から解放され、出世して秘書がついたり、独立して仕事の種類を絞ったりすると脳はボケるのだそうだ。
著者によれば、ある程度忙しく、同時にいろんなことをやらなければならない環境の方が脳の“基本回転数”が上がるのでいいという。
定年退職後急激にボケてしまう人の話をよく聞くが、それはこういうことだったんだ、と納得した。


このように、自分にとってプラスと思って選択したことが、脳にとってはプラスになっていない場合も多い。どこに気をつければ偏った脳の使い方を修正できるのか、この本にはいろいろなヒントが載っている。

中でも、私がなるほどと思ったのは

  • 部屋の片づけは高次脳機能の訓練になる
  • やらなければいけないことを(脳の訓練として)メモに書き出し、順番にこなす

のふたつ。これは実際に著者が日課にしていることだそうだ。部屋の片づけが苦手でも、「脳トレだ」と思えばやる気が出るかもしれない。

知らないうちに脳がフリーズするような生活になっていないか、点検するために一読をお勧めします。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

ボケの原則(P24)

自分の脳を使っていない、もしくは使い方のバランスが悪いことが原因になる、また、その自分でしなくなっている「何か」を誰かが補ってしまっている場合が多いということです。その「誰か」は人ではなく、パソコン、インターネット、携帯電話、カーナビなどの道具であるのかもしれません。

記憶を引き出しやすくする方法3点(P51)

  • くり返し思い出す
  • ファイル化する
  • 記憶を引き出す時の“手がかり”を増やす

脳機能の低下と加齢は必ずしも関係ない(P57)

ボケに陥っていく時の原因として大きいのは、第一に環境であり、年齢は二次的な要素に過ぎません。何歳になってもそれなりの環境にいる人は聡明だし、逆に脳の使い方を偏らせるような環境にいる人は若くてもボケてしまいます。…年を取ったらみんな一様に脳機能が低下するわけではありません。

ひとつのことをやりすぎるとボケる(P77)

働き盛りの人がボケていく時に多いのは、何もしていないような場合ではなく、何かひとつのことをやりすぎている場合です。…「休みの日に友達と出かけるのが億劫になり、ぼんやりと過ごすことが多くなった」というのも、過労のせいだけでなく、仕事以外の脳の使い方ができなくなりつつあるからではないかと思います。

「部屋の片づけ」は高次脳機能の訓練になる(P101)

私の個人的なことを言えば、習慣で、朝起きるとまず部屋の片づけをします。…そうすることが、高次脳機能を維持するトレーニングになることがわかっているからです。また、同じ理由で、家でも職場でも、雑多な仕事を見つけては、作業の手順を考え、メモに書きとめてから実行するようにしています。こういう習慣を持つのは脳にとってとてもいいことです。

クリエイティブな能力は脳機能の総合力(P152)

クリエイティブな能力というのは、言ってみれば、さまざまな脳機能の総合力です。前頭葉の選択・判断・系列化する力や記憶を引き出してくる力、話す力、聞き取る力……。そういう個々の脳機能が一定以上のレベルに鍛えられ、バランスよく使うことができるようになった時に、初めてクリエイティブな才能を発揮できる、というものだと思います。
(中略)
勘違いして、才能がそれだけで自分の脳の中にあるかのように思い込み、元いた環境を離れてしまうから、お仕事ができなくなっていく。以前には自然と鍛えられていた何らかの脳機能が低下して、その総合力であるクリエイティブな能力も下がってしまう。

雑多なことをしていたからできていた(P154)

「効率的に効率的に」と考えていくと、究極的にはそのことだけをやっていればいいという風になっていきますが、脳はそういうものではありません。
本人がまったく無駄なように思っている日々の雑多な活動の中には、実は本書で解説してきたようなさまざまな脳機能を訓練させる機会が含まれていて、それをなくしてしまったら、より高度な能力も消えてしまうのかもしれない。そう考えてみることが、環境を変える時には必要です。
若い頃には嫌でも雑多な仕事をやらされているわけですが、偉くなってくると「これはもう自分でしなくてもいい」と選べる場面が増えてきます。それで面倒な作業を省いていくと、仕事や生活がどんどんシンプルになっていく。そうした方が効率よく才能を発揮できそうな気がしますが、そうとは限りません。「忙しかったのにできていた」のではなく、本当は「雑多なことをしていたからできていた」のかもしれないのです。

なぜ「仕事は忙しい人に頼め」なのか(P159)

どんなに時間があっても、毎日ぼーっと過ごしている人に急いでやらなければいけない仕事を頼んだら、時間ばかりかかってしまいます。基本回転数が落ちているので、急に忙しくしろと言われても対応できないのです。脳に力を発揮させるには、止まっていてはダメで、環境の中に忙しさがあり、それに合わせて、ある程度忙しく動き続けていなければいけない。

やる気も環境によって作られている(P184)

すべての面で満足のいく環境を整えたら、やる気が湧いてくるのかというと、そうとは限らず、不満足な環境にいて、面白くない刺激を受け続けることがやる気を作っている場合もあります。

感情系に動かされやすい人の特徴(P185)

発想が極端から極体に走りやすいということがあります。快か不快か、好きか嫌いか、面白いか面白くないか。それだけで物事を決めてしまう。これに対して、思考系の力が強い人は中間を考えようとします。ここのところは面白くないが、ここのところは面白い。ここをこうしたらもっと面白くなるんじゃないか。そういう発想が出てきやすいのが、思考系の高い、前頭葉がよく機能している人です。

*1:ここでは疾患や損傷がない、器質的には健康な脳であることが前提です