毎日「ゴキゲン♪」の法則

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「名文」の要素を理系の目で分析してみる☆☆

※『科学者が見つけた「人を惹きつける」文章方程式』を文庫化にあたり改訂したものです
鎌田先生の専門は火山学。バリバリの理系の学者さんだ。なのに、文章が流麗で読ませる。常々それを不思議に思っていたら、こういう本を出されていたのだ。



世の中に文章術の本は山のようにあるが、名文はどういう要素で成り立っているのか、きちんと分析したものは実はないそうだ。結局は“読めばわかる”“雰囲気を味わえ”という抽象論で終わってしまうことに不満を持った著者は、自ら理系の分析手法を使って研究をしたのだそうだ。その成果をまとめたのがこの本。日本の作家を中心に35人*1の文章を取り上げ、その要素を細かく分けてエッセンスを抽出してある。
作家のラインナップが豪華。江國香織塩野七生ら現代の人気作家から、夏目漱石太宰治などの文豪、さらに児童文学や湯川秀樹など文章の専門家以外まで幅広く取り上げてあるので面白い。読書ガイドとしても使えそうだ。


ただ、こんなに細かく分断されると、味わえないのだ。読んだことのない文章の解説はそんなものか、と思ってまだ読めるが、好きな作家の文章だと、味気ないというか、面白くない。
たとえて言うなら、気に入って眺めているお茶碗を、「それは釉薬が○○と××で、土の成分はケイ素が何%…」といきなり組成について語られてしまったような違和感があるのだ。科学的な成り立ちは知らなくても、茶碗の美しさはわかる。自由に感じればいいじゃないの、と思うのは根っから文系だからか。

とはいえ、こういう分析を積み重ねた結果、あれだけの文章が書けるようになるのだとしたら、それはとても有意義だと思う。特に、文章が苦手な人にとっては強い味方になるはず。私は中高通して現代文が一番得意だったので、あまりよさが実感できず☆2つにしてしまった。すみません。
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

読者を元気にさせたい時には、抽象的なメッセージだけ与えてもダメ(P113)

まず、勢いのある具体的なストーリーを展開させる。その中で、ポジティブな主張を小分けにしてはさむのが効果的なのである。パンと具を互い違いに重ねる、クラブハウスサンドの感じだ。
これが、児童文学の教えてくれる、元気の出る文章作法である。

名文は何を書いていても読者を引きずり込む(P240)

悲しい思いにさせたい時、読者が悲しくなれば名文である。青春の輝きを伝えたい時、甘くも切ない過去の日々がよみがえれば、目的は達成されるのだ。
(中略)
恋の世界でも知的な世界でも、作者はあらゆる言葉を駆使して、読者を目的の世界へ誘導してゆく。まるで、作者に忠実な「言葉」という牧羊犬が、読者という羊を柵の中に追い込んでいくかのようである。うぶな女性を千両役者が虜にしてゆく、といってもよい。

名文は知らず知らずに読者を「その気にさせる」文章である(P241)

その時には、話が論理的でなくてもまったくかまわない。

*1:「35人目」は鎌田先生ご自身の文章を分析してあります。これは、今までの検証の結果を示すため