毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

ミラーニューロンにひそむ可能性☆☆

文庫版も出ています

ミラーニューロン脳科学から心理学まで、広く取り上げられているので、聞いたことがある方も多いだろう。
私はごく一般的な知識しかなく、「ものまね細胞」「サルまね細胞」といわれるミラーニューロンがどんなものなのか知りたくてこの本を読んでみた。なかなか手ごわい本だったが、ミラーニューロン研究が社会のさまざまな面に役に立つことや、たくさんの分野に応用できる可能性のあることがわかり、とてもワクワクした。

ミラーニューロンとは何なのか。訳者あとがきによれば、

“自分がある行動をしているときに活性化するニューロンでありながら、その行動を他者がしているのを見ているときにも同じように活性化するニューロン

だそうだ。他者の行動を自分の脳内で鏡のように映し出す、という意味でミラーニューロンと呼ばれている。


著者はこのミラーニューロン研究の第一人者であり、その発見者であるパルマ大学ジャコモ・リゾラッティとの共同研究も行っている。このテーマを語るのにふさわしい人物だ。
ただ、科学者らしくさまざまなことが詳細に書かれている。これまでの経緯や歴史的背景から具体的な実験の方法まで。当然必要な情報なのだろうが、あまりに細かくて途中で本を壁に投げつけたくなることも何度かあった。
だが、読み進めるうちにミラーニューロンのもつ意味や可能性が明らかになってくる。

私が読んで「それはすごい!」と思ったことには

  • 子供は言語より先に身ぶりを習得する。つまり、教える時に教師が「ミラーニューロンを活性化させる動き」を意識することで、理解度を上げられる
  • 相手の表情をまねすることで、相手の感情を理解できる。感情よりも表情をまねる方が先→「楽しいから笑うのではなく、笑えば楽しくなる」という成功法則本によくある説を裏付けている
  • 病気や障害で顔の筋肉を動かせない、表情を自由に作れない人は、他人との関係を結ぶのがむずかしい→病気でなくても、表情が硬い人は人間関係に苦労する?
  • 他人の動きから他人の意図を察することができるのもミラーニューロンの働き。人はごく自然に、意識せずにこのプロセスができる
  • 自閉症児はミラーニューロンの発達の問題と相関関係がある(感情的なつながりの欠如が見られる)→ミラーニューロンを活性化させる方法が見つかれば、自閉症の治療ができるかも?
  • 「模倣は私たちを変えることができる」ことを明らかにした実験:2つのグループに分け、一方には大学教授について思いついたことを書くように指示され、もう一方にはフーリガン(乱暴で破壊的なサッカーファン)について同様の指示を受けた。この後一般知識問題を答えさせたところ、大学教授について考えていた被験者のグループが、フーリガンについて考えたグループよりも高い成績だった(ただ一般知識問題に解答した比較群よりも高かった)
  • 暴力的なゲームや映像を見ると、模倣した行為が増えることもミラーニューロンが関係している

などなど、世の中のさまざまなことがミラーニューロンで説明できたり、大きく言えば社会を変えることも可能だということがわかる。

他にも、広告やブランドが商品選択にどのように影響しているかを調べるニューロマーケティングなど新しい取り組みも紹介されていて興味深い。研究のための研究ではなく、よりよい社会を作るために役立てたい、という著者の気持ちが全編を通して伝わってくる。


知的好奇心を満たす本。問題は、本が分厚くて文字がぎっしり詰まっていることだろうか。これを新書というのは無理があると思う。一般的な新書の2冊分はありそうだ。
翻訳本にしては読みやすいし、ユーモアのある表現も多いので、我こそはと思う方はぜひチャレンジしてください。
(今回は読書メモはありません)