読んでみて、これなら選手はのびのびと野球ができて楽しいだろうな、と思った。
権藤さんは「権藤、権藤、雨、権藤」のキャッチフレーズ(?)で知られる、連投させられたために選手生命が短かった人だ。当時はローテーションも、肩は消耗品という考え方もなかったためそれが当たり前だったそうだが*1、ご自分の辛い経験を踏まえ、ピッチャーを酷使しないことを貫かれてきた。
他にも、長時間の全体ミーティングはしないとか、「管理野球」とは正反対の独自のスタイルを持っていることで有名だ。
この本を読んでみて、選手ひとりひとりのことを考えて接しているのだということがよくわかった。
人前で叱らない、2軍に落とす時はコーチではなく必ず自分が理由を説明する、責任は自分が取るから思い切ってやって来い、と送り出すなど、これは理想の上司だろう。
今のスタイルは、コーチとしてたくさんの監督に仕え、当時「これだけはやるまい」と思ってきた“べからず集”が元になっているという。
仰木彬さんが率いる近鉄バファローズでも投手コーチを務めていたが、仰木さんとは合わず、3年契約の1年残して退任していたことはこの本で初めて知った。藤井寺球場のベンチでお二人が並んでいる姿が好きだった*2ので、少し残念。
もちろん野球の話、それも監督をされていたベイスターズ時代のことが中心だが、ある程度野球の知識があれば中間管理職の人が読んでも役に立つ本だと思う。
また、スポーツならではの勝負の流れを引き寄せるコツなども貴重だ。
私のアクション:「格好よくやる」ことを意識する
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
「思い切っても80%」(P76)
実際には思いっ切りやっているが、精神的には80%の余裕でやるということである。何より20%の余裕があることでまわりもよく見え、いろんなことを考えられるようになる。この余裕が勝負にはとても大切になってくる。
悪い偶然は誰にも防げない(P141)
だから悪い偶然を防ぐのではなく、その悪い偶然によって広がった傷口を最小限に抑えることに心血を注いだ方がいいのだ。悪い偶然に巡り合ったらそこで気持ちを切り替えて次に挑まなければならないのだ。
スランプの期間を短くすることは可能(P150)
プロ野球界では一流と呼ばれる選手ほど、スランプの期間を短くするのが上手い。スランプを短くするのはある意味では“開き直り”であり、ある意味では“自信”、そして“陰の努力”。いずれにしても一流選手に共通しているのは、自己管理がとても上手いということだ。
「格好よくやりなさい」(P159)
と常に言い続けていた。プロ野球選手なのだから、どんな時も常に格好よく。それが私から選手たちへの激励の言葉でもあった。
(中略)
心が崩れかけている選手がいれば、「格好よくやりなさい」と私は常に声をかけ続けた。これは「気持ちを切らずに、我慢してやるんだよ」ということの裏返しでもあるのだ。
(中略)
要するに、「格好よくやれ」とは、最後まで戦う気持ちを切らせないということなのだ。たとえ体がバテていたとしても、戦う気持ちがあれば戦い続けることができる。自らのポテンシャルを最大限発揮するのは、何よりも心の持ちようが大切なのである。