毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

語学習得の古典的名著☆☆☆☆

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)
千野 栄一
岩波書店 (岩波新書 黄版 329)(1986/1/20)
¥ 756
以前、せっせと登録した『ぼくらの頭脳の鍛え方』で、佐藤優さんが選んでいた1冊。
佐藤さんは外務省時代に仕事柄複数の語学を身につけられていたので、そういう人の選ぶ本ならさぞ実践的に役に立つだろうと思って読んでみた。
期待を裏切らない、いい本だった。


◆目次◆
1 はじめに―外国語習得にはコツがある
2 目的と目標―なぜ学ぶのか、ゴールはどこか
3 必要なもの―“語学の神様”はこう語った
4 語彙―覚えるべき千の単語とは
5 文法―“愛される文法の”のために
6 学習書―よい本の条件はこれだ
7 教師―こんな先生に教わりたい
8 辞書―自分に合った学習辞典を
9 発音―こればかりは始めが肝心
10 会話―あやまちは人の常、と覚悟して
11 レアリア―歴史・文化を知らないと…
12 まとめ―言語を知れば、人間は大きくなる
あとがき

著者の専攻は言語学で、専門は「チェコ語」だそうだ。チェコ語と言われてもピンと来ないが、カレル・チャペックの作品はチェコ語で書かれていると聞いて、少し親しみが湧いた。
当然のことながら複数の言語を操る人なのに、ご本人曰く「語学が苦手」なのだそうだ。語学の専門書を何冊も書かれているのにまさか、と思うが、実は“ものごとは習得に苦労した人から学んだ方がいい”という説もある。その意味では、まさに適任と言える。


目次を見ればわかるように、広く語学習得のための方法のポイントを押さえてある。稀少言語も含め、さまざまな言語について言及されているが、基本的に英語習得法として読める。世の中にはその言語と日本語の辞書(いわゆる○和辞典)のない言語も多いそうで、そのために英語かロシア語が必要になるのだという*1。そういうエピソードは随所にあるが、稀少言語に特に興味がなくても充分役に立つ内容だ。


さすがに苦労しながら複数の言語を身につけられただけあって、非常にシンプルな正攻法がまとめられている。
目的と目標をはっきりさせる、語彙数のゴールを何語にするかをあらかじめ決める、基礎的文法は割り切って先に身につけてしまうなど、とても具体的に取り組みやすい内容だ。

特に、語彙の章が最もインパクトがあった。
まず、やみくもに千語覚える*2。辞書を引くのは千語覚えてからでよい。ひたすら書いて、理屈なしに覚えてしまう。

そのエネルギーとしては、どうしてもその言語をモノにしたいという衝動力を使い、そのエネルギーの燃えつきる前に千語を突破することである。従って、この千語習得の時間は短くなければならず、そこで十分に時間のとれるときに新しい言語を学び始めるよう計画をセットする必要がある(P53)。

千語を千五百にするには最初の千語の半分以下のエネルギーで足り、千五百語覚えてしまえば、もう失速しないそうだ。ただし、確実に覚えることが必要。


1986年出版の本だが、内容は今でも充分実用性がある*3
辞書の選び方、テキストの選び方なども参考になるので、これから新しい語を身につけたいと考えている人には何語であれ、役に立つ1冊だと思う。
一度挫折すると、その語学を身につけるのは最初より辛くなるそうなので、挫折する前にぜひ読んでみてください。
私のアクション:千語覚えてしまう

関連記事
読書日記:『ぼくらの頭脳の鍛え方』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

まず、やみくもに千の単語を覚える(P54)

単語の習得にいくつかの関門をもうけ、その一つ一つの関門をゴールと見たてて、そこを突破したときお祝いを盛大にすることが必要である。

著者がプラハで学んだ授業の方法(P115)

先生は各人に小さなノートを用意させ、それを単語帳にする。毎時間の最初に、その時間で扱う文法事項の手短な説明があり、ごく少数の語彙が与えられてから授業が始まる。
授業の圧倒的大部分の時間は、母語から外国語への翻訳にあてられる。まず語彙を覚えるための易しい短文が繰り返し当てられ、新出の語彙が覚えられたのが確認されると、その日の文法事項がその作文の中に組み込まれてくる。
学生が単語でつっかえると、すぐ小さなノートにその単語を書き加えることを要求し、さらに、その語が入ったいくつかの文を訳させる。そのノートの単語は学期が深まるにつれて1人ひとりで違ってくるので、やがて学生を当てる時1人ひとりからノートを提出させ、それを見ながら作文が要求される。

ある語学を始めたばかりの時、大きな辞書を買っても役に立たない(P136)

学習辞典を使っていてそこに出ていない語にぶつかったら、学習辞典をうらみがましくにらむ前に、この学習辞典に出ていないのだから、この単語は当分覚えなくていいと思うべきである。

passiveかactiveか(P162)

外国語を学ぶ場合、その外国語の知識がactiveであるかpassiveであるかの区別は大切である。前者ではその外国語で書いたり、話したりする能力のあることを示し、後者では話されたことがどうにか理解でき、書かれたことが理解できることを意味する。
この区別は外国では特に重要視され、たとえどんなによく辞書の助けで外国語の本が読めても、話ができないと「おお、passive!」ということになる。外国語で会話をするということは外国語の積極的な知識の獲得への第一歩であり、ひとつの目的地点なのである。

繰り返しは忘却の特効薬(P199)

1.規則正しく繰り返すこと
2.できれば毎日学習すること
すべての著者が例外なしに勧めている方法。

*1:○英、または○露辞典なら手に入ることが多いのだそうです

*2:どの語を覚えるか、選択方法は別に記述があります

*3:古さを感じるのは音声教材としてカセットテープの話が出てくる程度