毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

「負け」から見る人生論☆☆☆☆

負けを生かす技術
為末 大
朝日新聞出版(2013/04/19)
¥ 1,575

元400メートルハードル選手、為末大さんの本。家族が借りて来たので喜々として読んだ。
この本も深い言葉が多く、読みながらいろいろ考えてしまった。


◆目次◆
はじめに 負けや失敗は、恐れるべきものなのか
第1章  「負け」を恐れるな
第2章  「勝利条件」を設定せよ
第3章  「強い自分」を作る
第4章  「勝つヒント」を知る
第5章   自分を生かす「選択」
第6章  「日常」を整える
第7章  「お金」に人生を賭けるな
第8章   小さな「幸せ」をこそ求めよ
おわりに 人って何だろう、と考えるということ

アスリートはごく一握りの人を除いて、「負ける」経験の方が多い。オリンピックに出られても、金メダルを取れるのは(個人戦なら)たったひとりだ。
いかに「負ける」機会が多いかわかると思う。

 

「負けないため」にどうするか、ではなく、「どう負けるか」という考え方は新鮮だ。人生でも「負けないこと」はほぼ不可能だから、そう考えられた方が強いと思う。

負けや失敗は、実はそれほど怖いものではない。多くの人に、そのことに気づいてほしい。それだけで、もっと肩の力を抜いて生きられる気がする。そしてそれは結果的に、多くの人に、勝ちや成功をもたらすことになると僕は思っている(P4)

為末さんも幾多の負けを経験し、そこからたくさん学ばれたのだと思う。こういうアスリートの体験を、一般の私たちも本を通して知ることができるのは素晴らしい。

だからこそ、自分自身の勝ちを自分でしっかりマネジメントすることが求められている。まずは、自分で目指すべき大きな目的、ビッグピクチャーを描くこと、未来の仮説を持ちつつ、必要な能力を高めていくことが求められている。
そして同時に、マインドセットが必要だ。ミスなく失敗なく過ごすことは、これからは極めて難しくなる。むしろ必要なのは、思い切って失敗して強くなること。ミスや失敗を成功につなげていくことである。変化が大きいときには、小さな負けにこだわってチャレンジを恐れることが、決定的な人生の負けを招くように思えてならない(P234)

私たちは、試合を見ていてもすべてで勝つのが当たり前と思っている。
だが、実はアスリートは考えて勝ったり負けたりしているのだ。ピーキング(どこにピークを持ってくるか)も大切だという。オリンピックの出場権を得るための試合が最重要と設定したなら、そこから逆算してピーキングの調整をする。
そう考えれば、「負けることがベスト」とは言わなくても、「何が何でも勝つ」必要のない試合も出てくる。課題の克服など、別のテーマが最重要の試合もある。

そう考えれば、人生だって「百戦百勝」を狙う必要はないのかもしれない。為末さんの考え方は、新しい視点に気付かせてくれる。

 

後半は、「アスリートとしての体験を人生にどう生かしてきたか」をもとにした、為末さんなりの人生論になっている。
頭でっかちではなく、「体から出た言葉」だからかとても素直に受け止められた。

付せんだらけにしてしまったが、下のメモはごく一部。メモを見てピンと来た人はぜひ読んでみてください。
私のアクション:負けることに慣れる
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

むしろ人生では、負けや失敗を避けようとするばかりに、逆に失ってしまうものがあるということにも気づいておく必要がある(P3)

本当の失敗や敗北とは、転倒したという結果ではない。転倒したまま起きあがらないこと(P21)

むしろ失敗を肯定し、失敗して良かったと思えることをひとつでも見つけるようにすることが大事だ。それができるかどうかが人生を分ける(P22)

ほとんどの物事は、揺れていて安定しないもの(P27)

無理に安定させようとし過ぎることが、むしろパフォーマンスを低下させてしまうこともあるのである。精神が揺れてしまったことに動揺することの方が、よほどダメージは大きい。

負ける時は、負けていいのである(P27)

負けも起こり得ると認めることが重要なのである。

勝てない時には勝てない(P28)

なのに、常に自分を律して、毎回同じコンディションにして、弱い自分を許さない、などというのは大きな勘違いだ。

狙っていくのではなく、結果としてそうだった、という生き方こそ目指すべき(P32)

狙いははっきりと定める必要なんてない。何となくあのあたり、くらいに定めて動いていく。

だからこそ重要なのは、「仮設定」をするということだと思う。常に仮設定と思えばいいのである(P34)

ピンチに直面するほど有効なトレーニングはない(P41)

ピンチに直面すると、いろいろなものが大きく変化する。それが、成長を加速させるのである。
(中略)
ピンチや危機には真正面から向き合い、その結果を消化しようとしておくことだ。すっきりきれいになることはないが、向き合う状態に耐えきれる力はつくようになる。

「勝利条件」=何が勝ちなのか自分で決める(P47)

社会に出てみれば、何が勝ちなのかは、極めて複雑だ。
それを仮決めの状態でもいいから、自分で設定し続けることが大事だと思っている。

実はみんな、自分のバイオリズムに合わせている(P53)

そしてバイオリズムは、意志の力でねじ曲げられるようなものではない。

もっとふてぶてしくあれ(P54)

いろいろな意見がある。いろいろな考え方がある。それは参考にはしても、最後にはこれは僕の人生だからこれで行く、というスタンスが重要になるのだ。
もともと人と自分は違うのだ、という大前提を理解しておく必要がある。それがよくよくわかってくると、ふてぶてしくなれる。

人からの“もらいものの考え”は、どこかで実は信じていない(P55)

それでは、実はがんばれない。一生懸命になれないのである。

一番価値があるのは、その夢中でいられる時間(P64)

だからこそ、勝負に勝ったかどうかとか、勝つことができたということよりも、勝とうとしていた時が報酬だった…。

引退とは損切りである(P66)

ダメなものはダメ、でもがんばればうまくいくかもしれない。その折り合いを、納得感を持って決める。いずれにしても大切なのは結果だけで報酬を得ようとし過ぎないこと。

必要なことは「それを通じて何をしたいのか」(P68)

職業は、それ自体、目的ではない。ツールなのだから。手段は違っても、実は同じことができる。

自分が何に生まれついて、どこに向かっているのかを、憧れや願望だけでなく、ちゃんとストーリーとして眺めてみる(P69)

素直に自分の心と向き合ってみること。そして自分の文脈やストーリーを感じてみる。その延長線上にあるものが、もしかすると憧れとは反対の方向にあるものだったとしても、そこに向かうのが正しいことだと認めることが大切になる。

走り出したら、耳をふさげ(P83)

この方向に行く、という大きなコンセプトを作るまでは、いろんな情報に触れていい。
(中略)
だが、一度、こうだと思うコンセプトを作ったら、今度は一気に情報を遮断して、このコンセプトで行ききる、という覚悟が必要だ。(中略)
皮膚感覚で言えば、(オリンピックの)3ヶ月から半年くらい前からは、「聞かない」という状況を作っていた。聞くタイミングと聞かないタイミングを、しっかり定めていたのだ。

失敗をたくさんし、相手をがっかりさせ、それでもその後に立ち上がる。そんな失敗の持つ本質的にポジティブな面が、プロセスとして自分の中に組み込まれていくと、そうしたプレッシャーはずいぶん違うものになる(P106)

シリアスになり過ぎない。かっこつけ過ぎない。いい人でい過ぎないことが大切(P110)

逆にスランプにはまらないということは、変化していないということである(P116)

「10億円、現金で貯めると決めたら、あなたはがんばれるよ」(P151)

※引退後、ある経営者から言われた言葉
数字に意味はないという。もっと言うと、意味なんて、なくていいのだと。具体的な数値を設定するのは、それがわかりやすいからだ。数字があることによって、がんばりに向かうことができる。そのためだけの数字があっていい、というのである。

数字の設定こそが生きるセンス(P151)

どのくらいに設定すると、自分は行けそうか、どのくらいまで行けそうか。どの設定なら、自分が一番モチベーションが湧きそうか。その距離感を測るセンスこそが重要なのだ。

数字と期日を決める(P152)

例)英語がうまくなりたい→具体的に「通訳になりたい」
どのレベルの通訳?→世界的な通訳/同時通訳/ビジネス通訳
ランクを決める=数字に落とし込む
ランクを決めたら、いつまでに達成するか=期日を決める

成功と失敗を分けるのは、具体的な現実の姿をきちんと見たかどうか(P155)

トップのアスリートは、…そのあたりを極めてドライに見ている。ダメなものはダメだとスパスパと切っていける人なのだ。

自分をクリアにすることで直観が磨かれる(P161)

何が自分にとってプラスなのか。何がマイナスなのか。プラスの中でもプライオリティはついているか。何を一番大事にしたいのか。
こうして自分をクリアにしていくことが、カンを「ピンと来させる」ことにつながると僕は思ってる。そしてこの時の直観は、意外に論理的なものになっていく気がする。

あまりに原因を気にしすぎるとうまくいかない(P162)

毎回、潔癖に必ず原因がどこかにあるはずだと探ろうとすると、どうしても窮屈になる。
もとより理由がない勝ち、理由がない負けというのもあるのだ。その理由のない勝ち負けに左右されてしまうと、すべてに手を出してマネジメントしようとしておかしくなることがある。競争でも練習でも、ある程度の手放し感が必要。

スランプのシグナルは「考え始める」(P165)

考えなくてもいいようなことを考えたり、無意識にできていたことが意識的にでないとできなくなったり。

スランプに入った時は、よくしようとはするが、必ずよくしなければいけないと思わない(P166)

多少スランプを抜けようとはするものの、無理はしない。一応ベストは尽くすけれど、半分くらいは待ったり、やり過ごしたりする。何とかしようと思い過ぎないようにしていた。

モチベーションはわがままな子供のようなもの(P168)

誰かを意図的に好きになろうとしても難しく、好きになってしまうものでしかないのと同じで、モチベーションとはコントロールが利かないもの。

モチベーションを維持するコツは「割に合う」ようにしておく(P168)

割に合わない状態を続けるのは苦しいから。
例)本当は自分が表舞台に出たいのに出られない場合、自分で自分のエゴをマネジメントしていくしかない。
何かで自分が認められる場所を作る。褒められるような仕組みを作る。吐き出し口を作ってうまく吐き出せるようにする。

潔癖にモチベーションだけを高く保とうとするのは危険(P170)

割に合うようにしておくこと。発散先をきちんと作っておく。どこかに許しの場所をとって、がんばりとバランスさせておく。

魅力的なスピーチは「私は」で始まる(P172)

自分はこうしたい、こんな苦しみを味わった、ということをまず最初に白状する。その白状がないと、人の胸を打つ話をするのは難しいのかもしれない。
ダメなスピーチは多くの場合「我々は」「私たちは」で始まる気がする。自分の思いがあふれるような話が最初に来ないと、聞いている側は胸を打たれない。

結局、人はどこまで行っても日常しかないのだ(P210)

実は祭りにすら、慣れてしまうのだ。だから、成功や勝ちをゴールにしてはいけない。そこに幸せを置いてはいけない。