この本も、ソチ五輪に合わせて出版されたもの。図書館に予約していたが、残念ながら終了後に回ってきた。
だが、フィギュアスケートファンなら文句なく楽しめる、ある意味貴重な本だった。
◆目次◆
まえがき スポーツディレクター・中野友加里のご挨拶
1 村上佳菜子VS中野友加里 憧れのお姉ちゃんと本音トーク
2 織田信成VS中野友加里 二児の父、旧友に「結婚のススメ」
3 鈴木明子VS中野友加里 「17年間のライバル」大いに語り合う
4 無良崇人VS中野友加里 イクメン新米パパ さらなる開花へ
5 羽生結弦VS中野友加里 新時代のエースとジャンプ談義
6 小塚崇彦VS中野友加里 同門ふたり五輪への道を語る
7 浅田真央VS中野友加里 大人のトーク――恋愛から将来の夢まで
8 安藤美姫VS中野友加里 帰ってきた世界女王 知られざる葛藤
9 高橋大輔VS中野友加里 最年長エース 生涯現役宣言?
あとがき 選手たちへ、ただひとつの願い
著者は中野友加里さん。と言われて思い出す方も多いだろう。ドーナツスピンが印象的な元選手だ。オリンピック代表に選ばれることなく引退し、フジテレビに入社したことは知っていたが、映画制作を経て現在はスポーツディレクターとして「すぽると」などで活躍中なのだそうだ。
その中野さんが元選手、現在はスポーツを報道する側の人として9人の選手と対談したものをまとめたのがこの本。これが文句なく面白い。
何しろ、一般的なインタビューでは見られない、それぞれの個性がよくわかるのだ。よくある紋切り型の「明日はノーミスで」「自分のできることを精一杯やりたい」的な受け答えではわからないキャラクターが生き生きと感じられる。
みなさん演技や見た目のイメージを清々しいくらい裏切ってくれる。羽生選手以外は、全員何かしら現役時代の中野さんと関わりがあったそうで、昔話にも花が咲く。
中野さんの容赦ないツッコミも痛快だ。中でも、ジャンプを飛びすぎて失敗する癖を持つ織田選手(当時)との会話は他の人には絶対にできないと思う。
女子選手は全員名古屋出身で、小さい頃からお互いをよく知っているのでとにかく話が濃い。
ただ、残念なのはソチに出た町田樹選手が漏れていること。この本の企画はかなり前から立てられていたそうなので、それだけ町田選手が急成長したということなのだろう。
オリンピックが終わって読めば、うーん、というところもいくつかある。
小塚選手の妙に余裕こいている(失礼)発言が引っかかる。
(オリンピック代表が男子3枠、という話で)
友加里 ソチも代表切符3つだけで、候補はもっといっぱいいるわけじゃない?
崇彦 でも、3つあるからね。
友加里 さすが!そこまで強気な選手に、初めて会ったよ!
崇彦 3つ「も」あるんだよ?(P161)
でも、無良選手の見解の方がたぶん正しかったんだと思う。
崇人 これは僕の見方ですけれど……高橋(大輔)、羽生(結弦)の2選手は、もう地位を確立してる感じがするんですよ。だから残りの3枚目の切符を、4人で順位を入れ替わりながら争わなきゃいけない!もちろん1位と2位に、僕らがどれだけ近づけるかも課題だけれど、3番手の座ひとつに、みんなが集中して攻めて来るだろうから、めっちゃしんどい……(以下略)。
友加里 残り1枠を争うまっただ中にいる……その気持ち、私にはよくわかるよ(笑)。(P112)
無良選手は3番手を「4人」で争う、とちゃんと町田選手も数えている。
普通ならポジティブシンキングができている方が有利な気がするが、小塚選手はこのあと*1絶不調でGPシリーズを過ごし、結果的にオリンピック代表の座を逃してしまった。
まあ、小塚選手は高橋選手の代わりに世界選手権に出場が決まったそうなので、ぜひがんばって納得いく演技をしてほしい。
高橋大輔 膝の故障で世界選手権欠場「悩みましたが…」――スポニチアネックス
高橋選手と浅田選手の今後についても、他のインタビューとは違う本音が聞けるので、それだけでも読む価値があると思う。
また、羽生選手はアクセルジャンプをどう跳ぶのかと尋ねられて
「アクセルはしゅっ!ってやれば、しゅっ!って跳べるんですよ。」(P137)
という名言を残していて、天才肌の一面をのぞかせている。
できればこの本、全日本選手権の時に読みたかった。でも、世界選手権にはまだ間に合います。
先日読んだ荒川静香さんの『知って感じるフィギュアスケート観戦術』が公式ガイドで、この本が裏ガイドのようなもの。フィギュアスケートファンは、ぜひ合わせて読んでください。試合がもっと楽しく見られます。
私のアクション:世界選手権・羽生選手のアクセルジャンプに注目
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※この本のメモはありません
*1:インタビューはシーズン前の昨年7月