司会の伊集院さんが前のめりになるほど*1面白かったので、自分でも読んでみたくなり、借りたのがこの本。
実はこの本、岡倉天心が英語で書いたもの。もともと、アメリカで出版されたものなので、日本語で読むのは他者の手を介した“翻訳”になる。
天心が書いた英語も見てみたかったので、対訳本を図書館で借りた。
読むのにかなり骨の折れる内容だった。
◆目次◆ ※英語の目次もあります
序文 千宗室
茶の本
第1章 人間性の茶碗
第2章 茶の流派
第3章 道家と禅
第4章 茶室
第5章 芸術の鑑賞
第6章 花
第7章 茶の宗匠
跋文 千宗室
訳注
番組で使われていたのは、ゲスト講師だった大久保喬樹さん(東京女子大学教授)の訳した『新訳 茶の本(角川ソフィア文庫)』。
浅野晃訳は名訳と謳われたそうだが、最近あまり見ないような日本語なのでやや難解。読み終わってから調べてみたら、すでに絶版になっている1956年に出た本が浅野訳のようだ。1956年!そりゃあ、わかりませんって*2。
もちろん、こういう文章もじっくり読めば楽しいし、せっかく原文も横にあるのだから、並べて読めば理解も深まるはずだが、2週間で返却、という短期間で読むには限界があった。
ただ、この本は第15代・千宗室さん*3が序文・跋文*4を書かれていて、それを読むだけでも価値がある。
序文に、天心がこの本を書いた背景について詳細な解説がある。
天心の父は横浜で手広く商売をしていた関係で、幼少から英語を学んでいたそうだ。
また、中国の古典にも知識が深く、若い頃から日本の芸術や建築に興味があった。
これらの素養があって初めて書けた本なのだ。
茶道の専門家ではなかったことで、流派などの枠を越えた公平な見方ができた、とも序文には書いてある。
単なる「茶の湯文化を紹介する本」ではないのだ。
茶道は中国から渡ってきた文化がベースになっていること。
そのルーツは仏教であり、道家や禅の影響を大きく受けていること。
西洋は「対称」をよいものとし、東洋は「非対称」に美を見出す、などの価値観の違いについて。
花の生け方やわび・さびなど、日本人はどこに美を感じるのか。
――など、深い文化論になっている。
よく、海外で日本人のアイデンティティを求められ、それに答えられなくて困った、という人が
「お茶やお花を習っておけばよかった!」
と口にするが、それにはちゃんと意味があったのだ、と思った。
お茶は日本の文化が凝縮されたものなのだ。
私は高校で茶道部だったので、一般の人より少しは茶道について理解できると思うが、こんなに深いものだったのか、と驚いた。特に、去年くらいから興味を持っている禅とこんなに関わりがあるものとは知らなかった。
私の英語力なのであまり大したことは言えないが、確かに天心の英文はネイティブが書いたのかと思うくらい、自然に感じた。
英語力をつけるのに、対訳本を使うというのはよく知られた学習法だが、この内容に興味があれば、この本を使うのもありだと思う。
でも、やっぱり日本語訳は大久保先生の『新訳 茶の本(角川ソフィア文庫)』をおすすめします。
茶道や禅など、日本の文化に興味がある人、触れてみたい人はぜひどうぞ。
私のアクション:『新訳 茶の本』も読む
※この本のメモはありません