- 作者: 吉越浩一郎
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2007/12/15
- メディア: 新書
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トリンプというのはすごい会社で口先のNO残業ではなく、終業30分後の18時半には強制的に消灯されてしまう。申請すれば残業できないこともないが、それはペナルティとして所属部署全員のボーナスが減額されるのだそうだ。
さらに、私がうらやましかったのは「がんばるタイム」という電話・会話禁止の時間があること。昼食後の2時間はひとりで黙々と仕事をしなければならない。しかも、かかってくる電話も取らないそうだ。そんなことでビジネスが成り立つのか、と思ったが取引先には理解してもらったのだそうだ。会社員時代、いつもいつもかかる電話を取るたびに手を止められ、仕事の効率がちっとも上がらないので心底トリンプがうらやましかった。
ただ、その社風に中途入社した人がついて行けず辞めてしまうこともしばしばあったのだそうだ。そのくらい集中して仕事をする環境だったのだろう。
なぜ著者がそんな斬新な社風を築くことができたのか。それは外資系企業で働いた経験と奥さんがフランス人であることが大きい。終業後も何時間もいるという習慣は欧米にはないらしく、奥さんはなぜそんなに遅くまで帰って来ないのか理解できない。それで家庭内がうまく行かない時に香港に事務所ができるというので志願して赴任したそうだ。最初の会社と香港での経験が「残業などしなくても効率よく働けば結果は出せる」という信念になっている。
そのためにやることはシンプルだ。
デッドライン仕事術 2つのポイント
- 毎日、「お尻の時間を決めて仕事をする」(ダラダラ残業禁止)
- すべての仕事に「締切日」を入れる
たったこれだけ?なのだが、これをきちんと守れば必ず結果が出せる。そのために工夫するからだ。そして、時間を無駄にしないためには迷わないのがポイント。時間をかければいい決断ができるとは限らない。むしろ著者の考えでは逆のようだ。川があったらとにかく飛び込んでしまうそうだ。飛び込んでこれは泳げない、となったら引き返すこともできる。飛び込んで状況がわかれば、方針を変えることもできる。決断に時間をかけるのは一見慎重なようだが、その真意は「決めてしまう恐怖」から来ているという。
この本の後半はリーダーシップや経営者としての話が主だが、全体を通して貫かれているのは即断即決の重要性だ。著者が他者から抜きんでたのはここによるところが大きいと思った。
また、ワークライフバランスについての話もなるほど、と思った。日本人はワークはライフの一部と考えているが、ライフは私生活と訳すべきだそうだ。仕事の充実=人生の充実と思う人が多いが、仕事の充実と私生活の充実はまったく別物だ。仕事と私生活のバランスを取ることを考えていれば他にすることがないから、という理由のない残業や、定年後の問題なども解決できる。
甘っちょろい考え方ではやはり結果は残せないな、と痛感した。
唯一、少し気になったのはたとえ話が野球などスポーツが多いことだ。私は野球ファンだったので問題ないが、興味のない人にとってはわかりにくいかもしれない。
とはいえ、読み終えたらすぐ行動したくなるモチベーションを上げてくれる本なのでぜひ。