毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

ビジネススキル=体を鍛える☆☆☆

4344980867仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか (幻冬舎新書 や 5-1)
山本ケイイチ
幻冬舎 2008-05-29
価格 ¥ 777

by G-Tools

著者はパーソナルトレーナーとして第一線で活躍している人で、レバレッジシリーズの本田直之さんを始め、ビジネス界で成功した多くのクライアントを持っている。著者が成功者たちを指導していて気づいたことは「仕事ができる人はトレーニングをやっても優秀だ」ということだ。
アメリカではもともと「太った人は自己管理能力がないから出世できない」という文化だったが、現在ではただ痩せているだけではだめで、トレーニングで体を鍛えていることが必要になっているらしい。それが日本でも浸透してきたのかもしれない。

優秀なビジネスパーソンが、トレーニングにおいても成功を収めることができるのはなぜか。著者はこう示している。

レーニングの目的を明確にする
 ↓ 
有効で現実的な目標を、期限と数値で設定する
 ↓ 
目標達成のためになすべきことを具体的な行動に落とし込む
 ↓ 
行動を継続するための仕組みを作る
 ↓ 
実行する

確かに、これを見ればビジネスもトレーニングも、成果を上げるための方法はまったく同じだ。
このように、体を鍛えるトレーニングをビジネスと関連づけて考えるという斬新な切り口がとても面白い。


この本のテーマは大きくふたつあり、「トレーニングの原理原則」と「よいトレーニングを続けるための考え方」だ。どうやれば効率よく、結果を出せるトレーニングができるのかが詳しく書かれている。よいフィットネスクラブやパーソナルトレーナーをどう選ぶかから食事や睡眠などの生活に関するアドバイスまで、これからクラブに入会したい、体を鍛えたい人には素晴らしい本だと思う。
しかし、私は「仕事のやり方とトレーニングのやり方は同じ」というところに興味があったので、そちらを重点的に読んだ。

何でもお金で買える世の中になったが筋肉だけはお金では買えないとか、トレーニングは現代では数少ない「短絡的ではないもの」とことばになるほどと思った。生命や身体に関するものは、すべてプロセスを省略することができないのだ。簡単に結果が出ない、効果が実感できて変わってくるのに6週間〜半年はかかるものを続けることに意味があると著者は言う。

一見ただのしんどいトレーニングが、見方によってはこんなに人を成長させてくれるものなのか、と目からウロコが落ちる1冊だと思う。今すぐ体を鍛えたい人もそうでない人も、一読の価値があると思う。

以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

レーニングのメリット
  • メンタルタフネスが向上する

運動の習慣を持つことで情緒が安定し、仕事にも人間関係にも前向きになれることの効果ははかり知れない。

  • 歯磨きするように体を鍛える

習慣になると自信がつく。…よい習慣を持っていることは、人生を切り開いていくときに、最も強い力となってくれる。
芸術家がすごい作品を作れるのは、もちろん才能の賜物だ。しかし、才能だけでは作品は生まれない。人が遊んだりテレビを見たりしている間も、ずっと作品に向き合う。その粘り強さあってのものなのだ。

意外に思われるかも知れないが、茶道とトレーニングには共通点がある。…茶室に入れば別に殿様だろうが侍だろうが関係ない。1人の人間と人間がお茶をはさんで相対するだけだ。
これは、ジムに行けばみんな同じという感覚と似ている。ジムに持っていけるのは自分の肉体だけ。ジムにいる間は、仕事や俗世間とは切り離され、黙々とバーベルを上げ、自分の体と向き合うしかないのだ。

  • 「できない言い訳」をふっきる手段

レーニング前後で、気分がどう変わるかを調べたデータがあるのだが、それによれば、体を動かすことで、精神のコンディションは明らかに好転する。…興奮すると交感神経が優位になり脈が早くなる。逆に副交感神経が優位になると、気持ちがリラックスする。トレーニング後は交感神経が活性化して脈が早くなるから、興奮して意欲的になるわけだ。
人は物事を達成したいという意欲を持ちながらも、どこかでできない言い訳を探してしまいがちだ。トレーニングをすると、そういう迷いをふっきることができるという人は、私のクライアントにも多い。

  • 自分に対してポジティブになれる

私はトレーニングの前と後に、1行でもいいから、その時の気持ちをトレーニング用に決めたノートに記録するようにしている。ノートを見ると、トレーニングの前と後では、明らかに感想が違う。

  • 気持ちの切り替えが上手になる

レーニングをしていれば、たいていの悩みは自分だけで解決できるようになる。言ってみればセルフコーチングのようなものだ。
レーニングができなければ、軽く走ってくるだけでもいい。ただ走るだけでも脈はそれなりに上がる。20分か30分、外を走ってきて、行く前とまったく気分が変わらないという人はまずいない。

レーニングのメンタル面でのメリットには、リフレッシュやリセット効果の他に、クリエイティビティを高める効果もある。
(中略)
アイディアに煮詰まったときこそ、トレーニングなのである。
だからトレーニングするときには、絶対にメモ帳とペンを持って行った方がいい。

  • 直感力・集中力が高まる

私は、直感とは、脳の活動というよりは、身体活動だと思っている。さらに言えば、直感力が高まっている人は、躍動的でしなやかな体をしている。
(中略)
頭でっかちになって身体能力が鈍ると、危機を直感するセンサーが働かなくなって、釣り糸にぶら下がったエサに食いついてしまう。また、体が警告を発しているのを感じていても、その直感をねじ曲げて、目先の損得に走ってしまうこともある。
しかし、普段から体の発するメッセージに敏感で、直感を鈍らせていない人は、危機を察知しやすい。

  • 危機を察知する感覚が鋭くなる

日本は諸外国に比べればまだまだ平和で安全で暮らしやすい国だ。戦争や暴力など、死の危険と隣り合わせの経験をしたことがある人は少ない。そして日常生活の中で体を動かす機会が圧倒的に少ない。そのため、日本人は危機的状況を察知する身体感覚が鈍くなっているように感じられるのだ。
(中略)
レーニングをすると自分の肉体をリアルに感じるので、そういう生命の危機に対する直感力を取り戻すことができる。
「こんなに脂肪をためこんでいたら、いざというときに走れない」「こんな重さすら持ち上げられないのはヤバい」と感じることで、危険に対する感覚も高まってくる。

レーニングを始めるのに、遅すぎるということはない。

時間をかけて何かをするという経験がどんどん減っている現代社会においては、自分の体の変化とじっくり向き合う、トレーニングという行為は、精神力を鍛える貴重なチャンスなのだ。そう思って、積極的にトレーニングに励んでほしい。

失敗する人には共通点がある
  • 目的が曖昧
  • 目標が立てられない
  • 計画性が低い
  • スケジュールに無理がある
  • 情報に惑わされやすい
成功する人は目的が明確
  • 目的が明確である
  • 忍耐力がある
  • 計画性が高く実行力がある
  • 情報の選択力が高い
  • コミュニケーション能力が高い
  • 仕組み化が上手い
成功する人はSlow Learner

成功する人には、もうひとつ重要な共通点がある。それは、一度に多くを変えないということだ。
レーニングを始めたら、本当はそれに合わせて食事や睡眠の仕方も変えた方が効果は出やすくなる。
でもたいていの人は仕事があるから、食事も睡眠もすぐに変えることは難しい。そこで、成功する人はとりあえずトレーニングを始めることだけに専念する。さらにトレーニングのメニューも、あれもこれもと手を出さず、一ヵ所をじっくりと鍛える。ひとつのことに集中することで、効果が見えやすく、他の部分もそれにつれてうまく回り出すというのは、前述したとおりだ。

結論を急がない、保留できるということは、成功者の共通点である。

レーニングを失敗してしまう人は、すぐ結論を求めたがる。だから「それではこうしよう、ああしよう」と決めてしまうのだが、現実的には無理があることが多い。これに対して、うまくい人は、「とりあえず、おいておこう」とか「ちょっと様子を見ようかな」ということができるのだ。

目的と目標の違い

目的と目標は同じような意味で使われることが多いが、私は明確に使い分けている。
目的とは、「何のためにやるのか」ということ、目標とは「そのために何をなすべきか」ということである。目的を達成するために、どうやってするのかの具体的行動内容が目標である。目的が痩せることであれば、運動と食事、生活リズム、つき合いなどについて、現状の何が問題かを把握し、それに対し何をいつどうすべきかを明確にすることが、目標設定である。

よりシンプルに、よりショートに

ジムに長居しない。これもトレーニングを続ける上で重要なポイントだ。
レーニングは集中してさっさと終わらせるように「意識」する必要がある。
(中略)
1時間なら1時間とタイムリミットを設定し、絶対に延ばさないという決まりを自分の中でつくっておく。そうすれば、「無駄は徹底的に省かなければ」という意識が働き、1つのひとつの動作に集中できる。荷物も減る。それがトレーニングの効果を最大限に引き出すコツであり、同時に継続のためのコツでもある。

すぐれた首尾一貫感覚の持ち主

アントノフスキーという医療社会学者は、「首尾一貫感覚」(Sense of Coherence)という概念を提唱している。「有意味感」「把握可能感」「処理可能感」の3つの下位概念があり、この感覚を備えた人間は、ストレス対処に長け、健康保持能力が高いといわれている。
私がトレーナーとして接してきた成功者たちは、すぐれた「首尾一貫感覚」の持ち主だと思う。

精神と筋肉に共通する普遍の成長原理

成功者に共通するメンタリティとして、最後に上げたいのは「打たれ強さ」だ。
(中略)
だから彼らには、批判や孤独にも耐性がある。日本では、新しいことをやろうと思えば、
「どうせ失敗するに決まっている」
「うまくいくはずがない」
と批判されて足を引っ張られるのが常だ。しかし彼らはそういった人々の無責任な発言に耐え、決断を下すだけの精神力を持っている。
人間の筋肉もまったく同じだ。トレーニングでは、わざと痛く、辛く、苦しいことをする。筋肉はいったん傷つかないと再生しないからだ。その再生の過程で、傷つく前よりも強い筋肉が育っていく。
精神も筋肉も、辛く苦しいさまざまな刺激を受け、それに適応すべく超回復し強化されていく。そして鍛えるという行為は、自分自身の意志で、自分でやるしかない。誰も代わりに強くなってはくれないし、他人がバーベルを上げてくれても、自分が強くなるわけではない。
精神力そして人間力を高めることと、筋肉を鍛えることはまったくの同列である。