自転車の安全鉄則 (朝日新書) 疋田 智 朝日新聞出版 2008-11-13 価格 ¥ 777 by G-Tools |
現在、自転車が歩道を走ってもよいとされている国は日本だけなのだそうだ。それがいかに危険なことなのか、この本を読めば実感できる。そしてそれは、自転車が被害者にも加害者にもなりうるという二重の意味を持つ。
日本では車が激増した70年代に「自転車は歩道を走ってもよい」という法律を当時は一時的な措置として作ったが、それがそのままになっている。このため本来は車道を走る軽車両であるにもかかわらず、車道を走る自転車は肩身が狭い。しかし、実は歩道を走るのは車道を走るよりも何倍も危険なことなのだ。
では、安全のためにできることは何か?お金がかからず、比較的簡単にできることは?その答は「左側通行」だと疋田さんは訴える。自転車はすべて、歩道であろうと車道であろうと左側通行を厳守するべし。それだけで自転車と車の死亡事故、または自転車同士や自転車と歩行者の衝突事故がかなり減らせるという。
その根拠は非常に具体的だ。3つの理由が提示されている。その中で最も驚いたのは、「追突されるよりも正面衝突の方が衝突のエネルギーが大きく、死亡事故になりやすい」こと。それは走っている速度にはあまり関係なく、徐行に近いようなスピードでも死に至るほど大きくなる*1のだ。対面通行は正面衝突を誘発してしまう。
疋田さんと言えば軽く読めるエッセイも多いのだが、この本は大変論理的で、しかも読みやすい。疋田さんは自転車が走りやすい環境を求めてさまざまな活動をされている第一人者であり、問題点の追求やその解決策についても、長年取り組んできた答なのだろうと思う。
この本を読んでから、今までは「できるだけ左側通行」で、車の少ない細い道などはあまり気にしていなかったのだが、これからは「左側通行厳守」で乗ろうと思う。たくさんの人がこの本を読み、左側通行がルールとして定着すれば、京都議定書のマイナス6%だって怖くない。ぜひたくさんの人に手に取っていただきたい本です。
*1:試算によるものであり、道路の状況や、衝突時の打ち所など他の要因もあります