先月、この本の著者である出路雅明さんの講演会を聞きに行ってきた。その内容はこの本とは違っていたのだが、お話がとても面白かったので興味が湧き、読んでみた。
出路さんは古着ショップを全国展開するバリバリの経営者だ。京都に自社ビル(ホールまである!)もある。そんな出路さんがものすごい危機に直面したのがお店を始めてから10年目。倒産寸前まで追い詰められたという。借金は20億円以上にふくれ上がり、ご自身はストレスから胃潰瘍になってしまった。
その時に出路さん曰く『スーパーサイヤ・アホ!』に変身したのだという。つまり、わかりやすく言えば「開き直れた」そうだ。そして、むずかしいことはやめてしまい、楽しいと思えることだけを追求して行った結果、倒産寸前の状態から今までの実績を上回る超V字回復を実現させてしまったのだ。そこにいったいどんな秘密が?とみんな思うだろう。
この本ではそのストーリーと、「ちょっとアホ!理論」の定義、実際に会社ではどんな風に「ちょっとアホ!」理論を実践しているのか、どん底から超V字回復を見守ったスタッフの証言など多角的に紹介されている。
Amazonのレビューで思いのほか評価が低いのは、おそらく「アホ」という言葉のニュアンスが、関西とそれ以外の地域で違うところがあるだろう。確かに、本全体がふざけているので若干の読みづらさはある。が、この“面白がり方”そのものが「ちょっとアホ!」の実践なので、読む側も面白がって読んでみてほしい。「ちょっとアホ!」の奥には深い真理があるからだ。
読んで一番感じたのが、「楽しいことだけ」の「楽しい」の意味だ。よく“ワクワクすることだけをやろう”という内容の本を読んでいきなり会社を辞めてしまい、フリーターのような状態になっている人がいるが、それは本当の意味の「楽しさ」ではない。どんなことでも「どうやって楽しむか」を考え、「とことん楽しむ」ことが大切なのだ。嫌だから逃げて楽なことばかりするのは、本当の「楽しさ」とは違う。ここがとても明確に書かれていてなるほど、と思った。
「ちょっとアホ!」においての「楽しい」は、
一生懸命にやるからこそ「楽しい」というものです。
仕事だけに限らず、何をやるにしても、
一生懸命に知恵を出しきり!、一生懸命に仕事をやりきる!からこそ楽しいのです。
仮にあなたが楽をしたいからと言って、難しい仕事は避けてダラダラと仕事をしていると、時間が過ぎるのがすごく遅く感じると思います。絶えず時計ばかり見て、「まだこんな時間か、あと○時間もあるのか」なんて言いながら仕事をして、辛い時間を過ごすことになるでしょう。
そんな仕事の仕方が、本当に楽で「楽しい」のでしょうか?
結局は「やりきる、出しきる」 の精神で、難しい仕事でも、細かい仕事でも、どんな仕事でも、工夫して、工夫して、工夫しまくって、最大限に知恵を出しきり!、仲間やお客さんを喜ばせられるよう、仕事を最後の最後まで一生懸命やりきる!からこそ、本当の「楽しい!」や本当の「楽」が得られるのだと思います。
この「やりきる、出しきる」は商売人の基本でもあり、それをしっかりやってさえすれば、必ず儲かるのだと、いつも私は教えています。
その上で、すべての判断基準を「楽しいか?楽しくないか?」に変えてしまったそうだ。たとえば、むずかしい数字は計算に手間がかかるのに会議で活かせていないのでやめてしまった。大切なところ以外はどんぶり勘定でOK。それでもうまく行ってしまうのだ。
楽しいとやる気が出る。しかし、実は『スーパーサイヤ・アホ!』に変身する前の出路さんは、楽しんで仕事をするなんて本気で仕事をしていない、と思っていたのだそうだ。
ところが「ちょっとアホ!」になって楽しいことだけを追求していったら、みんなのやる気がどんどん出てきて売上げが上がってきたんだとか。つまり「楽しい」と「やる気」は連動しているのだ。名付けて「やる気スパイラル」。これが超V字回復の秘密だったのだ。
さらに、「楽しい」以外のキーワード「ちょっとアホ!」四天王についても触れられている。
- 「正直」……「正直」なら、怖いものなし!
- 「真面目」……「ちょっとアホ!」を「真面目」にとことんやりきる!
- 「子供心」……遊び心、イタズラ魂、○○ごっこ!
- 「うぬぼれ」……何でも簡単!できる!できる!
中でも、私が本を読んで(または実際に話をお聞きして)感じたのは、出路さんご自身の「素直さ」だ*1。
倒産寸前になる2年前、隠居じじい事件というのが起きている。くわしくは実際に本を読んでいただくとして、実は自分が隠居じじいモードに入っていた、つまり人生が守りに入っていたことに気づいた出路さんは、会社のみんなを集めて謝り、涙したそうなのだ。
また、『スーパーサイヤ・アホ!』になった時も、やはりみんなの前で正直に自分の気持ちを語り、涙を流し合ったという。
泣いたことが素晴らしい、ということではないが、長年会社を経営して地位もプライドもある社長が、スタッフの前で正直に自分の気持ちを伝えるのがどれだけむずかしいことか考えてほしい。私にはできないと思ったし、おそらくほとんどの人ができないのではないだろうか。
この「ちょっとアホ!」理論のすべては、出路さんの素直さがあればこそだと思う。そこがなければ、形だけ真似しても結果はついて来ないような気がする。やはり「素直が一番」なのだ。
表紙もふざけていて、手に取るのがはばかられるような派手さだが、「真面目にアホをやりきる」とはこういうことか、とぜひ体験してみてほしい。ここまでスケールの大きなアホになりきれなくても、「元気に明るくちょっとアホ!」と毎日唱えるだけでも大きな違いがあると思う。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
学ぶ=知る!→納得する!→行動する!→他にも影響を与える!
普通だと、「学ぶとは、実践してはじめて学んだと言う」なんていうのをよく耳にしますよね。当社では、実践したあと、周りに影響を与えるまでやって、はじめて学んだとしています。
ファンになるな、プレーヤーになれ!
極端に言うと「楽しみや喜びを与えられる側にまわるか」と、「楽しみや喜びを自分で作り、人に与える側にまわれるか」の差です。
やると決めたら即、やることも大切です。
「やる気!」=「楽しい!」+「心を伝える!」
判断基準が変わった
改革前は、
「業界的常識を重視」「世間体を重視」「流行っているかどうかで判断」「売れそうかどうかで判断」「努力、根性、頑張る主義」
改革後は、
「自分自身が楽しいかどうかで判断」「社員スタッフが楽しいかで判断」「お客さんを喜ばせられるかで判断」「社員スタッフといった仲間を重視」「自分たちらしさを重視」「笑顔、楽しむ、顔晴る重視」
楽しいことが起こるから楽しくなれるのではなく、
自ら工夫して楽しむから何もかもが楽しくなるのです。
そして一生懸命に楽しみ続けていると、
不思議と楽しいことが周りから起こりはじめるのです。これ本当ですよ!
人を喜ばせてなんぼ!
「ちょっとアホ!」は絶対に人を楽しませ、喜ばせることが「大好き」じゃないとダメです。
「自分が楽しみたいなら、人を喜ばせて楽しませる」というのが、「ちょっとアホ!」における「楽しい!」の奥義なのです。
だいたい「商売とは、人を喜ばせてなんぼ!」というものですから、喜んでもらって喜び、お金をいただいて儲けて喜ぶというのが商売です。そういう意味でも、「ちょっとアホ!」は商売向きなのかもしれません。
ありのままの自分が大好き
「ちょっとアホ!」の四天王キーワード「正直」において、「ありのままの自分が大好き」というのは、本当に大切なポイントです。
だから私は、どんな人に会う時も、ありのままの自分を出し、「正直」でいることを心がけています。別に言いたくないことや、嫌なことを無理やりさらけ出す必要はないと思いますよ。
ただ見栄を張ったり、世間体を気にしたり、変な常識なんかにとらわれないように、いつも心がけているだけです。
何をするにも「子供心」や「幼稚」の精神があるから、仕事を遊びに変えて楽しむことができる。
「うぬぼれ」は「できる!」の素
うぬぼれているからこそ持てる特有の感情があるからです。その感情とは、どんなことでも「簡単だ!できる!できる!」と思えることです。
要するに“うぬぼれ”ていると、何にでも簡単に“チャレンジ”してしまえるのです。
私は仕事でも、遊びでも、何をはじめる時も、「できるか?できないか?」とか、「上手くいくか?いかないか?」なんてことはあまり考えません。思い立ったら即、行動してしまいます。
(中略)
何にでも平気でチャレンジすることで、失敗しようが成功しようが、その「経験」が「成長」につながっていくのです。
*1:ご自分ではこの資質を「正直」と呼ばれているんだと思います