著者は一橋大学留学生センター・言語社会研究科准教授で、文章や表現に関する本をたくさん書いている人だ。
「読解ストラテジー」というものを使い、その時々の目的に合った読み方を選択することで、的確に読む力をつけよう、というのが目的。
ストラテジー(=戦略)という言葉に惹かれて読んでみたが、「無意識のうちにやってますよ」ということがほとんどで、私にはあまり新鮮味がなかった。
「読む能力」はあまり重要視されていないが実はここで大きな差がつくのだという主張や、速読では文字認識の能力を磨くことにウェイトが置かれているが、実は認識した文字列に意味を見出す能力がなければ内容は理解できない、という点など、理論としてはとても納得がいく。
が、具体的な方法はわざわざ言われなくても…だった。複雑な文脈の構成をどう理解するのか、というやり方は本多勝一さんの『日本語の作文技術』と同じような印象を受けた。
読むのも書くのも好きな人間が読むとあまり評価が高くないが、苦手な人には役に立つ本かもしれない。amazonではかなり評価が高かった。論説文に手こずっている高校生には役に立つと思う。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
著者の考える読み方は5種類
- スキャニング(超速読)表現検索のための読み
- スキミング(速読)大意把握のための読み
- 味読(平読)楽しみのための読み
- 熟読(精読)概念習得のための読み
- 記憶(超精読)内容再生のための読み
意味を見いだす能力(P23)
一般の読書術、特に速読術の本では、「画像取得活動」と「文字認識活動」に焦点を当て、そこをトレーニングすることが多いようです。しかし、本書では「意味変換活動」と「内容構成活動」に焦点を当てていきたいと考えています。人間が文章を読むことの意義は、意味を見いだすところにあります。文字列に意味を見いだす能力を高めることが、読む技術の習得への一番の近道と考えるからです。
「話題ストラテジー」のポイント(P76)
文章を早く正確に読むためには、次のことを意識する。
1)その文章が何について書かれたものなのかを考え、頭の中の知識や経験に引きつけて理解する。
2)文章を読み始めるとき、タイトルや書き出しに目を留め、何の話題がどのように展開されるかを想像する。
指示詞と接続詞をたどる(P163)
書き手は、無数の文を紡いでひとつの文章を作り上げていきますが、その紡いだ軌跡が指示詞と接続詞に形となって残っているわけです。したがって、指示詞と接続詞をたどっていけば、文章の中で展開された書き手の思考の筋が見えてきます。