毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

知的生産力を効率よく伸ばす☆☆☆

文庫版もあります。

かなりたくさん読んでいる、作家でジャーナリストの日垣隆さんの本。
知的ストレッチって何だろう、と思ったら体を柔らかくするストレッチのように、毎日少しずつやることで、知的生産能力を向上させられる方法のことだった。この本では、自己満足ではなく、より具体的に日々少しずつ成長する方法が紹介されている。
日垣さんは若い時よりも調べものをする、本を読む、文章を書くすべての面でレベルが上がったそうだ。
どんな方法なのか、ワクワクしながら読んだ。


最近日垣さんの『すぐに稼げる文章術』で紹介された本を立て続けに読んでいるからか、内容、特に文章の書き方や本の読み方に関しては復習に近い印象だった。いろんな人が同じことを言っているということは、きっとそれは王道なのだろう。


私が面白い、と思ったのは書類整理の方法や、机のレイアウトや道具に関するところだった。これは私が文具オタク*1だからかもしれないが、こういうノウハウは自分で取捨選択する能力さえあれば、いくらかはヒントになることが多い。

日垣さんは道具にもいろいろなこだわりがある人で、A4サイズの書類などを整理するボックスや、収納力が日本一の書棚など、面白いものが紹介されていた*2


他にも、私に響いたのは具体的なノウハウというよりも、精神的なものが多かったと思う。また、「おのれを知る」という言葉が出てくるが、自分の今の力量を知る方法や、どうすればそれをもっとレベルアップできるのかというやり方は、あまり他の本には出てこないので役に立ちそうだ。

もちろん、すべてが役に立つわけではない。「本1冊に百枚も付せんを貼っていたら笑われます」と書いてある本にベタベタ付せんを貼っていたし、何もかもをその通りにやろうとは思わない。たとえば3つ、新しく取り入れることを決めてやってみて、ひとつでも自分のやり方に残れば大成功だと思う。

さらに、日垣さんの本はすべてある意味「プロ仕様」なので、いくら稼げるかという視点は必ずある。「読んでもらえる=お金になる」なので、そこは好みが分かれるかもしれないが、私はこの現実的な視点が好きだし、ヒントもたくさんもらった。仕事と趣味の違いは「依頼と締め切りがあるかどうか」という考え方は私にはなかったので、とてもインパクトがあった。

シビアなものの見方や、日垣さん独特の“毒のある文章”に負けない方にはお勧めです。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

知的ストレッチの基本3原則(P17)

1)インプットは必ずアウトプットを前提にする
2)うまくいった諸先輩の方法をどんどん採り入れる
3)おのれを知る

インプット=アウトプットを目指す(P18)

基礎学力をつけているはじめの15年くらい(つまり、学校教育時代)には、そういう(=情報や知識を100ほど摂取して初めて、ようやく1程度のアウトプットが出せる)インプットの在り方も必要なのですが、それ以降はできるだけそうした発想とは訣別しましょう。アウトプットにまったくつながらないインプットは無駄だと肝に銘じてください。あるいは、インプットの量とアウトプットの量をイコールにしていくというイメージを、強引にでも持ってください。

質問を「打ち返す」習慣をつける(P19)

アウトプットする力を向上させるには、周囲の人から何か質問されたら必ず「打ち返す」という習慣を身につけるのが近道だと思います。自分の守備範囲にまったく重ならないことについての質問でも、これは知的ストレッチにとってまたとないチャンスです。どんなにくだらないと思える質問であっても「答」を出しましょう。
それこそ「アウトプットを前提としたインプット」の典型だからです。

専門家のレベル(P22)

深さに関しては、専門書を読んでいくのが一番の近道です。深さの目標は、専門家と呼ばれるに足るレベルと考えればいいと思います。学術書を立ち読みして20分くらいでそこに書かれていることがわかる、という水準に達しているのが専門家です。

自分の関心を見極める読書(P38)

どういう形でアウトプットするのかという構想さえ一貫したものを打ち立てられれば、今のような方法(あるテーマに関して基本文献を5冊くらい選び、一気に目を通してその中で取り上げられている他の本もどんどん読んでみる)は、わりとスムーズに行くと思います。漠然とした収集であっても、何かが気になったからそれを選んでいるわけですから、なぜ自分はそれに関心を持ったのか、という正体を見極めるような読書にするのです。

黄金の5分間(P47)

いったん本を読み終えてから、5分程度かけて、付せんを貼ったり角を折ったり書き込みをした箇所だけ、まとめて再読します。この「まとめて再読」があるのとないのとでは、その後の読書力は30倍くらいは違ってくるでしょう。
(中略)
折ったり貼ったりする箇所を、それぞれ10ヶ所程度にとどめる、というのも読書力を高めるために大きな効果を発揮します。

優先順位とは偏差値の自覚(P59)

優先順位というのは、別言すれば、さまざまな好みについて偏差値(平均からのズレ具合)を大まかに自覚するということになります。
(中略)
その「それぞれぶり」と言いますか「ズレ具合」と言いますか、要するに各人の「好み」偏りを自覚する、が「おのれを知る」の実態です。

書類引き出しの分類方法(P62)

インデックスはいったんこれで始めてみて、必要ないものは中止し、頻繁に利用するのになかなか書類を探せないようになってきたら、それはすぐ分家すればよいのです。

引き出しのおすすめインデックス(P64)

「企画メモ」
ふと思いついたメモや、そのうちにやろうかなと思った切り抜きを入れてゆきます。半年経って、まったく参照していなければ捨てましょう。
「外出時」
財布とか名刺入れとか、外出時に必ず持っていくべきもの、あるいは時々持っていくものを入れておきます。忘れやすい人は、ハンカチや携帯関連などもここに入れておきましょう。
「領収証」
「引き継ぎ」
「よく考えてみよう」
雑誌や新聞や本を読んで、あるいは上司や取引先や居酒屋などで聞いて、これはとても大切なことだがよくわかっていない、ぜひ自分の頭でゆっくり考えてみたいと思われた素材(記事やメモ)を入れます。これらは放置せず、通勤時や休日の1時間くらいを、この解決のために時間をとりましょう。これができるかどうかで、仕事の出来不出来はまったく違ってきます。
「捨てがたし」
どこに分類していいかわからないけれども、近い将来に役立つような気がする、というものがあります。それらを、あまり深く考えずにここに入れてゆきましょう。これもかさばってきたら、後日まとめてリストラすればいいのです。
「保証書/領収証」
「電子辞書」
「文房具類」
「注文予定」
この本を注文しようかな、近々これを買いたいな、と思える広告やメモやカタログを、ここにぶちこみます。
「名刺」
「地図/お店」
とりわけ気に入ったお店では、レジ横に置いてある名刺や案内をもらって、ここに入れておきましょう。地図があると、待ち合わせする場合に便利です。
また、事務所や自宅の地図を先方からFAXで送ってもらった場合も、ここに入れておきます。
「あとで読む」
「ネタ」

「知る」「調べる」は「考える」の一部(P86)

「考える」を分解しますと、過去の事例を踏まえる+リスクやベネフィットを推し測る+優先順位をつける、ということになるでしょうから、そこには「知る」と「調べる」が手段として含まれていることに気づきます。
つまり、「知る」や「調べる」(および「体験する」)は、おおむね「考える」を支えているわけです。

仮説やヒラメキを書き留めておく(P92)

できるなら……1行でもいいからメモの代わりにブログに書いてしまってはどうでしょう。仮説やヒラメキを書き留めておく、というのも知的ストレッチにおいてはとても有効です。無理をせず、1行でいいと割り切ってください。だいたい、1行でいい、と言われたら1行以上書いてしまうものですから。大事なのは続けることです。

仕事と趣味を分けるもの(P112)

仕事として成立するのとしないものを分けているのは何かと言えば、要素としては2つしかない。「依頼と締め切りがあるかどうか」。この2つが本質的なことであって、これ以外の定義は重要ではありません。

インプットはアウトプットのためにある(P115)

あくまで仕事においては、インプットの続きにアウトプットがでてくるのではなく、アウトプットが前提になっていて、そのためにインプットがあるのです。

アウトプットの正体は説得力(P116)

だと考えてかまいません。説得力のないものは、アウトプットとして失格です。もっと言えば、相手の納得というハードルをクリアしたものだけがお金になる、と言っていいでしょう。

相手の頭の中で何が起きているのか(P118)

1対3なり、それ以上の、違う立場の人たちを説得するためには、それぞれの異なった体験や異なった利害を分析しながら、その3通り以上の考え方をする人たちをひとつの結論に説き伏せていくことが必要なのです。
その時の発想というのは、自分が何を言いたいのかではなくて、相手の頭の中で何が起きているのかということを考えながら話すこと、これにつきます。

フィニッシュした経験を積む(P132)

知識や経験値をどうやって定着させていくか。ただ漠然と蓄積するのでも、体験としてどれだけのものに関わったかでもなく、どれだけのものをフィニッシュされたか、これがとにかく一番重要です。プロジェクトにしても、報告書や企画書にしても、フィニッシュした経験、それだけが蓄積されていくのです。
(中略)
どんなにつまらなくても、最後に「完」と書けるものをどれだけやったか。それだけが、蓄積される体験、仕事の正体なのではないでしょぅか。

締め切り効果を生かす(P138)

結局、くだらないテレビを見続けてしまったり、変に悩んだり、何の生産性もない時間をたくさん過ごしてしまうというのは、その時間が埋まっていないからなのです。そこに、動かしがたい締め切りが入ってくれば、それをこなしていかなければならないため必死にならざるを得ない。そうすることによって、嫌でもスキルがついてくるので、次第に土日は余裕で遊べるようになる。

時間を読めるようになる(P139)

意図的に締め切りをめいっぱい入れて、テキパキとこなす、という体験をできるだけしていく。それを全部何とかして終わらせる、という修羅場を何度も重ねると、スキルが蓄積されるだけではなくて、自分がこの仕事を終えるためにどのくらいの時間がかかるかということが、かなり正確に読めるようになります。以前は読めなかったから「だらける時間」が長くなっていたのであって、読めるようになると無為な時間がなくなっていきます。
情報集めが大事なのではない(P189)
もっとも肝心な能力は、その場でしか通用しないヲタな情報を集めることではなく、そのニュースを歴史的に位置づける智恵と体験でしょう。

すぐ片づけることの効用(P216)

実際やってみるとわかるのですが、それぞれの案件で、時間がたてばたつほど処理にかかる時間が少なくなる、ということは原則としてありません。むしろ、あと回しにしてしまうと、即答なら必要のなかったはずのことをつけ加えなければならない場合の方が多いでしょう。遅れたことのお詫びとか、せっかく時間をかけたのだから、それなりのことを書かなければならない、とか…。

*1:正しくは文具ではなくて「知的生産オタク」なのかもしれません…

*2:私がいかに文具オタクか、というエピソードをひとつ。大きな店にしか置いていない特殊な付せんと、個人で持っている人はあまりないシャチハタ印を使ったある方法が紹介されていたのですが(P48)、何とわが家には両方ありましたよ…