毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

文章力トレーニングの名コーチ☆☆☆☆

原稿用紙10枚を書く力
斎藤 孝
大和書房(2004/09)
¥1,260

文庫版もあります。
斎藤先生の文章術の本。それも、理論ではなく非常に実践的な本だ。
最近続けて読んできた文章に関する本の集大成と言ってもいいと思う。とても読みごたえがあった。

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斎藤先生は原稿用紙10枚分、つまり4000文字の文章*1が書けるかどうかがひとつの分かれ目になる、と考えているそうだ。フルマラソンを目指す人のひとつの目安が10キロと言われるが、文章の場合はこれが10枚だという。じゃあ、どう練習をすれば10枚書けるようになるのか。このたとえ話がさすがは身体論の専門家、とてもわかりやすい。

この本のコンセプトは「書く力をつけること」=「考える力をつけること」だ。しかも、書く力をつけることで読書力も上がるという。根底にそのテーマがあるため、実践的でありながら小手先のテクニックに走らない、バランスのいい内容になっていると思う。


文章を書く前の準備について詳しく書かれているが、このあたりは『「箇条書き」を使ってまとまった量をラクラク書ける文章術』と同じような内容で、この方法がそのまま使えると思う。やはり、長い文章を書くにはていねいな準備が必要なのだ。いきなりパソコンに向かってうんうん言いながら考えるようでは書けない。
ほかにも資料としての本の読み方など、他の文章術の本とかなり共通する部分が多く、復習になった。


私が特に役に立ちそう、と思ったのは主観と客観のバランス。ブログなどで自分のカラーを出さなければ、と焦ったりするが、出し過ぎない方がいいようだ。自分の切り口で引用する箇所を選ぶだけでも、自分らしさは出せるという。
それ以外にも読者と素材を共有することや、パブリックとプライベートを行き来する力を鍛える重要性など、ブログにすぐ役に立つ考え方がいろいろあり、勉強になった。また付せんだらけにしてしまった。


10枚というある程度の長さを目指す本なので、「原稿用紙3〜4枚は書けるんだけどそれ以上がなかなか」という中級レベルの人向きだと思う。
自己満足ではなく、“外に向けて発信する”意図のある文章を書くには最高の本。ぜひ、この本をコーチにして10枚の壁を破ってください。


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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

「文章が書ける人」の定義(P14)

私は、書くことにおいては、原稿用紙10枚という長さを書けるかどうかが分岐点だと思っている。そして原稿用紙10枚を怖がらない人を「文章が書ける人」と定義している。

10枚以上の長い文章を書くには(P23)

メモやレジュメを作り、文章を構築する必要がある。構築力が文章を書く力の中心になるのだ。

起承転結は転が最初(P24)

「転」を思いついたら、あとは「起承」を無理にでもくっつける。「結」は最後、とりあえず無理矢理考えて大丈夫。「転」を命にして、「転」を思いついたら書く。
(中略)
「転」が落とし穴だとすれば、それを上手にごまかすのが「起・承」で、「転」というのは、落とした相手を笑うところだと考えればいい。

書けるようになると、読書力がアップする(P26)

本を読む時には、どうやって書いたんだろうと想像しながら読むのが、一番理解が進む。逆に言えば、書く側に立ったことのある人でないと、本当には読むことはできないのだ。

文章を書くための準備(P47)

何かを書こうとしたら、あらかじめ素材をパソコンに打ち込んでおく。そして、それらの素材をリストにして見渡せるようにしておく。

書くトレーニングを積めば話せるようになる(P56)

私が聴衆に聞いてもらえる話、つまり、きちんと構成されて意味がある話ができるようになったのは、これまで論文を大量に書くというトレーニングを重ねてきたからである。文章を書くように話すことを意識することによって、講演で内容のある話ができるようになった。

何かを取り上げて書く時は、そこに新たな価値を発見し、生み出すことに意味があるのだ(P64)

公共的な感覚を持つ(P69)

「書く」とは、書いた人間を個人的にまったく知らない多くの人たちに、内容が正しく伝わるということである。
(中略)
大事なのは、書く時にプライベートなモードとパブリック(公共)なモードを自由に往復できる力を持つようにトレーニングすることだ。

主観と客観を切り替える(P70)

アイディア(ネタ)出しまでは主観が大きく働いているが、その後の作業では客観が主体にならないと、文章を構築していくことができない。

バランスのとれたいい文章(P70)

きちんとした論理が通っていながら、語り手の主観が伝わる文章が、バランスのとれた、いい文章ということになる。

「こなす読書」を目指す(P78)

本は最後まで読み終わらなくてはいけないというものではない。
私は極端に言えば、本ははじめから終わりまで全部読む必要はないと思っている。書くテーマに関連したところだけを飛ばし読みする方が、書くという点からはずっと効率的である。そこで自分のアンテナに引っかからなかったものは、縁がなかったとあきらめる。

読者と共有する(P89)

書くにあたっては、まず読者と共有できるテキスト、素材が必要だという考えを徹底することが必要である。

「気づき」が面白さを生む(P96)

面白いとは、それまで頭の中でつながっていなかったものがつながるということでもある。読み手にそういう刺激を与えるラインを作るのが、文章を書くことの醍醐味のひとつでもある。
頭の中の離れた場所に整理されていたこと、つながっていなかったことが、脳の中に電流が流れてつながっていくような快感である。それが読者にとっての「気づき」の喜びである。

キーワードを拾い、メモを作る(P100)

書く前に、まずキーワードを拾い出してメモを作ることが大切だ。ネタが何なのかをはっきりさせるのだ。具体的にどんなネタがあるかをはっきりさせないと、読んで面白い、内容のあるものは決して書けない。
キーワードを拾い出してからはじめて全体の構築をするという作業に進む。全体を構築するためには、ネタの洗い出し、すなわちキーワードを拾い出すことが前提になる。

誰もが重要だと思うポイントをつかむとともに、自分が面白い、重要だと思うものを拾い出すことで、自然と自分のカラーは出るものである(P101)

構想に役立つメモの作り方(P103)

文章を構築物としてとらえれば、当然、土台が必要である。その土台になるのがメモである。まず、自分の頭の中にある材料を全部紙の上に吐き出すのが第一の作業である。さらにその関連事項もどんどんメモして吐き出しておく。
私はここでも3色ボールペンで優先順位をつけることをすすめる。つまり、書き出した項目に赤、青、緑の3色で線をつけて色分けしてみるのだ。
まず書き出した項目について何が一番重要なのか、赤ボールペンを使って丸で囲んでみる。赤線がついた項目は絶対に書き落としてはいけない重要な部分、青はできれば入れたい部分、そして緑はじぶんのいけん、主張などである。こうすれば、自ずから優先順位ができてくる。
赤線は本であれば「章」や「節」に当たる。青や緑は「小見出し」に該当する。

書くことは、料理を作る時と同じ流れ(P104)

はじめに何を作るか決めておかなくては、材料を用意することはできない。材料を準備できたら、たとえばタマネギ、ジャガイモは切っておく、肉は下味をつけておくなどの下ごしらえをする。最後に、それらを一気に炒めてできあがる。
書くという作業は、料理で言えば、最終段階の焼いたり、炒めたり、煮たりすることにあたる。大事なのは、その前に下ごしらえがきちんとできているかどうかだ。書くことにおいても、材料を準備し、下ごしらえをしておくことがポイントになる。

書こうと思いついたら、思考が白紙になってしまわない地点までの構想を、しっかりと形にしておくことがコツである(P105)

キーコンセプトは切り口になる(P109)

私が言っているキーコンセプトとは、テーマや主題とはちょっと違う。たとえば、環境問題について書くという場合、「環境問題」という言葉は、テーマであって、キーコンセプトではない。そこで環境問題について、自分が書きたい何かを見つける。その「何か」が、キーコンセプトである。それが見つかれば、文章はかなり形が整うはずである。

重要度の高いものから書く(P129)

まず、書く前に書くべきことをメモにして抜き出して、重要度の順番を決める。そのようなマッピングをして、慈雨用度の高い順番に書いていけば、たとえ途中で時間切れになっても、自分の言いたいことはきちんと表現される。

生命力は文体ににじみ出る(P149)

いい文章とは、細部に生命力が宿っているかどうかによって決まる。
(中略)
自分に向き合う感じがこもっていると、文体に生命力が宿る。

主観と客観のバランスをとる(P175)

ふつうは、そのバランスをとってものを書く。何かについて書くと同時に、自分とはどういう人間であるかを表現していく。そのバランスが問題になる。
自分をそのまま語ることはかなりむずかしい。それに比べて、何かについて語る形で自分を表現していくことは、その何かが自分にどう食い込んできたかを示すことによって、自分が出てくることになる。たとえば映画について、せりふなどを、自分がどう見たか、どう感じたかを書くことで、自分を表現する切り口になる。

*1:レポートでも、論文でも、ジャンルは問いません

*2:メモを取る時にやはり3色使い分けが活躍します