毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

歴史を繰り返さないために☆☆

※適切なカテゴリが存在しないため、[読書日記]のみに入れてあります。

今までにパンデミックは何度か起きているが、その中でも特に甚大な被害を引き起こしたのが1918〜1919年のいわゆるスペイン風邪*1

この本は歴史学者である著者が、この時アメリカで何が起き、なぜこのような事態に至ったのかをていねいに検証したものだ。医師ではないので、その内容に物足りなさを感じる人もいるかもしれないが、翻訳者は感染症が専門の医師、医学用語の訳などに関しては安心して読めた。


しかし、長い。ハードカバーでものすごく分厚くて*2、字がみっちり詰まっている。なぜこの本を探書リストに入れていたのかすでに忘れていた。確か池上彰さんの本に何かで紹介されていたのではなかったか(いいかげんですみません)。

目的がはっきりしていない読書は辛い。仕事柄、こういう知識はあった方がいいと思ったのがリストに入れたきっかけだったはずだが、昨日の斎藤先生の本や最近の文章術の本に軒並み書かれていた“本は必要なところだけを読め”という教えに従い、途中から内容に応じてとばし読みするところも。私が知りたかったのは

  • なぜ、このようなパンデミックが起きたのか
  • どのように予防・治療に当たったのか
  • パンデミックはどのように起こり、どのように終わるのか
  • 気をつければいいことはあるか

など。


この本を読んでわかった“スペイン風邪”の背景と、上の質問の答は次の通り。
【背景】

  • 当時は第一次世界大戦中で、たくさんの若者が船でヨーロッパに送られていた
  • 死者は若者〜壮年の人に多かったが、その理由もわかっていない
  • 全世界で2100万人が亡くなった、とされているが、統計には不備があり現在も再検証中
  • 日本で25万人、アメリカで50万人が死亡
  • 第一次世界大戦で亡くなった人の数より、“スペイン風邪”による死者の方が多い

【疑問に対する答】

  • 菌の特定ができず、未だに原因は解明されていない
  • 当時は公衆衛生の観念がなく、戦意高揚のための大規模な集会が行われ、さらに感染を拡大した
  • ヨーロッパに向かう船中やキャンプ、戦場は環境が劣悪だったため患者・死者が拡大した
  • 薬がなかったため、結局効果があったのは温かく乾いた環境、休息、栄養、手厚い看護
  • インフルエンザウイルスは次々とその形を変えていくため、効果の高いワクチンを作るのはむずかしい
  • 離れた場所で同時に発生したケースもあり、感染ルートは特定できない
  • 公的機関の機能がマヒしたため、多数のボランティア(医師・看護師以外も)が活躍
  • マスク着用が義務づけられ、途中から罰則も定められたが、効果は実証できなかった
  • 恐ろしいのは症状そのものよりも、爆発的に患者が増えるために診察・看護を受けられず放置されること
  • パンデミックは突然始まり、ゆっくりと治まっていく傾向がある

など。


感染ルートの特定はむずかしいが、やはり大勢の人が集まるところには行かない方が感染するリスクを下げられるようだ。最近では休校・集会の禁止なども行うようになっているが、これは理にかなっているようだ。

逆に、マスクの是非は去年の新型インフルエンザでも問題になったが、200年ほど前にも同じことをしていたのか、と驚いた。経験を活かせていない典型的な例だろう。

そして、手厚い看護が一番の薬、というところには妙に納得した。ふだんから食事や睡眠に気をつけ、できるだけ免疫力を落とさないようにすることが最善の予防なのだろう。

一度にたくさんの人が感染するとどこが滞り、何に困るのか、という事実は知っておいた方が備えになると思う*3地方自治体がまったく機能しなくなったため、結局は市民が連携してことに当たったそうで、都市によってパンデミックの期間や規模などに大きな差が出たという。

読んで楽しくなる本ではないが、読んでおくと役に立つと思う。

*1:この本では“スパニッシュ・インフルエンザ”と書かれています。ちなみに、スペインが発生起源ではなく、当時起こっていた第一次世界大戦に関わっていなかったスペインがいち早く事実を公表していたため、この名前がついたそうです。戦争中は兵士がどれだけ罹患し、死亡したかなど公表できませんよね

*2:400ページ以上

*3:現代とは事情が違うと思いますが、電話交換手がほとんどいなくなったため、電話が緊急時以外はつながらなくなったそうです。また、もっとも足りなかったものは棺、人手は墓穴堀りだったとか