※この記事は、2009年12月に書いていたものです。
以前紹介した『北島康介 夢、はじまる』の著者、スポーツライター折山淑美さんの新刊。今回はコーチにクローズアップするという面白い本だ。もちろん北島のコーチである平井伯昌さんも出てくる。
最後の章のタイトルである“コーチと選手は、「一緒に成長する」”が著者の最も言いたいことだったのだろう。
オリンピックに出た選手とそのコーチが9組登場する。私はまったく知らなかった女子ホッケーまで、種目はさまざまだ。コーチの性格や選手との相性もあり、指導方法はひとりひとり違う。なので、これを読んで部下の指導方法を知りたいとか、後輩を育てる教科書に、というのはむずかしいかもしれない。ただ、選手の気持ちのつかみ方や、自分の経験をどう指導に活かすかなどは、ヒントになりそうだ。
私はスポーツは見る専門だし、その背景までよく知らない種目も多い。9人のコーチのうち2人が中国人(現在は帰化)だったり、フェンシングのコーチはウクライナから招聘していることなど、この本を読んで初めて知った。やはり、お家芸と呼ばれているようなスポーツは、その国のコーチに指導してもらうのが一番なのかもしれない。
選手として大成しなかったからコーチができた、というタイプと、自分もすごい選手だった人と両方いるのが面白い。私は単純に読みものとして楽しく読んだ。本当に選手はコーチと二人三脚で、ひとりで結果は出せないのだ、ということがどの章を読んでも感じられる。これからはオリンピックや大きな大会を見る時、選手だけではなくてどんなコーチなのかまで気になりそうだ。
この本はもともとプレイボーイ日本版に掲載された記事が元になっている。雑誌では北京オリンピック前だったのが、出版するにあたりその後さらに取材をし、オリンピック後まで読めるのが面白い。なかなかその後の話までまとめて読める機会がないので貴重だと思う。