毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

コミュニケーションは「受け手」が支配する☆☆☆

著者の山本高史さんは元電通のクリエイティブ・ディレクター。プロフィールの主な仕事(として挙げられているクライアント)の顔ぶれを見れば、そのすごさがわかる。
そんな人が書いた、伝えるとはどういうことなのか、という基本を教えてくれる本だ。技術論のようなサブタイトルがついているが、「心構えについて説いた本」と言った方が近いと思う。
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実は、著者の言いたいことはとてもシンプル。前書きに全部書いてあるのだ。あとに続く言葉はすべて、その説明といってもいい。

言葉は伝える技術である。
言葉の送り手が言葉の受け手を、自分の望む方向へ動かすための技術である。
それを叶える方法は、送り手が受け手の言って欲しいことを言ってあげることだ。
すべてを決めるのは受け手だから、である(P1)。

言葉の受け手は自分の聞きたいことしか聞かない。耳に届いていたとしても理解しないかもしれないし、理解しても拒否するかもしれない。それを前提に、じゃあどうすれば聞いて、理解して、受け入れてもらえるのか。もっと言えば、送り手が望む行動を取ってくれるのか。


著者は広告に長年携わる人なので、広告を例に話は展開するが、これは広告だけの話ではない。コミュニケーション全体の話だ。
著者は広告を一度に大勢に人に届けるものではなく、ひとりひとりに届けるものの集合体としてとらえているそうだ。だから一般の人にとっても役に立つ、実感できる内容になっているのだろう。


象徴的なのが“「ちゃんと」という言葉を使わない”という話。著者は「ちゃんと」や「きちんと」を多用する人を信用しないそうだ。なぜなら、送り手の思う「ちゃんと」と受け手の考える「ちゃんと」がずれていた場合、そこに齟齬が生まれるからだ。そして、両者のとらえている意味がイコールになることはほとんどない。だからこそ、「ちゃんと」や「きちんと」という言葉に逃げずに具体的な約束をすることで、ブレが小さくなり、ゴールイメージが鮮明になるのだ。


そして、受け手に行動してもらうための鍵は「ベネフィット」(=利益)だという。受け手にとって役に立つ(さらに言えば「トク」になる)ものであれば、人は進んで受け手になるそうだ。
広告はもちろんだが、どんなコミュニケーションにも共通している。たとえばブログを書く時でも、読者のベネフィットを意識するかしないかで届き方は大きく変わるだろう。


生きていれば必ず誰かとコミュニケーションしなければならない。「伝えたいことを確実に伝え、受け手を動かす方法」はすべての人に必要なはずだ。
コピーライター独特の文章なので好みはあると思うが、著者の伝える技術がふんだんに使われているので、読んで即役に立つ本。プレゼンが苦手な人も、上司や部下との関係に悩む人も、ブログのアクセス数が増えずにやる気が無くなってきた人も、ぜひ読んでください。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

「ちゃんと」を封印する(P12)

少なくとも、「ちゃんと」という言葉を封印して何かを伝えようとする習慣をつければ、保証します、その人のコミュニケーションが明らかに変わる。

意味が共有されているか(P37)

言葉が「伝わる」ためにまず求められるのは、「送り手、受け手の両者が共に言葉を知っている=言葉の意味を共有していること」である。

すべては受け手が決める(P102)

すべては受け手が決めることならば、送り手の言葉はすでに受け手のものなのである。送り手がどれだけの意欲を持って言葉を発しようとも、その会話を打ち切るのは受け手なのである。送り手がどれだけ願おうと、叶えるも叶えないも時には受け手の気まぐれだったりするのである。

ひとつの脳からひとつの脳へ(P132)

送り手からの糸電話を受け取る人が何千万人いようが、糸電話の行き先の数が増ええただけでコミュニケーションのメカニズムに変質はない。送る側はひとり。受ける側が全体で何人いようとも、受ける人は個人。言葉を伝えようとする脳、言葉を受けとめる脳は、おのおのひとつずつなのだ。
(中略)
メッセージの中身はともかく、ひとりひとりに言葉を伝えようとするひもの行き先が、数千万あるに過ぎない。そのひとつひとつは「キミが好きだ」と同じメカニズムだ。受け手の脳ひとつひとつが判断する。数千万人分の巨大な脳があるわけでも、数千万人がみんなで相談してメッセージを判断するわけでもない。

広告は自慢話である(P161)

「これができる」ということしか言わない。「オレはこれができる、あれができる。今マーケットにいるヤツよりもできる。あんたが今使っているものよりもできる。オレを使えばあんたはできなかったことができるようになる。もっといろんなことができる。時間も少なくて済むから他のこともできるようになる」と言っている。どんなカテゴリーの商品でも、似たり寄ったりそんなことを言っている。
(中略)
逆に言うと、「オレを使っていないあんた」は、やりたいこともできないし、時間もかかるし、要領が悪いし、不自由だし、なんて不幸な人なんだ!ということになる。その不満や、不安の解消を前提とすることで、約束すべきベネフィットの方向性が明らかにしやすくなる。

「言いたいこと」は「言って欲しいこと」のあとで(P206)

僕のプレゼンなら、この「クライアント氏の言って欲しいことを言ってあげる」のあとに、それを叶える方法論として、自分の考える「面白い」を提案してみる。それがどんな「面白い」でも、コミュニケーションのひもは切れることはないはずだ。彼にとって僕はすでに、自分にベネフィットを提供してくれる人物になっているから。

言葉は技術だ(まとめ)(P227)

受け手を自分の望む方向へ動かしたければ、受け手の言って欲しいことを言ってあげるとよい。
受け手の言って欲しいことを知るには、受け手の状況と自分の状況の共有エリアを自分の中に発見し、そこで受け手の尺度を自分の尺度として持つことだ。そうすれば、自分の言って欲しいこと=受け手の言って欲しいこと、となる。
自分が自分に自分の言って欲しいことを、言ってあげるのである。コミュニケーションの精度は、間違いなく上がる。むしろ外しにくい。