重松清さんは好きな作家のひとりだ。少し前、和田秀樹さんの文章術の本に「好きな作家の本を徹底的に読み込むとよい」というくだりがあった。それを読んだ時に思い浮かべたのが重松さんと江國香織さんだった*1。
しかも、この本は和田先生の本で紹介されていたので、興味を持って図書館で借りてきた。
※この授業は「文章を書く」ことだけが目的ではないのですが、あえて“文章術”に特化してご紹介しています。
NHK「課外授業ようこそ先輩」は、ご覧になった方はご存じだと思うが、各界で活躍する著名人が自分の母校である小学校で授業をする、というものだ。もちろん、自分の専門分野を中心に教える。重松さんは3日間で「お話を書き、父兄参観で発表する」というテーマだった。
「小学校5年生にどうやって教えるんだろう」と思ったが、読み進めるうちに新鮮な発見があった。「重松さんはこんな風に小説を書いているんだな」とか、「こんなことを大切に考えているから、あんな文章が書けるんだ」といったこと*2。
重松さんの出した課題は「自分目線ではなく、自分の周りの人誰かを主人公にすること」。それが“視点”を変える練習になるのだ。他にも、昔話を題材に5W1Hがなれけば伝わる話にならない、と教えるなど、小学生と一緒に勉強している気分になる。
児童たちは、ひとりひとりタイトルを決めて取材をする。そして、清書の前に重松さんから個別指導してもらう。何人かとのやりとりも収められていたが、「ここをこんな風に変えるとよくなるよ」というアドバイスもなるほど、と納得できるところが多かった。
ひとつひとつプロセスを追って読めるので、とてもわかりやすい。最後には、担任が絶句するほど全員が夢中で書いていた、というのもわかる気がする。読んでいくうちに、読者まで文章が書きたくなる。
文章術なんてむずかしくてイヤ、という人や初歩の初歩から学びたい人にはいい本だと思う。ぜひ、初心に返って読んでみてください。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
お話をつくる時に必要なこと(P73)
- いつ
- どこで
- だれが
- なにを
- どうした
まずこれにあてはめて、抜けていないかチェックする。
具体的に考える(P95)
ヒントは、「どんな時にそうなるのかなあ」とか、「なんでそうなるのかなあ」と考える。
比喩を使う(P95)
「なんとかのような」「なになにみたいな」
お話作りの必殺技になる。(中略)みんながそれを見て、「ああ、なるほどな」と思えなければダメなんだ。
文章のプロフェッショナルとそうでない人の差(P141)
言ってみれば、携帯電話にはせっかくいろんな機能があるのに、それを全部活かさずにやっているか、すべて使いこなしちゃうかの差だと思うのね。