著者は予防医学が専門の医師だ。その医師が真っ向から「検診を受けても寿命が延びる根拠はない」「薬は飲んでも飲まなくても同じ。場合によっては寿命が短くなる可能性もある」と書いているので驚いた。以前読んだ近藤誠さんの『成人病の真実』も似たスタンスの本だが、こんなことを書いて医師としての立場は大丈夫なのだろうか。余計な心配をしてしまった。
著者はこの本で、さまざまな検診(会社が受けさせる健康診断、がん検診、脳ドック、さらにメタボ検診まで)について根拠のなさを次々と解き明かしている。私たちは当たり前のように年1回の健診を受け、ある年齢に達すれば自治体から届く各種検診のお知らせを見てそれを受けている。しかし、日本以外にこのようなしくみはほとんどないそうだ*1。つまり、日本では長年何の検証もせずに「効果があるもの」として続けてきたことになる。
著者の手法は基本的に、海外の論文のデータをもとに検証しており、巻末にはその参考文献リストもある。非常にきちんとした印象だ。
また、「検診は受けても意味がないですよ」と言っている責任からか、最後の章には「自分でできる健康チェック」があり、異常を感じた時に病院に行く判断基準が載っているので親切だ。
著者の本には他に『がんは8割防げる』や『薬なしで生きる』があり、読んでみたくなった。
“知らないことのリスク”を改めて感じた。たくさんの人にぜひ読んでもらいたい本です。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
薬で検査値を改善しても寿命は延びない(P147)
その[=検査や治療を受けた人々を大規模、かつ長期間にわたって追跡し、効果と副作用を調べるという新しいスタイルの調査]結果、わかってきたのは、「検査値がいくら改善しても寿命を延ばす効果はいっさい認められない」という事実でした。薬の中には、寿命がむしろ縮んでしまうものさえあるという信じがたい話も続々出てきました。
血圧にしろ、コレステロールにしろ、検査値が良好な人ほど長生きしているのは間違いのない事実です(大規模な調査で証明されています)。しかし一方、新しいスタイルの調査でわかってきたのは、
薬で検査値を改善しても寿命は延びない
という新たな事実でした。
病院に行く目安:インフルエンザの場合(P191)
病院での検査や治療が必要となるのは、
- 高い熱で、2日以上にわたって食事や水分が摂れない
- いつもと違う症状で重病感がある
などの場合に限ります。
もし重い肺炎などが起こっているとすれば、息が苦しくなり、呼吸数も多くなっているはずです。そんな場合、1分間の呼吸数をチェックし、以下の基準を超えていたら病院へ行くという判断をします。
- 2〜12ヶ月の乳児 50回以上
- 1〜5歳 40回以上
- 6歳以上 30回以上