著者の「正しい食事」に関する基本的な考え方は現在も変わっていないそうだ。ただ、15年も経って、状況はさらに悪くなっているので、現実に即して書かれたのがこの本。
著者の定義は次の通りだ。
ここで言う「粗食」とは、必ずしも「粗末な食事」を意味しない。この国の伝統と風土に根ざした、日本人らしい生活。それが私の言う「粗食」である(P12)。
著者は「FOODは風土」を提唱している。その意味は、「その土地でとれたものを食べる」という非常にシンプルなものだ。それが崩れるところから食生活は乱れるのだという。
特に減塩をうるさく言うようになったのがきっかけで食品添加物が増えたことや、食の欧米化が砂糖と油の摂取量を増やした結果食の崩壊を招いた、という説は非常に説得力がある。
ではどうすればいいのか。著者のアドバイスはとてもシンプルだ。3食のうち2食でごはんを食べること。基本はそれだけ。
ごはんを食べれば自然におかずも砂糖や油を摂りすぎないものを選ぶし、栄養もある程度バランスよく摂れる。むずかしく考える必要はなく、夕方お腹が空いたらお菓子をつまむ代わりにおにぎりを食べればいいし、それもコンビニで買ったものでいいという*1。ごはんの時にお味噌汁を作るのが面倒なら、液状タイプのみそを使うのでいいらしい。
また、酒・タバコ・甘いものというタブー視されるものも、しっかりごはんを食べていれば、心の栄養素として摂るのはかまわない、とまで書いてある*2。「こんなにゆるくていいんですか?」と思うが、言い方を変えればそこまで今は食生活が乱れている人が多いということだろう*3。
また、この本を読んで初めて知ったが、著者の提唱する「粗食」は「玄米菜食」(いわゆるマクロビ)とはまったく別のものだそうだ。勘違いされることも多いらしい。この一節を読めば、違いがよくわかる。
事実、玄米菜食主義者の多くは「動物性食品はすべて血を汚す」などと言って、魚を食べることも否定する。煮干しやカツオ節さえ厳禁だ。海に囲まれた日本で海産物を否定する食事法が、「伝統食」であるはずがない。カツオ節を使用禁止にしたら、この国の伝統料理の多くが消滅するはずである(P46)。
現代の食生活にまつわるさまざまな問題がよくわかるし、何より厳しすぎないので取り入れやすい。また、お子さんのいらっしゃる方には「子どもに何を食べさせればいいか」という具体的なアドバイスが役に立つと思う*4。
自分の食生活を確認するためにも、すべての人に読んでほしい1冊。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
最大の問題は「伝統食」の崩壊(P40)
重要なのは、食生活が欧米化したことによって、「FOOD」が「風土」から切り離されてしまったことである。欧米化は二次的問題であって、「伝統食」が崩壊したことが最大の問題なのだ。
長寿世代は「伝統食」を食べてきた(P53)
まさに、人間の文化は「何を食べるべきか」ではなく、「何が取れるか」で決まるということだ。
そして、今の辞典で長生きしている日本人は、子どもの頃から「風土」が決めた「FOOD」を食べてきた世代だ。