『検診で寿命は延びない』を読んでこちらも借りてみた。この本では、さらに詳しく具体的に薬の効果について検証している。
著者の専門は予防医学、医療統計学で、この本は著者の20年の研究成果をまとめたものだそうだ。
その手法は、海外の信頼できる論文のデータを集め、分析するというもの。“ある薬を飲んでいる人と飲んでいない人を、長い年月をかけて大規模に比べてみる”という大規模調査は欧米を中心に広まり、「結局寿命は延びたのかどうか」を検証するシビアな調査だ*1。
検診の本と同様、ニュートラルな視点で淡々と調べたことが書いてあり、それだけに書いてあることの恐ろしさがさらに強調される結果になっている。
端的に言うと、著者の20年の研究でわかったことは、
「2種類*2を除き、飲んだ方が寿命が延びると明らかに認められる薬はない」
そうだ。じゃあ何であんなにたくさん薬が出されるのか?もちろんそのことにも触れているが、非常に複雑に利権が絡み合っていてむずかしそうだ。
さらに、「自分が今飲んでいる薬がどうなのか」を知りたい人のために目的別、薬の働きや組成別に載っているので、気になる人はすぐ調べられる親切なつくりになっている。また、検査結果はどこを注意するべきなのか、意味のない検査数値についても書かれているので、いたずらに数値に一喜一憂しなくなる。
最後の章には、薬に頼らず生きるために心がけることが書いてある。食生活に関しては減塩*3やバターとマーガリンを交互に摂るよう勧めているなど、首をかしげたくなるものもあるが、だいたいの目安になっていいのではないだろうか。
非常に良心的な本だと思う。医師がこういうことを公表しているというのは信頼できる。病院で検査や治療を受けても無駄な薬を飲まないですむよう、こういった知識は持っておくべきだと思う。
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