日垣さんはご自身のメディアを持ち、有料メルマガや絶版になった書籍の電子化などでコンスタントに収入を得ているため、言いたいことが言える数少ない発信者だ。その日垣さんも、はじめは仕事を転々とし、25歳で仕方なく物書きを職業にすることにしたそうだが、その時に座右に置いておきたかったのが「どのように考えれば、うまくいくのか」を教えてくれる本だったという。しかし、そんな本はなかったので自分で試行錯誤しながら進んできた、そのおよそ25年分のエッセンスが詰まっているのだ。
自分が、時間と資金と自由の主人公になるための本を、私はいつか読みたいと思って切望していた、と冒頭に述べたのだけれど、結果的に自分で書くことになった。(まえがきより)
使えるものは使えばいい、という記述が本文に出てくるが、この本がまさにそうだ。試行錯誤しなくても、ある程度の道筋は示されている。何より、ここで学べるのは「どうやるか」、ではなく「どう考えるか」なのだ。考え方が身についていれば、どんな場でも応用がきく。
「ズルくないんだ」とギョッとするようなタイトルをつけたが、日垣さんがズルいことを推奨しているわけではない。ただ、「真面目にコツコツ」とか「誠実に愚直に」のような日本人的発想の中で育ってきた人はびっくりすると思う。戦略的と言えばいいのだろうか。たとえばヨーロッパではいまだにスポーツで自国や地域が勝てなくなると平気でルール変更をするが、そういうものと同じ匂いがする*2。
そういう視点でものを見たり考えたことのない人には世界が違って見えるはずだ。
人によって役に立つところは違うと思うが、私が特になるほど、と思ったのは「正解ではなく最適解」と「人生はギャンブルだ」だった。この本でもお子さんの話はいろいろ出てくるが、日垣さんはギャンブルもお子さんに手ほどきしているそうだ。人生がギャンブルならば、その取り組み方も知っていた方が安全だ。大きく負けない方法、最終的に勝つ方法を知っていれば、タフに生き抜ける。
私が子どもたちに伝えたいのは、一発で「勝ち組になる」ことでは断じてない。できるだけ長く確実に小さな価値を積み重ねることの肝要さである。
勝つ確率を高める究極の秘訣は、精神的ゆとりをもつことだ。切羽つまると、人生ろくなことはない。(P162)
たとえばこれを知っているだけでも、人生が変わると思う。これからの世の中を自由に渡るために、ぜひ読んでほしい本だ。
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
仕事の引き受け方(P24)
よい仕事は引き受け、よくないと思われる仕事では、依頼者の得点になるような仕方で再提案して受諾すればいい。
アウトプットを目的にしてしまう(P39)
アウトプットだけを前提にしたインプットは、インプットを自己目的とする営為とは比較にならぬパワーを発揮する。